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2007年6月20日 (水)

いざない 〜変身編〜

“大河ドラマへのいざない”の第7回目です。

前々回前回では“キャスト編”と銘打って、
出演者関連、脚本家ファミリーについてお話ししました。


出演者と言えば、必ず存在するのが主役です。
今回は、その主役についてお送りします。


通常は、1本の大河ドラマ(49〜50話分)を1人の主役が務めます。
それは、プロデューサーや脚本家など、いわゆるスタッフが
主役を務める役者に絶対的信頼を置いている場合なのですが、

主役の子ども時代に、
のちのち主人公に関わってくるストーリー上の出来事があったり、
あるいは主人公の生まれてから死ぬまでを何が何でも撮りたかったりで、
ドラマによっては、
子役からのリレー方式でバトンを渡されて進行していくものもあります。


ここ20年ほどの大河に限定して見ると、
※ 敬称略・(  )内は現在の役者名

  • 『独眼竜政宗』藤間遼太(8藤間勘十郎) → 島 英二(嶋 英二) → 渡辺 謙
  • 『武田信玄』真木蔵人 → 中井貴一
  • 『春日局』安間千紘 → 尾羽智加子 → 大原麗子
  • 『翔ぶが如く』西田敏行
           鹿賀丈史
  • 『太平記』雨笠利幸 → 真田広之
  • 『信長』森田洸輔 → 山根隆明 → 緒形直人
  • 『琉球の風』細山田隆人 → 原田優一 → 東山紀之
  • 『炎 立つ』[第1部]渡辺 謙
          [第2部]森田洸輔 → 福原 学 → 村上弘明
          [第3部]渡瀬恒彦
               渡辺 謙
  • 『花の乱』村嶋亜矢香 → 松 たか子 → 三田佳子
  • 『八代将軍吉宗』青柳 翔 → 2尾上松也 → 阪本浩之 → 西田敏行
  • 『秀吉』高山祐毅 → 竹中直人
  • 『毛利元就』岩渕幸弘 → 森田 剛 → 3中村橋之助
  • 『徳川慶喜』若葉竜也 → 崎本大海 → 本木雅弘
  • 『元禄繚乱』5中村勘九郎(18中村勘三郎)
  • 『葵 徳川三代』津川雅彦
            西田敏行
            内田雅楽 → 吉永和真 → 佐藤圭祐 → 酒井長輝
            → 山田孝之 → 2尾上辰之助(4尾上松緑)
  • 『北条時宗』小池城太朗 → 浅利陽介 → 和泉元彌
  • 『利家とまつ』唐沢寿明
           山口美香 → 松嶋菜々子
  • 『武蔵』増田貴久 → 7市川新之助(11市川海老蔵)
  • 『新選組!』香取慎吾
  • 『義経』上井聡一郎(うえい そういちろう) → 神木隆之介 → 滝沢秀明
  • 『功名が辻』永井 杏 → 仲間由紀恵
          途中慎吾 → 上川隆也
  • 『風林火山』山内 颯 → 内野聖陽
となります。


↑コレ を見る限り、
子役を立てずに主役が1年間通して出演している作品は、
『翔ぶが如く』、『元禄繚乱』、『新選組!』の3作品のみ。

ほとんどの作品において、
子役からのリレー方式をとっている、と見ることができますが、

『秀吉』の高山祐毅くんは、
オープニングのタイトルバックに出演しているだけですので、
厳密に言えばリレー方式ではありません。


では次に、厳密にリレー方式をとった作品で、
どのようにバトンを渡していったのか? なのですが、

以下の3つに、大きく分類してみました。
※ 敬称略・( )内は放送回


[1]「数年後……」という語り(またはテロップ)が出る形式

最もポビュラーな手法。
子役時代からの数年間のブランクをあっという間に飛び越えるので、
その間に演じる役者が変わっていても、
特に問題なくスムーズにストーリーが進む。

『武田信玄』(1)真木蔵人 → (1)中井貴一
武田晴信(真木)が愛してやまなかった村娘・おここ(南野陽子)を
何物かに殺され、晴信の怒り心頭。
→数年後、おここの墓に立っていた晴信(中井)。

『春日局』(7)尾羽智加子 → (8)大原麗子
祖父・稲葉一鉄(大坂志郎)から厳しい指導を受けていたおふく(尾羽)。
→数年後、合戦で不在だった稲葉正成(山下真司)の子どもたちを、
 亡くなった母親の代わりとして面倒を見ているおふく(大原)。

『太平記』(1)雨笠利幸 → (1)真田広之
元服の儀式で、烏帽子親・北条高時(片岡鶴太郎)から
「高氏」の名を受ける又太郎(雨笠)。
→数年後、成長して将軍守邦親王に仕える足利高氏(真田)。

『信長』(1)山根隆明 → (1)緒形直人
女踊りをしてうつけぶりをアピールしていた織田信長(山根)。
→数年後、織田家内の私的な酒盛りの席上。
 相変わらず、女踊りを踊っている信長(緒形)。

『琉球の風』(3)原田優一 → (4)東山紀之
久米村の学問所で、謝名親方(江守 徹)から論語を学ぶ啓泰(原田)。
その姿を、生き別れた父親・楊 邦義(萩原健一)が見ている。
→数年後、久米村の学問所で、子どもたちに論語を教える啓泰(東山)。

『炎立つ』(2-1)福原 学 → (2-1)村上弘明
夫を滅ぼした清原武貞(名高達男)に再嫁した結有(古手川祐子)。
そんな母に反抗する清原清衡(福原)に、結有は本心を打ち明かす。
→数年後、成長した清衡(村上)。※ 場面失念

『花の乱』(7)松 たか子 → (8)三田佳子
足利義政(7市川新之助)との夫婦愛を確かめる日野富子(松)。
→数年後、鹿苑寺金閣での薪能舞台を鑑賞しながら、
 義政(12市川團十郎)から将軍職を退く旨の告白を受ける富子(三田)。

『毛利元就』(6)森田 剛 → (6)3中村橋之助
恋心を抱いていた村娘・なつ(松本 恵)に振られる松寿丸(森田)。
うつけものを卒業しようと、木の枝に座ってお飾りの紐を解き始める。
→数年後、成長した毛利元就(3橋之助)は木の枝に座って何か思案中。

『徳川慶喜』(2)崎本大海 → (2)本木雅弘
一橋家に養子に入った水戸慶喜(崎本)。
6歳上の養母・徳心院直子(鶴田真由)と面会する。
→数年後、一心不乱に刺繍にふける慶喜(本木)。

『葵 徳川三代』[徳川家光 役](35)山田孝之 → (36)2尾上辰之助
※ 場面失念
  第35回「竹千代の屈折」〜第36回「和姫入内」あたり?

『北条時宗』(9)浅利陽介 → (9)和泉元彌
※ 場面失念
  第9回「決闘 由比ケ浜」あたり?

『利家とまつ』[まつ 役](1)山口美香 → (1)松嶋菜々子
織田信長の元に出仕する直前、
木の枝に座ってふくろうの世話をまつ(山口)に頼む前田利家(唐沢寿明)。
→数年後、里帰りしたときに成長したまつ(松嶋)に迎えられる利家。

『功名が辻』[千代 役](2)永井 杏 → (2)仲間由紀恵
山内一豊(上川隆也)に反抗して美濃国に渡った千代(永井)。
叔父・叔母が暮らす不破家で、不破の娘として育つ。
→数年後、成長した千代(仲間)と竹中半兵衛(筒井道隆)が馬で遠乗り。


[2]回想シーンの一部で子役時代が登場する形式

これも、特に問題なく視聴者に受け入れられやすいパターン。
話やセリフの流れから過去を思い出して子役時代の役者を登場させ、
再びストーリーを戻すことで、違和感なく完成させることができる。

『武蔵』(1)7市川新之助 → (1)増田貴久 → (1)7市川新之助
関ヶ原の戦いに参戦した新免武蔵(7新之助)と本位田又八(堤 真一)。
又八が武蔵にそそのかされて戦いに出たと思い込むお杉(中村玉緒)。
お杉がお通(米倉涼子)に5年前の出来事を思い出させる……。

『功名が辻』[山内一豊 役](?)上川隆也 → (?)途中慎吾 → (?)上川隆也
※ 場面失念
  山内一豊(上川)が、
  父が討死にしたときを思い出した時に子役が登場?

『風林火山』(2)内野聖陽 → (2)山内 颯 → (2)内野聖陽
仕官先を求めて全国をさまよう大林勘助(内野)。
武田での武勇伝を手みやげに、養家の大林家に戻って入浴中、
ふと子どもの時分を思い出す……。


[3]特殊なリレー形式

時代が飛んだわけでも、回想シーンで振り返ったわけでもなく、
同じ時代、同じシーン内でリレーを行ってしまおうという
半ば強引な手法。

『独眼竜政宗』(8)島 英二 → (8)渡辺 謙
元服式の翌日、父の伊達輝宗(北大路欣也)に呼ばれた
伊達政宗(島)・愛姫(後藤久美子)夫妻。
歩きながら、政宗(渡辺)・愛姫(桜田淳子)の姿にダブりつつ変身!
●変身形式でも、この変身の仕方は
 特に映像技術を用いたわけでもなく、自然なリレーだった。

『八代将軍吉宗』(9)阪本浩之 → (9)西田敏行
天然痘にかかった松平頼方(阪本)。
病気のために顔に包帯をぐるぐる巻きにしていたが、
天然痘が治癒し、包帯を外すと頼方(西田)に変身!
●阪本くんの10代後半の好青年の姿から、
 西田さんの40代後半のおじさんの姿に早変わりしたのは
 衝撃的であり、視聴者の失笑を誘った。
 直後の「母上!」とお紋(山田邦子)を呼ぶセリフも、
 明らかに西田さんが年上なためか、一瞬不穏な空気が流れている。
 (脚本のジェームス三木氏も「あれには無理があった」と後で認めている)

『義経』(3)神木隆之介 → (3)滝沢秀明
鞍馬山に預けられた遮那王(神木)。
鞍馬山を駆け巡り、大池の中に飛び込む。
大池から浮かび上がってきたのは、成長した遮那王(滝沢)。
●実は、潜って浮かび上がってくるまでの間に
 数年が経過したという設定も。
 ただ、神木くんから滝沢くんへ、実年齢も11歳の差しかないので、
 この手法でも、視聴者には問題なく受け入れられたようだった。


……いかがでしたか?

初期のころの大河では、幼少時代の子役を設定せずに
第1回から主役が登場していたようですが、
最近は、やはりドラマとして厚みを持たせるために、
子役を設定し、リレーさせていく手法が主体のようです。

来年の『篤姫』、主演の宮崎あおいさんは弱冠22歳。
子役を立てるとしたら、おそらく幼少時代のみでしょうね。
でも意外と、宮崎さんの演技力を信頼して、
第1回から最終回まで、宮崎さんで通したりするのかな?

新しい大河ドラマが放送されたときは、
ぜひそのあたりもチェックしてみてくださいね!

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