vol.1 花の生涯
◆舞台の時代
[平安][鎌倉][室町][戦国][江戸初期][江戸中期][幕末][近代][昭和]
天保13(1842)年〜文久2(1862)年
◆放送データ
- 放送期間:昭和38年4月7日〜12月29日 (全39回)
- 放送時間:毎週日曜 午後8時45分〜9時30分
(18)お吉・お福・(21)下田港 は午後10時15分〜11時00分
(28)五月雨の章 は午後9時〜9時45分 - 初回視聴率:25.6%
- 最高視聴率:32.3%
- 平均視聴率:20.2%
◆番組放送日と各回サブタイトル
- 4/-7 青柳の糸
- 4/14 雲うごく
- 4/21 眉紅き人
- 4/28 朝のいとま
- 5/-5 尾花の別れ
- 5/12 蜘蛛の糸
- 5/19 想う人
- 5/26 うす雪の竹
- 6/-2 雪の門出
- 6/-9 登城すがた
- 6/16 彦根牛
- 6/23 黒船の章
- 6/30 密入国
- 7/-7 おしろい椿
- 7/14 葉桜の章
- 7/21 風濁る
- 7/28 安政小唄
- 8/-4 お吉・お福
- 8/11 明鳥の章
- 8/18 らしゃめん記
- 8/25 下田港
- 9/-1 こん四郎 江戸へ行く
- 9/-8 江戸の風
- 9/15 加茂川千鳥
- 9/22 春ふたたび
- 9/29 大老職
- 10/-6 百本杭の章
- 10/13 五月雨の章
- 10/20 不時登城
- 10/27 妖霊星
- 11/-3 奈落の影
- 11/10 大獄の章
- 11/17 江戸送りの章
- 11/24 断罪の章
- 12/-1 飛ぶ雲の章
- 12/-8 宵節句の章
- 12/15 君消ゆる
- 12/22 狂乱の章
- 12/29 たか女後日
◆あらすじ
日本の海に突然「黒船」が出没し、江戸幕府に強く通称を求めた。開国か攘夷かのあわただしい時に、鎖国を国是としている幕府は対応に苦慮。彦根藩主・井伊直弼を大老に命じ、外交交渉に当たらせる。部屋住みから身を起こした井伊が日米修好通商条約を調印し、反対する尊王攘夷派の吉田松陰や佐久間象山らを「安政の大獄」で投獄・処刑。その後、水戸浪士らの手によって桜田門外で暗殺されて倒れるまでの生涯を、数人の女性を絡ませて描いた歴史小説。原作は舟橋聖一が昭和27(1952)年~28(1953)年に毎日新聞紙上で連載していた歴史小説『花の生涯』。歌舞伎・新派・新劇の各界から、延べ100人余のスターが登場。井伊の生涯を歌舞伎界の大御所・[2]尾上松緑が好演、映画界のスター・佐田啓二のテレビ初出演でも話題になった。
物語終盤の桜田門外の変のシーンでは、映画会社所有の城(通称・東映城)を借り切って撮影。事件当日の雪模様は、東映城の屋根を白ペンキで塗り、地面の雪は、白布を広げ、白砂を撒き、発泡スチロールを飛ばして再現したという。また、現在では全く普通のこととして行われているが、物語を追わないでバラバラに撮影する方法がとられ、非常な成功を収めている。
◆トピック
- タイトルバックは城をさまざまな角度から撮影したもので構成。ラストは、井伊直弼と思われる人物が従者を連れて入城するシーンで終わっている。
- 記念すべき第一話「青柳の糸」が現存され、DVDで視聴することができる(→◆この作品を楽しむためには を参照)
◆主要スタッフと出演者
原作:舟橋 聖一
脚本:北条 誠
音楽:冨田 勲
演奏:フールサンズ セレナーダス
語り:小澤 栄太郎
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[2]尾上 松緑 (井伊直弼)
八千草 薫 (直弼正室・昌子の方)
香川 京子 (直弼側室・秋山志津)
内田 朝雄 (間部下総守詮勝)
井上 孝雄 (井上信濃守清直)
嵐 寛寿郎 (水戸斉昭)
花柳 武始 (松平肥後守容保)
中谷 昇 (伊佐新次郎)
江見 俊太郎 (関鉄之介)
加藤 武 (金子孫二郎)
山形 勲 (有村次左衛門)
森塚 敏 (大関和七郎)
沼田 曜一 (佐野竹之助)
服部 哲治 (斎藤監物)
内田 稔 (黒沢忠三郎)
須永 宏 (高野長英)
下條 正巳 (三浦北庵)
穂積 隆信 (中村長平)
西村 晃 (多田一郎)
田村 正和 (多田帯刀)
山岡 久乃 (黒沢トキ子)
長門 裕之 (鶴松(河井又五郎))
朝丘 雪路 (唐人お吉)
久米 明 (ハリス)
岡田 真澄 (ヒュースケン)
岩崎 加根子 (雪野太夫)
小池 朝雄 (峰岸龍之介)
賀原 夏子 (老女とめ)
庄司 永建 (中井六郎兵衛)
久富 惟晴 (星野新蔵)
大塚 周夫 (六造)
加藤 道子 (中老静橋)
渥美 国泰 (玉の市)
初井 言栄 (秋山くら)
長門 勇 (甚六)
奈良岡 朋子 (おせい)
芦田 伸介 (竹本重太夫)
林 邦史朗 (その他)
石坂 浩二 (その他)
北村 和夫 (宇津木六之丞)
[2]中村 芝鶴 (犬塚外記)
小栗 一也 (秋山勘七)
東 恵美子 (主膳の妻・長野多起)
佐田 啓二 (長野主膳)
淡島 千景 (村山たか)
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制作:合川 明
美術考証:鳥居清忠
装置:富樫直人
演出:井上 博
◆この年の日本と世界
家庭用プロパンガスが急速に普及、台所革命が起きる。アメリカでは、11月にケネディ大統領が暗殺され、その急報は実験中だった衛星放送に乗って日本に報道された。
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「花の生涯」が始まった昭和38年は、翌年に東京オリンピックを控えた高度成長期の真っ只中。五輪に向けて、一般家庭にもテレビが普及しだしたときである。斜陽産業となりつつあった映画界では、人気スターをテレビにとられないために、「テレビに出ると商品価値が下がる」と吹き込んでいたという。一方、テレビ側は出演料を引き上げて、スターを引き抜こうとするなど、映画vsテレビで熾烈な競争が行われていた。だが時代の流れか、石原裕次郎をはじめとする大物スターたちは次々とテレビドラマに進出することになる。この動きにのって「花の生涯」にも、松竹の看板スター・佐田啓二や尾上松緑、淡島千景ら、当時テレビでは不可能とされていた豪華キャストが揃った。またふんだんにロケを行うなどし、映画・演劇界から見下されていたテレビドラマのチイを一挙に高めた作品となった。
<「僕たちの好きな新選組」13頁より一部抜粋の上引用>
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この作品のプロデューサー・合川 明氏は、後にこう語っています。
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「日曜の夜、家族みんなで楽しめる娯楽ドラマを作れ!」。新任の長沢泰治芸能局長に、じかに命令されました。「おれは報道出身で、芸能のことは無知だ。好きなようにやってみろ」、ただし、今、全盛の映画スターを使うこと。佐田啓二、長谷川一夫、淡島千景、京マチ子、ズラズラッと名前を挙げるのです。「なんと“お素人”の怖さ。できっこないよ」と思ったものです。昭和35年当時は、松竹、大映、東宝、日活、東映の映画五社のスターは絶対テレビに出さないという、厳しい「五社協定」を結んでいました。テレビはスタートして8年目、いわゆる“半なま”の時代で、人もカメラも、狭くほこりっぽいスタジオをドタドタと走り回るという感じで、意欲に燃えていても内容は地味で独りよがりな作品も多かった。そこに「偉大な常識家」長沢親分のけんらん豪華ドラマの号令です。「えらいこっちゃ、そんなの無理だよ」と思っても、一応作品は一年持つ脚色時代劇と決め、「赤穂浪士」「宮本武蔵」「伊達政宗」「大菩薩峠」などが候補になりました。結局ロマン時代劇「花の生涯」のシノプシス(あらすじ)を作って、松竹と佐田啓二にぶつかっていったわけですが、もちろん両者ともけんもほろろ。親分に「歯が立ちません」と泣きを入れても、「何言ってる、何回でも行け」ですよ。
土日曜ごとに、田園調布の佐田邸に押しかけ続けました。一応通されるのが茶室です。佐田さんは小津安二郎の秘蔵っ子スター。撮影がいつも延びて、待つ間にまだ幼かった中井貴恵、貴一の姉弟に、トランプを教えたり、ボール遊びをしたりしてました。会えても佐田さんとは世間話ばかりで、なかなか本題に入れない。毎週月曜日、局長室でしかられることの繰り返しです。十数回目の佐田邸で、半分ヤケになり「佐田さん、もういいです。帰ります」と、預けた台本を手に、立ち上がったら、「合ちゃん、ちょっと待って。聞かせて、長野主膳の役の性根を」と言われました。やっと作品、配役、井伊直弼について、監督、カメラ、照明のことまで聞かれました。うれしかったですねぇ。安サラリーマンには、目もくらむ高価な洋酒で佐田さんと乾杯まで、こぎ着けたんです。「局長、OKになりそうです!」「よかったな、よくやった。それで次は誰じゃ?」とまあ、そんなやりとりがありました。
<「テレビ50年 〜あの日あの時、そして未来へ」84頁より一部抜粋の上引用>
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そういったスタッフの熱意が感じられ、作品的・視聴率的には成功をおさめた「花の生涯」でしたが、
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役者の出演料がかさんで、制作費は民放の3倍とも5倍とも噂された。それゆえ、一部の知識人からは「札束ドラマ」とも非難されたという。そこで、放送総局長が「NHKは全国に電波を送っているので、多くの支持を得ているスターはできるだけ起用したい。制作費がかかっても、満足してもらえるなら、受信料還元という意味も果たせると思う」と釈明した。
<「僕たちの好きな新選組」14頁より一部抜粋の上引用>
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こうして“大河ドラマ”第一作という不朽の金字塔が立てられたわけですね。
◆この作品を楽しむためには
花の生涯(上) 配信元:電子書店パピレス 提供:@niftyコンテンツ |
![]() | NHK想い出倶楽部II〜黎明期の大河ドラマ編〜(1)花の生涯 販売元:アサヒレコード |
次回は「vol.2 赤穂浪士」(昭和39年放送)です。
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