大河ドラマ風林火山・(51-1)総集編・第一部 〜風の巻〜
(1)隻眼の男
時は天文4(1535)年。
大林勘助(後の山本勘助/内野聖陽)は、兵法を極めるために諸国を修業する浪人だった。15年の旅を終え、実家の大林家を継ぐために故郷の三河へ向かっていた勘助は、途中、甲斐国葛笠村に立ち寄り、農民のミツ(貫地谷しほり)や平蔵(佐藤隆太)らと出会う。
その頃の甲斐国は武田信虎(仲代達矢)が国の統一にようやく成功し、さらに勢力を伸ばそうと駿河の今川・相模の北条と敵対していた。武田と今川の戦いは農民たちをも巻き込み、葛笠村も今川の雑兵たちに襲われる。勘助はミツを救うため、武田の武将・赤部下野守(寺島 進)と激しい剣戦を繰り広げる。
一方、武田家の主力が今川と対峙している間につけ込んで、相模の北条氏康(松井 誠)が甲斐に攻め込んできた。応戦する板垣信方(千葉真一)率いる武田軍と北条軍の戦ぶりに感心する勘助だったが、勘助についてきたミツが北条の武将(きたろう)に捕らわれてしまった。取って返した勘助が間一髪でミツを助け出し、勘助とミツは一夜をともにする。翌朝、ミツが目覚めると、隣にいたはずの勘助がいない。軒下に摩利支天を残して、三河へ出発した後であった。
(2)さらば故郷
15年ぶりに三河牛窪に帰ってきた大林勘助は、討ち取った赤部下野守の首を手土産に大林家の家督を継ぐ決意だった。しかしいざ戻ってみると、養父・大林勘左衛門(笹野高史)には実子・勘兵衛(門野 翔)が生まれており、もはや勘助は厄介者扱いであった。勘助は大林家を出て、以後は実家の山本姓を名乗ることとし、そのまま駿河へ向かう。駿河には実母・安(あめくみちこ)の叔父で、勘助の大叔父にあたる庵原忠胤(石橋蓮司)が今川家家老として仕えており、そのつてで仕官を果たすためであった。
実家に戻った勘助は実兄・山本貞久(光石 研)と再会し、貞久が今川家家臣・福島越前守(テリー伊藤)に仕えていることを知る。勘助は武田方から盗み聞いた、福島が武田と内通して今川を裏切ろうとしている噂を思い出し、兄の身の上を心配する。
一方武田家では、当主・信虎と嫡男・勝千代(後の武田信玄/池松壮亮)との対立が浮き彫りになり始め、勝千代の母・大井夫人(風吹ジュン)と傅役・板垣は胸を痛めていた。信虎は思慮深い勝千代を疎み、弟の次郎(後の武田信繁/園部豪太)を可愛がる。
(3)摩利支天の妻
故郷での仕官がかなわず失意のどん底にいた勘助は、再び甲斐に姿を見せた。そこで勘助はミツと再会し、ミツが妊娠していることを知る。ミツは勘助の子だと言うが、勘助はミツを冷たく突き放し、ミツに好意を抱く平蔵たちと喧嘩になる。
武田家では、当主・信虎が信濃に攻め入ると宣言。戦に明け暮れる日々に家臣や領民の不満が高まる中、元服したばかりの嫡男・晴信(市川亀治郎)は趣味の和歌に没頭し、怠惰な生活を続けていた。板垣はその真意を測りかねていたが、大井夫人は父との対立を避けるために敢えて愚か者を演じているのではないかと考えていた。板垣は晴信を諌めるために苦手な和歌で勝負を挑む。
その頃、村で無為な日々を送っていた勘助は、農民たちの屈託のない生き様に触れるにつれて少しずつ心を開き、一人の百姓として村でミツと共に暮らしていくことを決意する。そんな折、鹿狩りに来た信虎は偶然ミツを見かける。幸せの絶頂にいたミツを見て、獲物が取れず苛立っていた信虎の矢先は、ミツに向けられた。
(4)復讐の鬼
ミツが信虎に惨殺された。ミツに惚れていた平蔵は武田を倒すと叫ぶが、勘助は冷静になるように諭す。しかし村に板垣がやってくると、今まで抑えていた復讐心がはじけ、勘助は板垣に斬りかかる。勘助をねじ伏せた板垣だったが、その面構えを見て討ち取るのを思いとどまる。
板垣からその話を聞いた晴信は、密かに勘助を呼ぶように命じる。武田への恨みを心に秘める勘助を見抜いた晴信は、恨みを捨てて大望を抱けと勘助を説く。晴信の器量を知った勘助に、板垣は間者として駿河に赴くように命じる。今川家の内紛の実情を探らせると同時に、武田憎しで固まっている勘助を晴信のそばから遠ざける必要があったのである。
駿河で勘助は、今川家当主・氏輝(五宝孝一)の命を狙う陰謀が、兄の貞久も巻き込んで進行していると大叔父・庵原に告げる。しかし庵原の答えは意外なものだった。
(5)駿河大乱
庵原の仲立ちで、勘助は今川家の実質的な女当主・寿桂尼(藤村志保)の知遇を得る。勘助の真の狙いは今川家の家督争いを利用して、ミツを殺した信虎に復讐することにあった。一方、寿桂尼の実子で家督継承を狙う梅岳承芳(後の今川義元/谷原章介)とその軍師・太原崇孚雪斎(伊武雅刀)は、武田家重臣・小山田信有(田辺誠一)と密かに接触し、信虎との和議を画策していた。
勘助は、武田家と通じる福島に仕えている兄・貞久に寝返るよう促すが、貞久は全く聞き入れない。武田が援軍に来ることを信じて挙兵する福島勢。しかし梅岳承芳と手を結んだ信虎は出陣しない。福島は窮地に陥り、出陣した信虎を討つという勘助の目論見も空振りに終わってしまう。今や福島勢が籠もる花倉城は孤立無援、炎上する城から脱出を図る福島一門を追い込む勘助。しかしその勘助の前に立ちふさがったのは貞久であった。
(6)仕官への道
花倉城で敗れた福島は、接触していた武田家家臣・前島昌勝(塩野谷正幸)を頼って甲斐に落ちのびるが、信虎の命を受けた小山田に討ち取られてしまう。さらに、信虎の意を受けて福島と事を運んでいた前島まで討てと命を下す信虎に、晴信は板垣や甘利虎泰(竜 雷太)ら重臣たちの前で猛然と反対し、父子の不仲は決定的なものとなっていく。
一方、今川義元と名を改めた梅岳承芳の勝利に貢献した勘助は今川家への仕官を望むが、勘助を嫌う義元は受け入れない。さらに、信虎と義元が同盟を結んだことで、今川の力を借りて武田への復讐を果たすという勘助の願いはもろくも崩れ去ってしまう。
そして武田と今川の同盟の証として、京都の公家の娘・三条夫人(池脇千鶴)が今川家の仲介により晴信の元に輿入れする。政略結婚ではあったが、三条の優しさに晴信は好感を覚える。同じ頃、勘助はかつて北条にいたという青木大膳(四方堂 亘)から、北条家に敵方の間者が紛れ込んでいるという情報を得る。新たな主を探していた勘助は、その情報を元に氏康に仕官すべく、一路小田原を目指す。
(7)晴信初陣
武田を討てるのは他にいないと氏康に仕官を願い出た勘助だったが、その望みが私怨を晴らすことに過ぎないと見た氏康は聞き入れなかった。その頃、甲斐では今川家との和議が成立し、背後の心配がなくなった信虎が信濃侵攻を宣言し、その戦いが晴信の初陣となることが決まった。そして氏康に断られた勘助が次に向かったのがその信濃だった。
信濃で、武田を怨んで甲斐を捨てた平蔵と偶然再会した勘助は、平蔵が仕える真田幸隆(佐々木蔵之介)と出会う。真田家は領土こそ小さいものの、当主・幸隆の下で強い団結力を誇っていた。幸隆の人柄・才能にほれ込んだ勘助は真田の地に留まり、幸隆の妻・忍芽(清水美砂)から手厚くもてなされることで、今まで知ることのなかった安らぎを味わう。
一方、晴信は三条夫人から、信虎が本当は自分のことを愛していると聞いて一度は父に心を開こうとするが、結局は信虎から拒絶されてしまう。父子の不仲が修復不能となる中、天文5(1536)年11月、いよいよ晴信は初陣の時を迎える。勘助と晴信の戦場での対決が目前に迫ろうとしていた。
(8)奇襲! 海ノ口
勘助と平蔵は、信虎率いる8,000の武田軍が向かう海ノ口城にいた。城主・平賀源心(菅田 俊)から策を求められた勘助は、城の守りを固める策を次々に打ち出す。信虎は海ノ口城の敵を小勢と侮って力攻めを仕掛けるが、勘助の策によりなかなか攻め落とすことができない。一方、初陣の晴信は板垣とともに後方に置かれたまま、ついに戦に参加することは許されなかった。前線で怒り狂う信虎の作戦はことごとく勘助に見抜かれ、予想をはるかに超えた長期戦となった。そして武田軍の兵糧がつきかける頃、ついに雪が降り出した。雪が降るまで時を稼ぐ、これこそが勘助の軍略だった。憔悴しきった信虎はついに撤退を決める。そんな中、晴信は信虎にののしられながらもしんがりの役目を務めることを志願する。
海ノ口城では武田軍の撤退を見て喜び、援軍も次々と引き上げていった。しかし勘助は、晴信がしんがりとして軍の最後尾にいるという情報を聞き、不安をかくせずにいた。城兵たちが勝利の酒宴に酔いしれていたその時、撤退と見せかけた晴信の軍勢が、わずか300の手勢で突如攻め込んできた。
勘助と晴信の海ノ口城、最後の攻防が始まる。
(9)勘助討たれる
晴信は奇襲作戦で海ノ口城を奪った。勘助と平蔵は城内に潜んでいたが、平蔵は勘助の制止を振り切って晴信に向けて矢を放つ。しかし間一髪のところで板垣によって防がれてしまい、勘助は平蔵の身代わりとして、死を覚悟して晴信の前に姿を現すことにする。晴信は怒る板垣を制し、自ら勘助の首に向けて太刀を振り下ろし、その手をすんでの所で止める。晴信が討ち取ったのは、勘助の命ではなく、勘助の武田への復讐心であった。
晴信は奪った城をそのままに甲斐へ戻るが、先に引き揚げていた信虎はその行動に激怒する。自らが落とせなかった城を簡単に奪った晴信への嫉妬がそこにあった。
それから3年後、晴信の妹・禰々(桜井幸子)が諏訪頼重(小日向文世)の元に嫁ぐことで武田と諏訪は同盟を結ぶ。頼重の娘・由布姫(柴本 幸)の美しさに心を奪われた信虎は由布姫を自らの側室にと望み、頼重を困惑させる。そして翌天文10(1541)年、新年の祝いの席で信虎は晴信を駿河に追放する意思を鮮明にする。信虎の振る舞いを許せない晴信はついに自らの決意を板垣に打ち明ける。
(10)晴信謀反
晴信による父追放の決意は、様々な波紋を呼んだ。晴信を推す板垣は密かに重臣の説得を始め、駿府では義元と寿桂尼の間で、信虎と晴信のどちらに味方すべきか議論になっていた。謀略が進行していることに気づかないまま、信虎は領土拡大を目指し信濃に出兵する。狙われたのは真田ら信濃の小豪族だった。駿府でくすぶっていた勘助は信虎の信濃出兵を聞き、かつて世話になった真田を案じて信濃に入るが、すでに真田の城からは火の手が上がっていた。信虎の信濃攻めは成功し、真田は関東管領・上杉家を頼り上州へ逃れた。
凱旋帰国した信虎は、今川家から駿河に招待するという書状を受け取る。それは今川が晴信に味方することを意味していた。信虎が駿河を訪問している間にそのまま追放してしまおうという晴信の策を義元が承諾したのだ。何も知らない信虎は駿河に出向く。そして晴信は大井夫人や三条夫人に父の追放を告白する。
一方、今川家では誰が信虎を迎えにいくかを思案していた。追放を知って怒り狂う信虎をしずめることができるのは誰か。意外な人物に白羽の矢が立てられる。
(11)信虎追放
晴信は父・信虎を追放することを重臣一同の前で明らかにした。信虎に可愛がられ、家督を継ぐと見られていた弟・信繁(嘉島典俊)は兄の決断を支持する。信虎派と見られていた小山田や諸角虎定(加藤 武)も同意し、ここに武田家臣団は晴信支持で一致団結する。一方、何も知らない信虎は駿府訪問を終え予定通り甲斐に戻ろうとしていた。
しかし国境で信虎を待ち受けていたのは、槍を構えた武田の足軽隊だった。そこへ晴信と信繁、そして板垣ら家臣が現れ、晴信は信虎に追放を通告する。信じられない信虎は強引に国境を突破しようとするが、槍と弓矢に行く手を阻まれ、ついに甲斐国守護の座を晴信に奪われたことを悟る。
そのとき今川家から信虎を駿府に連れ帰る役目の勘助が現れた。信虎は観念し駿府に引き返すことにする。しかし道中、突如、信虎は勘助に襲い掛かる。ミツを惨殺されて以来、信虎を怨み続けてきた勘助も太刀を抜き、信虎と勘助の一騎打ちが始まる。
原作:井上 靖 (『風林火山』新潮社 刊)
脚本:大森 寿美男
音楽:千住 明
テーマ音楽演奏:NHK交響楽団
テーマ音楽指揮:高関 健
演奏:ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団
語り:加賀美 幸子アナウンサー
[出演]
内野 聖陽 (山本勘助)
市川 亀治郎 (武田晴信)
ガクト(Gackt) (上杉謙信)
池脇 千鶴 (三条夫人)
金田 明夫 (飯富虎昌)
田辺 誠一 (小山田信有)
高橋 和也 (教来石景政)
宍戸 開 (原 虎胤)
嘉島 典俊 (武田信繁)
有薗 芳記 (河原村伝兵衛(伝助))
有馬 自由 (葛笠太吉)
──────────
佐々木 蔵之介 (真田幸隆)
佐藤 隆太 (平蔵)
水川 あさみ (ヒサ)
岡森 諦 (矢崎十吾郎)
清水 美砂 (忍芽)
浅田 美代子 (萩乃)
大森 暁美 (志摩)
桜井 幸子 (禰々)
谷原 章介 (今川義元(梅岳承芳))
松井 誠 (北条氏康)
伊武 雅刀 (太原崇孚雪斎)
石橋 蓮司 (庵原忠胤)
横内 正 (清水吉政)
光石 研 (山本貞久)
テリー 伊藤 (福島越前守)
上杉 祥三 (高遠頼継)
今井 朋彦 (小笠原長時)
菅田 俊 (平賀源心)
笹野 高史 (大林勘左衛門)
きた ろう (北村右近)
貫地谷 しほり (ミツ)
柴本 幸 (由布姫)
──────────
千葉 真一 (板垣信方)
竜 雷太 (甘利虎泰)
小日向 文世 (諏訪頼重)
寺島 進 (赤部下野守)
辻 萬長 (勝沼信友)
近藤 芳正 (相木市兵衛)
小林 勝也 (諏訪満隣)
加藤 武 (諸角虎定)
風吹 ジュン (大井夫人)
藤村 志保 (寿桂尼)
仲代 達矢 (武田信虎)
制作統括:若泉 久朗
制作:中村 高志
演出:清水 一彦・磯 智明・田中 健二
本文のストーリーは、NHK公式ホームページ『風林火山』の
あらすじ欄よりそのまま引用しました。
なお、出演者名(敬称略)は総集編の出演ではなく、
該当期間の本編に出演し、ピンクレジットで紹介された方を
順不同で並べ替えたものです。
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