大河ドラマ風林火山・(51-3)総集編・第三部 〜火の巻〜
(30)天下への道
塩尻峠の戦いで、武田晴信(市川亀治郎)と山本勘助(内野聖陽)が信濃守護・小笠原勢を打ち破ったと同じ頃、越後に新たな動きが起きていた。長尾家の家督争いが決着し、弟の景虎(ガクト(Gackt))が兄・晴景(戸田昌宏)から当主の座を譲り受けたのである。ただ、越後はいまだ群雄割拠が続き景虎は国内の統一を果たせないでいた。統一の鍵を握っていたのが宇佐美定満(緒形 拳)だった。宇佐美は景虎が真に国主に相応しい男か見極めんと模様眺めを続ける。
信濃情勢が落ち着きを見せる中、勘助は旅に出た。新兵器・鉄砲こそが将来の合戦を左右すると見抜いた勘助は、その産地である根来寺に出向き百挺もの買付けに成功した。運搬には舟と港が必要とあって、駿河に立ち寄った勘助は港の借用を今川義元(谷原章介)に願い出る。その席で、北条氏康(松井 誠)に追い詰められた関東管領・上杉憲政(市川左團次)に景虎が損得抜きで援軍を送ったと聞き、勘助は景虎に興味を抱く。甲斐に戻った勘助は晴信に自らが思い描く天下取りの構想を語る。 それは越後も駿河も手に入れ大国となって天下に号令を下すという壮大な計画だった。
勘助は将来の敵の内情を探るため、越後に潜入したいと晴信に願い出るのだった。
(31)裏切りの城
晴信はついに小笠原長時(今井朋彦)を追い落とし、信濃府中を手中にした。残る信濃の大敵は村上義清(永島敏行)のみ。村上を倒すには難攻不落の砥石城の攻略が欠かせず、その役目はかつてその地を領有していた真田幸隆(佐々木蔵之介)が担っていた。
勘助は、村上攻略は時期尚早だと真田を戒め、自らは鉄砲商人に扮して越後への潜入を試みる。越後の景虎の器を見極めるのがその目的だった。
一方、真田家中に村上の間者がいるという情報が葉月(真瀬樹里)によって真田にもたらされた。真田は勘助の忠告にもかかわらず、この間者を使って村上に謀略を仕掛ける。間者の目の前でわざと裏切り者ではない家臣に疑いをかけ、寝返った家臣を間者の証言で村上に信用させるという作戦だった。
策は図にあたり、村上軍は真田の城に攻め込み、待ち構えていた真田勢の餌食となる。その兵の中には矢崎平蔵(佐藤隆太)と結婚したヒサ(水川あさみ)の父・十吾郎(岡森 諦)の姿があった。十吾郎は無惨に討ち取られ、平蔵は武田への憎しみを新たにする。
その頃、勘助は越後で景虎と初めて対面していた。
(32)越後潜入
勘助は鉄砲商人に扮し、「道安」という偽名を使って景虎に会う。10挺の鉄砲を用立てるという勘助に景虎は100挺用意するように命じる。数が揃うまでは勘助を人質にするというのだ。元々鉄砲を売るつもりなどない勘助は長尾家の内情を探る好機と喜んで人質となる。しかし、景虎は勘助を武田家の者と見抜いていた。
一方晴信は、村上方の砥石城攻略に出陣した。真田の謀略の成功で、村上が劣勢にあると判断したのだ。
晴信の出陣を知る由もない勘助は、景虎にお供して宇佐美の居城に赴き、その城に留め置かれることになる。長尾家の軍門に下らず中立を保つ宇佐美を味方に引き入れたいと景虎は考えていた。勘助は景虎と宇佐美が手を結べば越後は難敵になると警戒する。
そのままひと月が過ぎ、勘助は驚くべき事実を景虎より伝えられる。晴信が砥石城で村上に大敗したというのだ。しかも紀州から買い付けたばかりの鉄砲100挺も大半を村上に奪われたという。 衝撃を受ける勘助に「酒でも飲まぬか、山本勘助」と、宇佐美の一言が追いうちをかけた。勘助の素性はすっかり見抜かれていたのだった。
(33)勘助捕らわる
鉄砲商人を装って越後に潜入した勘助だったが、宇佐美は勘助の素性をすっかり見抜いていた。勘助を宇佐美に預けた景虎の狙いは、武田が越後を狙っていることを宇佐美に悟らせ、越後が一つにまとまる必要を訴えることにあった。 宇佐美は景虎の器にほれ込み、遂に長尾家に仕えることを承諾する。
甲斐では、勘助はもう戻らないと諦めが広がっていた。勘助を救うためには景虎の要求通り、鉄砲100挺を越後に届けなければならないが、先に買い付けた100挺は既に砥石の大敗で失われていた。そんな中、大井夫人(風吹ジュン)が病に倒れた。病床にあって夫人は晴信に勘助を救うようにと訴えかける。
宇佐美を得たことによって、いよいよ景虎は越後統一に乗り出した。新たに軍師となった宇佐美の策が功を奏し、最後まで敵対を続けた同族・長尾政景が景虎の軍門に下り、遂に越後は統一された。しかし、それこそが勘助が鉄砲を調達する期限に他ならず、それまでに鉄砲を用意できなかった 勘助は処刑が決定。刑が執行されようとしたまさにその瞬間、思いがけぬ救いの手が届いた。
(34)真田の本懐
越後で捕われていた勘助は晴信によって救われ、甲斐へ戻った。勘助不在の間に武田は村上に大敗、その原因を作った真田に対する家中の視線は冷ややかだった。難攻不落の砥石城を攻略して汚名をそそぐ以外に真田が生き残る道はなかった。そんな真田に勘助は秘策を伝授する。村上方に属する真田の弟・常田隆永(橋本じゅん)を武田に寝返らせるというのだ。そのためには兄弟の主家・海野家を晴信の手によって再興する必要があった。
真田は晴信の了承を得て、忍芽(清水美砂)の兄で上州・海野家の姫を守っている河原隆正(河西健司)に使者を送る。河原は武田を憎んでいた。そんな兄が了承するはずがないと考えた忍芽は常田の屋敷に乗り込む。そして自らの命と引き換えに真田についてくれと懇願するが常田は応ぜず、勝手に自害すればよいと冷たく言い放つ。忍芽が刀を手にしたその時、真田が河原を連れて駆けつけた。悲願である海野家の再興のために、恨みを捨てて武田につけと真田は常田を説得する。真田の夫婦愛に感動した事もあり常田はついに武田につくことを承諾した。
常田の調略に成功したことにより、砥石城を守る須田新左衛門(鹿内 孝)も武田に内応して、難攻不落を誇った村上軍の砥石城はあっけなく落ちる。真田は真田郷全体の領土回復に成功して、遂に本懐を果たす。
(35)姫の戦い
勘助は原 虎胤(宍戸 開)から突然、妻をめとるよう勧められる。紹介されたのは原の末娘・リツ(前田亜季)。リツは以前から勘助に恋していたようで、その熱烈さには勘助もあきれ返る。
長らく訪ねていなかった由布姫に会いに諏訪に向かう勘助は道中、美しい姫を守る不審な一行に出会う。姫は武田の一族で晴信の命で甲府に向かう途中という。 晴信に側室がいるとリツから聞かされていた勘助はその於琴姫(紺野まひる)こそが新しい側室ではと疑惑を抱く。
晴信の訪れもなく時間をもてあましていた由布姫は勘助から大井夫人が病いと聞き甲府に見舞いに出向きたいという。由布姫を連れ甲府に戻った勘助は側室について晴信を問い質す。初めはとぼけていた晴信だがやがて於琴姫こそが新しい側室と白状する。由布姫も側室の存在を知り、嫉妬の炎を燃やす。 そして勘助にわが子・四郎(本川嵐翔)を武田家の跡継ぎにしたいと宣言する。さらに由布姫は、於琴姫に子ができて四郎の競争相手となるのが不安であると語り、於琴姫が如何なる女性か探るよう勘助に命じる。
勘助はある覚悟を決め、於琴姫が住まう積翠寺へと向かう。
(36)宿命の女
晴信の新しい側室・於琴姫を由布姫のために斬るつもりで勘助は姫の住まう積翠寺を密かに訪れた。しかし、その天真爛漫な美しさを前に殺意は薄れ、由布姫の子・四郎の立場を尊重するように釘をさすことしかできなかった。
一方、義元に嫁いでいた晴信の姉が世を去ったことで武田と今川は同盟を維持するため新たな縁を結ぶこととなった。勘助はこれまでとは逆に、今川家の娘を晴信の嫡男・太郎の嫁に迎えるよう進言する。
年が明けた天文21(1552)年の正月、武田家を揺るがす大事件が起きた。重臣・小山田信有(田辺誠一)が側室・美瑠姫(真木よう子)に刺殺されたのだ。美瑠姫は武田に滅ぼされた笠原清繁(ダンカン)の正室であったが、滅亡後に小山田が貰い受けて側室としていた。美瑠姫が自害もせずに側室に甘んじていたのは、お腹に笠原の子を宿していたからだった。しかし、小山田の子と偽って育ててきた息子を病いで失ってしまい、生きる希望を失った美瑠姫は、自分から全てを奪った武田への復讐心を甦らせ、小山田を殺し自らの命も絶ってしまう。 美瑠姫の境遇は由布姫と重なり合う点も多く、勘助は小山田に共感していた。勘助の受けた衝撃は大きかった。
(37)母の遺言
自らの死期を悟った大井夫人は初めて勘助と対面し、晴信の行く末を託す。
同じ頃、関東管領・上杉憲政は新興の氏康に追い詰められていた。家老・長野業政(小市慢太郎)の進言に従い、憲政は景虎を頼って越後へ落ち延びることを決意する。
いよいよ関東制覇を目前とする氏康の元を勘助が訪れた。武田・今川・北条の三国同盟を結ぶよう打診するためだった。そこへ憲政の家臣・妻鹿田新介(田中 実)が憲政の嫡男・竜若丸(太賀)を人質に寝返りを申し出てきた。敵ながらその裏切りに憤った氏康は竜若丸に本懐を遂げさせ、義を守ることをわが子・新九郎(早乙女太一)に教える。
甲斐に戻った勘助は、晴信の娘・梅(福田麻由子)を北条家に嫁がせるよう進言する。政略結婚を積み重ねることで三国の同盟を成立させるのが勘助の策だった。飯富虎昌(金田明夫)はこの同盟が将来破棄された場合、今川の娘と結婚する嫡男・太郎(小林 廉)の立場が悪くなるのではと危惧する。大井夫人もかつて晴信が父・信虎(仲代達矢)と対立したように親子が争うことを恐れていた。
天文21(1552)年5月、最期まで武田家の行く末を案じながら大井夫人はこの世を去った。
(38)村上討伐
晴信はいよいよ信濃の仇敵・村上を討伐すべく軍を起こした。勘助を中心とした調略が功を奏したのか、信濃の領主たちは次々と戦わずして降伏し、村上はたちまち孤立。二度に亘って武田を破りながら村上は策略によって追い詰められたのだった。勝ち目がないと悟った村上は景虎を頼って越後に落ちることを決意する。村上は、自らは敵中突破を試み、妻・玉ノ井(中島ひろ子)にはより安全な道を行くことを命じた。妻の一行には平蔵の子をお腹に宿したヒサの姿もあった。
しかし、村上の思惑とは逆に、妻の一行の行く手には戦意に燃える馬場信春(高橋和也)の軍勢が待ち構えていた。玉ノ井やお付きの侍女たちは武田の待ち伏せを悟り、次々と自害してしまう。ヒサは諏訪にいた頃よりの顔見知りの馬場によって見逃されるが、その顔に唾をはきかけ憎悪を露にする。一方、皮肉にも無事に落ち延びた村上は景虎に武田の悪辣ぶりを訴え援軍を求めた。景虎は正義の実現のために信濃出兵を遂に決意する。かくして長きにわたる川中島の戦いが勃発する。
(39)川中島! 龍虎激突
天文22(1553)年8月、景虎率いる越後勢が信濃川中島に出陣した。川中島の戦いの勃発である。景虎の勢いは凄まじく、次々と武田に属する城を落としていった。その狙いは晴信の首にあると見た勘助は反撃策を退け、なるべく南に景虎を引きずり込み、武田領で孤立した越後勢を討つ策を立てる。
景虎の目標はかつての村上の本拠地・坂木城と見た勘助は、そこでの反撃を計画していた。しかし、景虎の軍師・宇佐美は勘助の狙いを見破り、武田の信濃の拠点・深志城方面へ進路を転じた。深志を狙えば、晴信の本軍をおびき出せると見たのだ。深志の手前には諸角の守る城があったが、晴信は撤退を命じた。
しかし、策略に頼りまともに戦おうとしない武田の戦ぶりに不満を抱いていた諸角は自らが戦って死ぬことで模範を示そうと命令に反し籠城した。晴信は直ちに諸角を救うため援軍を派遣し、勘助は長尾勢に夜襲を仕掛ける策を立てた。諸角の突飛な行動がひきおこした波紋は非常に大きかった。
初の龍虎対決、そして勘助、宇佐美、二人の軍師の知恵比べは意外な結末を迎えることとなるのであった。
(40)三国同盟
景虎との初対決を終えた晴信は、久々に諏訪の由布姫を訪れた。勘助とリツの結婚話を晴信が進めていると聞き、由布は複雑な思いを抱く。
天文22(1553)年の冬、景虎は官位を賜った御礼を述べるべく京へ上洛の途についた。この好機を見計らった勘助は、かねてからの構想である三国同盟の実現に乗り出す。既に武田と今川は盟約を結んでいたが、今川と北条は仇敵の間柄であり、その両者を和解させるために勘助は敢えて北条に挙兵を促す。尾張で戦いの最中にある今川は背後を北条に突かれれば武田の仲介に応じるしかない。その機に乗じて一気に三国同盟を成立させるのが勘助の策だった。北条出兵の知らせに、太原崇孚雪斎(伊武雅刀)は勘助の策に乗るしかないと悟り、積極的に同盟成立に動く。
天文23(1554)年。駿河・善得寺に武田晴信・今川義元・北条氏康が一堂に会し、三国同盟は成立した。こうして武田は北の越後との戦いに専念する体制を作り上げた。同盟の証に、北条家に武田家の姫・梅が嫁ぐこととなった。戦国の習いとはいえ、愛娘との別離を強いられる三条は、涙で梅を抱きしめるのだった。
(41)姫の死
由布姫が病いに倒れた。見舞った勘助に由布姫は「もう長くは生きられぬ」と静かに語る。晴信は酒の席で、越後と木曽のどちらを先に攻めるかを由布姫に決めさせた。由布の意見は木曽攻めであり、勘助は早速、木曽攻略に向かうことを決める。出発の日、由布は挨拶に訪れた勘助に、戦から戻ったら嫁を取るよう迫る。これまでリツとの祝言を頑なに拒んできた勘助だが遂に嫁取りを約束する。
ところが木曽攻めの最中に景虎が挙兵し、善光寺平に兵を進めた。勘助は晴信と共に出陣、しかし戦線は膠着し対陣は200日に及んだ。これ以上の長期戦を嫌った勘助は雪斎に仲立ちを頼み、両軍は和議を結んだ。仕事を終えて駿河に戻った雪斎は、病いに倒れそのまま世を去った。
この年の11月、いよいよ由布姫に死期が迫っていた。晴信が見守る中、由布姫は四郎(池松壮亮)のことを晴信に託し、静かに息を引き取った。何も知らない勘助は再び木曽に向かっていた。木曽を完全に降伏させ、それを由布に報告しようと勇む勘助のもとに悲報が届く。
原作:井上 靖 (『風林火山』新潮社 刊)
脚本:大森 寿美男
音楽:千住 明
テーマ音楽演奏:NHK交響楽団
テーマ音楽指揮:高関 健
演奏:ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団
語り:加賀美 幸子アナウンサー
[出演]
内野 聖陽 (山本勘助)
市川 亀治郎 (武田晴信)
ガクト(Gackt) (長尾景虎)
池脇 千鶴 (三条夫人)
金田 明夫 (飯富虎昌)
田辺 誠一 (小山田信有)
高橋 和也 (馬場信春)
嘉島 典俊 (武田信繁)
有薗 芳記 (河原村伝兵衛)
近藤 芳正 (相木市兵衛)
河西 健司 (河原隆正)
橋本 じゅん (常田隆永)
中島 久之 (香坂筑前守)
大橋 吾郎 (大熊朝秀)
──────────
佐々木 蔵之介 (真田幸隆)
佐藤 隆太 (平蔵)
水川 あさみ (ヒサ)
岡森 諦 (矢崎十吾郎)
大森 暁美 (志摩)
絵沢 萠子 (キヌ)
西田 尚美 (桃)
真木 よう子 (美瑠姫)
清水 美砂 (忍芽)
紺野 まひる (於琴姫)
浅田 美代子 (萩乃)
占部 房子 (浪)
鈴木 瑞穂 (上杉定実)
金田 賢一 (柿崎景家)
大門 正明 (倉賀野直行)
今井 朋彦 (小笠原長時)
吉田 鋼太郎 (津田監物)
高田 延彦 (小島五郎左衛門)
鹿内 孝 (須田新左衛門)
田中 実 (妻鹿田新介)
前田 亜季 (リツ)
柴本 幸 (由布姫)
──────────
西岡 徳馬 (直江実綱)
市川 左團次 (上杉憲政)
谷原 章介 (今川義元)
松井 誠 (北条氏康)
伊武 雅刀 (太原崇孚雪斎)
横内 正 (清水吉政)
永島 敏行 (村上義清)
市川 段四郎 (後奈良天皇)
加藤 武 (諸角虎定)
風吹 ジュン (大井夫人)
藤村 志保 (寿桂尼)
仲代 達矢 (武田信虎(回想))
緒形 拳 (宇佐美定満)
制作統括:若泉 久朗
制作:中村 高志
演出:清水 一彦・田中 健二・東山 充裕・
福井 充広・大杉 太郎
本文のストーリーは、NHK公式ホームページ『風林火山』の
あらすじ欄よりそのまま引用しました。
なお、出演者名(敬称略)は総集編の出演ではなく、
該当期間の本編に出演し、ピンクレジットで紹介された方を
順不同で並べ替えたものです。
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