大河ドラマ風林火山・(28)両雄死す
勘助、そちは月影となれ。
月影となり、お館を照らし続けよ──。
板垣信方の、山本勘助に対する遺言です。
この文章をお読みいただいているみなさま、
この『風林火山』の第1回目、
オープニングのナレーションは覚えておいででしょうか?
それがしは蒼き月影の如く、お館様は燃ゆる日輪の如し。
恋は散り降る花の如く、心はほの暗き森の如し。
宿敵は天駆ける龍の如く、戦は……戦は、我が人生の如し。
それがしの名は、武田信玄が軍師・山本勘助である。
勘助は、板垣の遺言の通り、
お館・武田信玄を照らし続ける月影となって、
これからも、軍師の道を歩んでいくことになります。
いつもに増して、静かに始まった今回の『風林火山』。
晴信を、そして武田家を支えてきた二人の忠臣が、
今回の戦で、この世を去ります。
お北様(大井夫人)に「何があっても甲斐に戻って来い」と
優しい言葉をかけられた甘利でしたが、
お北の目を正面から受けず、伏し目がちになります。
甘利自身、何か思うところがあるようです。
天文17年2月。
晴信は信濃に出陣、対する村上義清もすぐに兵を挙げます。
村上出陣の予想外の早さに、晴信は少し疑念を持ったようですが、
武田の先陣を、信頼の置ける板垣と甘利に任せます。
死に場所をこの戦に見定めた板垣は
勘助に「まことの軍師となれ」と言い残し、
合戦では本陣にあって晴信を守るよう命じます。
そして板垣自らは、村上を討つべく突撃していきます。
両軍はとうとう激突しました。
世に言う「上田原の戦い」です。
この戦いに、平蔵は村上方の弓隊として出陣しています。
ピュンピュンと弓を放ち、次々に敵将(武田方)を射抜いていきます。
すごい腕の上げようでして、ヒサの父・矢崎十吾郎も驚くほどであります。
ミツやんを信虎に殺されたことがきっかけで、
「おらは侍になりたくにゃーだに!」と一時期はあれだけ侍を毛嫌いし、
だだをこねていた平蔵ですが、今では立派な侍であります。
やはり今では、ヒサという大切な女性がいるので、
ヒサを守るために強くなったのでしょう。
当初は二人の関係について猛反対していた十吾郎も、
ヒサと平蔵の仲はしぶしぶ認めたというところでしょうか。
ヒサと平蔵は後に結ばれ、子どもも産まれ、
おばさん・おじさんになる最終話あたりまで
登場するようなので、今後にも期待したいところです。
一つ残念なのは、武田に対してはやはり恨み抜き、
このまま縁遠くなってしまうようですね。
それにしても、周囲ではすでに戦が始まっているというのに、
十吾郎と平蔵が普通に会話できているということは、
さほど緊迫感はただよっていないようです。
ミツやんの死後、板垣が長年可愛がり、育ててきた
河原村伝兵衛に、晴信の影武者になるように命じ、
「わしに命を預けてくれぬか」と優しく問いかけます。
それに対して「喜んで!」と返す伝兵衛。
見るも美しい主従の愛、ですね。
夜。
甘利はかねての予定通り武田を裏切り、
単身、村上本陣に入ります。
裏切りを知った晴信は、当然ながら激高します。
当然でしょうね。
信頼していた家臣が寝返ったわけですから。
亀治郎さんの目といい顔といい、
歌舞伎を見ているかのようなものでした。
信じていた片方の翼をもぎ取られた晴信、
完全にご乱心であります。
勘助は、しかしこれが甘利の策だと見抜きます。
「戦は裏切るか裏切られるかではない、守るか失うかだ」と
前回、軍議直後に勘助に諭していましたね。
いつもなら、イヤミたっぷりな甘利の発言なのですが、
前回の諭す部分では、勘助の肩に優しく手をかけていました。
そんなところで「いつもの甘利ではない」と
勘助の心のどこかにひっかかっていたのかもしれません。
ということは、甘利も板垣同様、
この戦を死に場所と見定めていたようです。
勘助の読み通り、甘利は隙を見て村上に斬りかかりますが、
平蔵が放った矢に阻まれ、その場で捕えられてしまいます。
甘利の策略、失敗……。
甘利は捕らえられ、見張りつきで監視されますが、
村上の陣から隙をついてちゃっかり逃亡を図ります。
しかし、追ってきた村上勢に背後から矢を幾本も受け、
討死にしてしまいます。
一方、板垣は、
深追いしてはならないという晴信の主命を完全に無視して
敵陣に突出し、敵に囲まれてしまいます。
その板垣を救うため、晴信自ら全兵力をかけて攻めかかります。
突然、板垣陣中に晴信本陣を示す旗が。
板垣は、晴信の影武者を使うことで、
村上勢を板垣軍に引きつけて戦います。
それを見て「あれは……わしか?」と、
目を丸くして見つめる(ホンモノの)晴信。
板垣の戦略を察知した勘助は、
(ホンモノの)晴信周辺に掲げられている軍旗を慌てて降ろさせ、
しばらく様子をうかがいます。
そして(ニセモノの)晴信、つまり伝兵衛は、
板垣や鬼美濃に守られながら、乗馬もおぼつかないながら、
どうにかこうにか敵を倒しています。
落馬したあとの板垣、立ち居振る舞いが非常にキビキビしていまして、
さすが日本が生んだアクションの帝王・千葉真一さん! と
思わずうなってしまうような内容となっております。
板垣最期の舞台ながら、
目や顔、そして全身から「生」に対する炎がみなぎっているようで、
茶の間で見ている側としても、ついつい真剣になってしまいますね。
しかし。
板垣は敵兵による串刺しに遭い、
奮戦むなしく、命を落とします。
あかなくも なお木のもとの 夕映えに 月影やどせ 花も色そふ──
(木の根や幹に夕の落日の輝きが余光を残しているうちに、
月の光も飽きることなく射し続けてほしい。
そうすれば花も、それに合わせて美しく見せよう)
彼の辞世は、晴信が若かりし頃に彼自身が詠んだ一首でした。
彼の想いは、晴信に、そして勘助に受け継がれ、
とうとうと流れていくことになるでしょう。
原作:井上 靖 (『風林火山』新潮社 刊)
脚本:大森 寿美男
音楽:千住 明
題字:柿沼 康二
語り:加賀美 幸子
──────────
[出演]
内野 聖陽 (山本勘助)
市川 亀治郎 (武田晴信)
金田 明夫 (飯富虎昌)
田辺 誠一 (小山田信有)
高橋 和也 (馬場信春)
宍戸 開 (原 虎胤)
有薗 芳記 (河原村伝兵衛)
──────────
佐藤 隆太 (平蔵)
鹿内 孝 (須田新左衛門)
高田 延彦 (小島五郎左衛門)
柴本 幸 (由布姫)
──────────
加藤 武 (諸角虎定)
佐々木 蔵之介 (真田幸隆)
永島 敏行 (村上義清)
大森 暁美 (志摩)
近藤 芳正 (相木市兵衛)
竜 雷太 (甘利虎泰)
風吹 ジュン (大井夫人)
千葉 真一 (板垣信方)
──────────
制作統括:若泉 久朗
制作:中村 高志
演出:清水 一彦
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『風林火山』
第29回「逆襲! 武田軍」
アナログ総合・デジタル総合:午後8時〜
デジタルハイビジョン:午後6時〜
衛星第二テレビ:午後10時〜
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コメント
こんばんわ
えっと、いつもならちょっとわからない話なのでコメントを書かないMIですが、
前のコメントの欄で書きたいことが…。
でも、後ろに戻るのが嫌いなMIはココに書かせていただきます。
まぁ、一応ココのコメントも書かなくては…。
ん--。。
どんだけ読んでも難しい。。
私は本当に日本人をやってていいのかってくらいわかりません。。
すいませ--ん。。
これは、ドラマを見れば少しはわかるようになるのか??
もう、私の脳みそでは無理なのかぁ。。
まぁ、私には難しすぎる内容でした。。
ごめんなさい。。
んと、ダジャレって言うか…。
「I知県」をひらがなでよむと「あいちけん」になりません??
I=あい
ってことでぇ。。
それで、I知県にしたのかと思いましたけどぉ。。
違うのですかぁ??
──────────
MIさーん。こんにちは!
今日もコメントありがとうございまーす。
>まぁ、一応ココのコメントも書かなくては…。
あははっ(^ ^)
興味のないドラマのことを延々書かれても、
コメントのしようがありませんよね♪
逆にMIさんにとって「これはいい!」って思えるドラマでも、
全く見ていない(と仮定)というKassyにとっては、
内容も面白さも、全然分からないでしょうからねー。
難しくて当然だと思いますよ〜。
ま、ドラマが難しいのか、
Kassyの表現力が下手すぎて、
逆に難しくしてしまっているのかは分かりませんけど(^ ^;;)
話はちょっと違うかもしれませんが、
N古屋の方でも、きしめんが大嫌いな人もいるし、
F岡でも、辛子明太子が嫌いな人もいるし。
だから、日本人=時代劇を理解できる と
結びつけなくてもいいんですよ〜。
最近は、ストーリーを詳細に追うというスタイルに
固まりつつある『風林火山』カテゴリーなのですが、
MIさんにもコメントをいただけるように、
出演している役者さん(特に若い方)ネタも、
少しずつ織り交ぜた方がいいですかねぇ?
>「I知県」をひらがなでよむと……(略)
いや、そうなんですよー。
MIさんがおっしゃる通り、
結果的には確かにダジャレっぽくなっているんですよー。
でも、Kassyの場合はダジャレとか全く関係なく、
素で間違えてしまっていました。←ホント
(^ ^;;)┓
「あい」ち と入力する時に、あい→I、ち→知 って。
ホントなら、あ→A とならなければならないんですけど、
Kassyの頭の中には、AではなくIしか浮かばなかったんですね。
だから、T京もK奈川もO阪もI知もF岡も、Kassyとしては
マジメに伏せ字を使っていたつもりだったんですけど、
I知が間違いって気づかなかったなぁ〜。
だから、ちょっとしたシャレのつもりでとか、
笑わせる目的でIを使ったと思われがちですが、
Kassyとしては、ホントにマジメにすんなり書いていまして、
MIさんに言われて、間違いに気づいた次第であります。
しゅーん。
投稿: ★MI | 2007年7月16日 (月) 00:22
甘利の寝返りの第一歩を知った晴信の表情…
ありゃまさに歌舞伎やねぇ~と思ったよん(笑)
昔ギャグで加藤茶がやってたのを思い出してしもぉ~た
板垣の立ち回りのシーン…
往年のアクションスターを彷彿させたよねん
なんか千葉ちゃんのはまり役の柳生十兵衛のそれによく似てたなぁ~
久々のエキストラを大量に起用してのロケによるいくさシーン…
やっぱ大河はいいよなぁ~と思ったよん
来週の後半も期待できそうやね♪
──────────
やまさーん。こんにちは!
今日もコメントありがとうございまーす。
>ありゃまさに歌舞伎やねぇ~と思ったよん(笑)
でしょ? でしょ?(爆笑)
何と言ってもあの目の寄り方と眉毛の動き!
あれは歌舞伎以外の何ものでもありませんよね♪
確かに加トちゃんを彷彿とさせるものはありますね!
ま、くしゃみしなかっただけマシですかね〜。
>板垣の立ち回りのシーン…
いやいや〜、なかなか見応えありましたね!
落馬した直後や敵兵に囲まれた時の殺陣は、
手に汗握るような緊迫感を持って見てしまいました。
壮大なスケールで描かれた今回のストーリーは
これぞ大河! という出来映えになっていました。
最後のシーンとして、花を持たせた感じで、
非常によかったとKassyは絶賛しております。
来週も引き続き「上田原の戦い」のようで、
板垣・甘利亡き後の晴信の心理などを交えながら
続きが描かれるんでしょうけど、
来週も期待してしまいますね〜♪
投稿: ★やま | 2007年7月16日 (月) 09:10
武田信玄、好きな時代ですが、
大河ドラマですからね、詳しい話が出てきますから、
やはり、見ないと判りませんよね!
また、同じ大河ドラマでも話が変わる時もありますし、
立場が違う視点から見ると、こうも、変わるものだと、
驚く時もありますしね。
でも、本当に好きですね、kassyさんも、やまさんも!
──────────
うっちゃんさーん。
連続コメントありがとうございまーす。
>詳しい話が出てきますから
そうですねー。4クール(=1年間)通して描かれますから、
非常に細部にわたっていますよね〜。
逆に言えば、そこが大河のいいところでもあります。
民放ではせいぜい2クール(=半年)ですから、
同じ小説を原作としたとしても、
かなりはしょって描かなくてはならない。
大河はじっくり温めて、ヤマの部分でバッと放出する。
そんな感じがたまらなく好きなのです。
>同じ大河ドラマでも話が変わる時もありますし
そうですね〜。
同じ時代、同じ人物を描いているとしても、
脚本家や演出家、はたまた演じる役者さんによって
出来上がりは全然違ったものにもなります。
うっちゃんさんがおっしゃるように、
「そういう見方で来たか!」というように、
その作品独自の新解釈には非常に魅力を感じます。
>本当に好きですね、kassyさんも、やまさんも!
あははっ(^ ^)┓
これまた好きなんですよねー。
Kassyが大河にハマっているのは小学5年生のときからでして、
それ以来、大河ひとすじです。
そんな大河好きなKassyなのですが、
やまさんもお話を合わせてくださいますし、
うっちゃんさんやMIさんまでも、
ドラマを見ないにせよ、いろいろとお話ししてくださいますので、
Kassyとしては、とてもありがたく感じております。
ありがとうございますー。
投稿: ★うっちゃん | 2007年7月16日 (月) 18:22
子供と話していたら、
子供が図書館から戦国武将の本を
借りてきましたよ。
今度の休みには本片手に語り合いますかね。
──────────
うっちゃんさーん。こんにちは!
今日も乗務お疲れさまでした〜!
>子供が図書館から戦国武将の本を借りてきましたよ。
おっ!!
お子さまももしかして歴史好きですか?
いいですねー、親子して歴史のお話を語り合えるなんて。
うらやましい限りです。
うっちゃんさんがお好きな時代というのは
戦国時代とお伺いしたのですが、
お好きな歴史上の人物とかいらっしゃるのでしょうか?
投稿: ★うっちゃん | 2007年7月17日 (火) 19:03
僕と真逆な性格の
上杉謙信!
僕は女好き。
──────────
うっちゃんさーん。
またまたの登場ありがとうございまーす。
>僕は女好き。
(´艸`) ぷぷぷ
うっちゃんさんらしいお答えだぁ!
上杉謙信公……。
Kassyにとっては、
謙信公といえば毘沙門天しか連想できませんが、
信心深く思慮深く、って方だったんでしょうね〜。
投稿: ★うっちゃん | 2007年7月17日 (火) 20:58
追放した兄に遠慮したのか?
毘沙門天、仏教の戒律からか?
男色だったのか?
僕は酒飲まないけど、
酒豪で有名ですからね!
酒の飲みすぎで、トイレで脳溢血で死亡?
──────────
うっちゃんさーん。こんにちは!
今日も乗務お疲れさまでーす。
???
どうだったんでしょうねぇ?
いろいろな話が上がっているようですが……。
>酒の飲みすぎで、トイレで脳溢血で死亡?
よく「酒は百薬の長」などと言われますが、
“適度な”という文句を、頭につけなければなりませんね!
ま、Kassyもお酒はたしなむ程度なので、
毎日飲まなかったとしても特に何ともないですし、
1ヶ月に1日飲んだぐらいでちょうどいいかなぁ〜なんて
考えておりまーす。
投稿: ★うっちゃん | 2007年7月18日 (水) 21:34