大河ドラマ龍馬伝・(15)ふたりの京
坂本龍馬は、昔 河田小龍に見せてもらった
世界地図を思い出しています。
その地図には日本がとても小さく描かれておりますが、
龍馬が土佐を出て日本を歩き回ってみると、
どう考えても日本は広いわけです。
龍馬には、会いたい人が二人います。
一人は、自分に生きる道を教えてくれる誰か。
そしてもう一人は……。
そんな胸の内を、姉・岡上乙女に文として送っています。
乙女は文を読み終えると、優しい目をしてつぶやきます。
「おまんの望む行き方をしぃや……龍馬」
文久2(1862)年8月25日・三条実美邸──。
病気のために大坂に留まっていた
土佐藩主・山内豊範が、ついに上洛。
それに合わせ、一緒に上洛した武市半平太は
攘夷派の公家である実美屋敷を訪れたわけです。
万策尽きた、という実美に、半平太は
14代将軍・徳川家茂を朝廷に呼び出して
帝の御前で攘夷決行を約束させる、と方策を打ちます。
もし、その役目を帝から得られれば、
実美も半平太も攘夷の先頭に立つということになります。
ところがある時、
半平太は聞き捨てならぬウワサを耳にします。
越後の浪人・本間精一郎という男が
「土佐藩の殿様を上洛させたのは、このわしだ」などと
大ぼらを吹いているらしいのです。
半平太としては、
そんな低俗なウワサが帝の耳にでも入ったらと思うと
気が気ではありません。
攘夷の先頭を行くどころの話ではありません。
しかし相手は、いくら浪人とはいえ 越後の人間です。
その壁が大きく、そして高く隔たっています。
半平太はさりげなく以蔵をチラと見て、
「そぉかのぉ〜?」と思わせぶりな態度をとります。
以蔵は、胸を熱くしています。
平井収二郎は、妹・平井加尾と久々の再会です。
土佐から京へ来て、はや4年。
加尾は京の暮らしにも京ことばにもすっかり慣れて、
どこから見ても京女そのものです。
そんな加尾の顔が急に変わったのは、
収二郎から 龍馬脱藩の話を聞いたときでした。
「おまんが知っちゅう龍馬ではないぜよ」と
収二郎はなおも追い打ちをかけます。
その龍馬が、
京に来ても一日たりとも忘れたことがなかった龍馬が、
加尾の前に突然姿を現したわけです。
加尾としては、あまりに突然のことであり
「いかんちや!」と屋敷内に駆け込んでしまいます。
でもやっぱり会いたい、我慢できない。
龍馬とは婚約までした間柄です。
次の瞬間には加尾は屋敷から飛び出して、
龍馬の姿を探して京をさまよいます。
川のほとりで、龍馬からじっくりと話を聞きます。
脱藩した龍馬がどうして京にいるのか?
それが加尾としてはとても気になる部分ですが、
そう、それは加尾に会うため。ただそれだけです。
脱藩してお尋ね者である龍馬のために、
知り合いのおばあさんが一人で暮らす古屋に
龍馬を案内します。
古屋は通りから奥まったところにあって、
ここなら人目にもつきにくいわけです。
部屋の明かりを灯す加尾の顔が、とても眩しく感じられます。
最初は平静を装っていた二人も、
積年の想いがつのり、しっかりと抱きしめ合います。
加尾はうっすら涙を浮かべ、龍馬は感情に震えています。
ちょうどその時、近くの木屋町で本間精一郎が殺されました。
翌朝、「土佐勤王党のバチが当たったがじゃあ!」と
勤王党の仲間は歓喜しますが、
暗に殺害を命じた半平太は「礼を言わないかんのう」と
以蔵に聞こえるように言います。
にんまりとする以蔵。
その陰で、半平太は収二郎にこっそりとささやきます。
「以蔵は使えるぞ」
収二郎は怪訝な顔をするばかりです。
古屋で新婚同然の暮らしをしている龍馬と加尾。
龍馬としては、お尋ね者の自分をかくまっていることで
加尾が収二郎に咎められることだけは
何としても避けたいところですが、
加尾はそんなことは全く気にしていない様子です。
最初の江戸剣術修行で大きな黒船を間近で見たこともあり、
日本がいかにケンカをせずに独立できるかを考えています。
なので、幕府に攘夷をけしかけようとしている半平太の考えには
正直言って賛同することができません。
ということは、半平太にゾッコンの収二郎とも
一緒の道を歩むことがないということになるわけで、
加尾は一抹の不安と寂しさを覚えます。
京の町では、相変わらず人斬りが続いています。
京に住む者たちは「まただ」とヒソヒソとウワサしていますが、
自分が狙われたくはないので、ヒソヒソ話止まりです。
そんなウワサを、少なからず加尾も耳にしています。
そんな中、半平太念願の江戸下りが決定しました。
しかも、将軍家茂に上洛の勅命を伝えに行く使者に選ばれた実美を
江戸まで警護するのは、半平太です。
土佐では、やれ上士だ! やれ下士だ!! と虐げられ、
屈辱的な想いをつのらせていた半平太が、
今や帝の使者の護衛役に大抜擢されたわけです。
半平太の力、頂点に極まれり! といったところでしょうか。
というわけで、帝の部下(?)の実美と
土佐藩のつながりを担ってきた加尾の役目はおしまい。
「土佐に戻りや」と収二郎に言われてしまいますが、
目に涙をいっぱい浮かべて、(兄としては)まさかの抵抗です。
「私は……武市さまや兄上の操り人形ですか!?」
そりゃそうです。
フィアンセの龍馬と別れさせられ、京に来て4年。
今までどんな思いで奉公に務めてきたと思っているのか。
いくらこういう封建的な時代とはいえ、兄とはいえ、許せません。
そんな時、収二郎の口からボロが出てしまいます。
「妹を犠牲にしてでも、邪魔をするヤツは殺してでも、
攘夷を成し遂げねばならんがじゃ!」
邪魔をするヤツは殺してでも……、
殺してでも……、
まさか……。
加尾はたまらず、兄の前から飛び出して
龍馬の元へ駆け出します。
相変わらずおばあさんの古屋に居候している龍馬。
加尾がそこへ飛び込むと、なんと以蔵がいるわけです。
なんでも、龍馬は以蔵とばったり出くわし、
脱藩の罪で捕まると思っていた龍馬の意に反して
以蔵は歓喜のあまり龍馬に抱きついてきたそうです。
そこには、昔ながらの心地いい風が流れていました。
勤王党の重圧感から久々に解放された以蔵は、
酒の力も手伝ってか、ついつい多弁になります。
「わしは、すごい仕事をしちゅうがじゃ!」
でも、全てを語らずとも 龍馬にはピーンときます。
加尾も、龍馬が考えていることを理解しました。
つまり、最近続いている人斬りは、以蔵がやっている。
いや、以蔵は人斬りを“させられ”ている。
以蔵の剣術は龍馬に負けないほどの腕ですが、
彼には教養がなかったため、政治的な活躍はしていません。
勤王党の仲間たちが藩からお役目をもらっていく中で、
自分だけ役目がないことに負い目を感じていた以蔵が
半平太命! で生き生きと働けているということは、
暗殺の命令を出しているのは半平太、と考えるのは容易です。
半平太に命じられれば、それがいくら人の道に背くことであれ
以蔵なら喜んで人斬りをやってのけるでしょう。
現代で言えば、
ある政治家と、その秘書の関係に似ているかもしれません。
そんな以蔵に龍馬は、ゆっくりと分かるように諭します。
世の中にはいろいろな考えを持つ人間がいる。
考えが違っても、それは当たり前のことだ。
しかし、日本が異国のものになっていいと思っている日本人は
誰一人としていないのだ、と。
「強い男は、滅多なことでは剣は抜かんもんじゃ」
以蔵は「うん」とだけ言って、勤王党に戻っていきます。
以蔵が人斬りをさせられている実態を見抜いた龍馬は、
どうしたら皆を止めることができるか、悩みます。
そんな姿を見た加尾は、一人の男の名前を出します。
勝 麟太郎──海軍軍艦操練所の頭取をしていて、
日本の将来を真剣に考えている幕閣だそうです。
「立ち上がれ!日本」よりも考えているらしいです(^ ^)
龍馬が会いたかった「自分に生きる道を教えてくれる誰か」。
それが勝 麟太郎であるような気がして、
龍馬は教えてくれた加尾に感謝しつつ
さっそく会ってみようと興奮します。
しかしそれは、加尾との本当の別れになるわけです。
龍馬が遠くに行くのはとても寂しいことですが、
日本のために大仕事を成し遂げる力が
龍馬にはあると思ってのことです。
「私は……幸せ者ぞね」
龍馬が江戸行きを決心した時、
加尾もまた、土佐に戻ることを決心。
一緒に働いた仲間たちに見送られ、京を後にします。
10月12日。
帝の勅命を持って、実美が江戸へ下ります。
その警護役をするのは、半平太ら土佐勤王党の者たち。
特に以蔵は「おまんは、わしのそばじゃ」と半平太に言われ
歓喜しています。
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文久2(1862)年10月12日、
帝の勅命を持って、三条実美と土佐勤王党が江戸へ下る。
慶応3(1867)年10月14日、
15代将軍・徳川慶喜による明治天皇への大政奉還まで
あと5年──。
(『篤姫』では「(38)姑の心 嫁の心」付近)
作:福田 靖
音楽:佐藤 直紀
題字:紫 舟
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福山 雅治 (坂本龍馬)
香川 照之 (岩崎弥太郎・語り)
大森 南朋 (武市半平太)
広末 涼子 (平井加尾)
寺島 しのぶ (岡上乙女)
佐藤 健 (岡田以蔵)
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宮迫 博之 (平井収二郎)
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蟹江 敬三 (岩崎弥次郎)
倍賞 美津子 (岩崎美和)
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制作統括:鈴木 圭・岩谷 可奈子
プロデューサー:土屋 勝裕
演出:大友 啓史
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『龍馬伝』
第16回「勝 麟太郎」
アナログ総合・デジタル総合:午後8時〜
デジタルハイビジョン:午後6時〜
衛星第二テレビ:午後10時〜
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