大河ドラマ平 清盛・(07)光らない君
第1回以降、視聴率の上で
低空飛行を続ける大河ドラマ『平清盛』。
某県知事による猛烈な番組批判が
逆に視聴率を押し上げる結果になるのではなかろうかと
Kassyは推測し、それを期待しておりましたが、
なんのなんの、全く影響を受けることなく低空飛行です(笑)。
大河ドラマの場合、
似たような番組という比較対象があまりにも少ないもので、
どうしても近年放送された別の大河ドラマで
比較せざるを得ないのですが、
昨年の『江 〜姫たちの戦国〜』よりは
ガツンとパンチの効いたストーリーで、
久々に大河らしい大河が見られると
楽しみにしておりましたのに。
意外なところで低空飛行。
何が原因なのか? 改善点は?
残念ながら、Kassyは今のところ見いだせておりません。
野球が始まる3月下旬から
大河ドラマの視聴率はだいたい5%ほど落ちるのが常なので、
後々のためにも視聴率を稼いでおくなら今のうちなのですが、
まぁ……このまま推移していったらどうなるのだろう?
まさか大河ドラマ打ち切りなんてことはないよね! ……などと
いち視聴者であるKassyですら、少し危機感を持っております。
がんばろう! 平 清盛!
そのテコ入れなのか?
はたまた、途中から見始めた方でも
ストーリーにすんなりと入ってもらえるようにか?
……は分かりませんが、
“きょうの見どころ”という
30秒程度のミニミニコーナーが始まりました。
〜・〜・〜・〜・〜
保延元(1135)年8月。
西海の海賊を見事に討伐した(←手懐けただけ?(笑))
平氏は京に凱旋します。
海賊たちを検非違使には差し出さず、
彼らが持つ知恵と能力を一門の財としたそうです。
ともかく、海賊討伐という今回の働きは、おそらくは
鳥羽上皇も認めてくれるであろうという憶測で、
平氏はますます取り立てられるであろうし、
参議も夢ではなく、もしそうなれば
今まで平氏を見下してきた公暁たちも
こぞって結びつきを強めるかもしれません。
平 忠盛は、命を失った者たちの上に平氏の繁栄を築くことが
今後の自分たちの使命だと檄を飛ばします。
その“命を失った者”の一人である平 盛康(平 清盛の乳父)ですが、
亡くなる直前、清盛のために命を惜しまず働いてくれている鱸丸を
養子にしてやってほしいという清盛の願い出に、
「盛国」という名を付け、養子を認めてくれました。
生涯にわたって清盛を支える、平 盛国の誕生です。
日もいと長きにつれづれなれば、夕暮れのいたうかすみたるにまぎれて、かの小柴垣のもとに立ち出でたまふ。清げなるおとなふたりばかり、さては童べぞ出で入り遊ぶ。中に十ばかりにやあらむと見えて、白き衣 山吹などのなえたる着て、走り来たる女子あまた見えつる子どもに似るべうもあらず、いみじく生ひ先見えて美しげなる容貌なり。
「何事ぞや? 童べと腹立ちたまへるか?」。
「雀の子を犬君が逃がしつる。伏篭の中に込めたりつるものを」。
夕暮れにまぎれて光源氏は、小柴垣のもとに立ち寄り庵の様子を垣間見た。こぎれいな女房ふたりほどのほか、子どもたちが遊んでいる。その中にいる十歳ぐらいと見える少女、ほかの子どもたちとはくらべものにならず、さてぞ美しいおとなになるであろう容貌をしている。
「どうしたのですか。けんかでもなさったのですか」
「雀の子を犬君が逃がしてしまったの。伏篭の中に閉じ込めておいたのに」
(『源氏物語』若紫より)
いきなり古文の授業かとも思いましたが(^ ^;;)
中学国語で、あるいは高校古文で習う有名な一節ですね。
時子は、人気小説『源氏物語』を読んで
羨ましそうに目をらんらんと輝かせ、暖かいため息をつきます。
光源氏と紫の上の出逢い──。
時子のみならず、女性にとっては
“恋に恋する”ところなのかもしれません。
ちなみに『源氏物語』は
ドラマの時代と同じ平安時代の作品とはいえ、
源氏物語は西暦1000年ごろの成立なので
130年以上前の作品であるわけです。
いまで言えば、130年前……1882(明治15)年ごろの作品を
読んでいるような感覚でしょうか。
ともかく、
ひとり妄想にひたっていた時子を現実に引き戻したのは、
琵琶のお稽古の刻限と催促した侍女の言葉でした(^ ^;;)
その道中、雀の鳴き声を聞いた時子は
『源氏物語』を読んだ直後ということもあり
光源氏への憧れを一層強くしたところだったのですが、
そこへ登場したのは、腹を下して苦しんでいる清盛で(笑)。
「もう……台無し!」(-"-)
平 忠盛の位は正四位下であり、もう一歩で三位です。
三位になれば、武士としては初めてとなる
“公卿”という地位に上り詰めることになります。
鳥羽上皇は、平氏による海賊討伐にたいそう満足げであり
その褒美を与えますが、その先は忠盛ではなく──、
なんと清盛に従四位下の位を授けます。
見方によっては、
忠盛が三位に昇格するとなると いろいろ不都合が出るし、
公卿たちからの不満も集中しかねないということで
それをさせないために清盛に位を授けた……とも言えそうです。
藤原忠実は、御礼言上で御所に入った清盛に
すれちがいざまに静かに言葉をぶつけます。
「どこまでいっても王家の犬ということよ」
その忠実は、『源氏物語』の光源氏のモデルとも言われる
藤原道長の曾孫(ひまご)でありまして、
道長が摂関政治の権力者であったように
忠実も、その権力をそのまま引き継ぐ公家なわけです。
その情報は盛国から教えてもらう清盛ですが、
つい先日まで漁師の子・鱸丸であった盛国が
そのような情報をなぜ知っているのかを
清盛は不思議がりますが、
家貞による読み書き・勘定・歴史・たしなみなどの教育を
清盛の知らないところで受けているようです。
御所からの帰りに清盛は、雨の中の父とその娘を助けます。
高階基章と明子です。
ちなみに同じ「高階」姓でも
平田 満さん演じる高階基章は源氏の生まれ、
阿部サダヲさん演じる高階通憲は藤原家の生まれで
それぞれ高階家に養子に来ているそうで、
直接の血縁関係はないそうですよ。
基章は、助けてくれたのが清盛だと知って
馬にまたがる姿が“無頼の高平太”だと思っていたようで、
助けてくれたお礼に
お腹をすかせている清盛に食事を出してもてなします。
高階家は、メジャーな藤原家などに比べると身分が低く
公家と言っても貧しい暮らしを強いられるほどです。
基章が出かけて行ったのも、出仕のための装束が古くなり
友人に借りに行ったところに雨に降られ、
明子が蓑笠を持って来てくれたところに清盛が現れたそうです。
「妻としてお側に置いてはいただけませぬか!?」
元をたどれば、『源氏物語』作者の紫式部につながる家柄。
しかも明子は、琵琶の腕は素晴らしいそうです。
突然に言い出した基章に、とまどう清盛と明子です。
この年の暮れ、得子が鳥羽上皇の皇女(ひめみこ)を出産。
それを知った待賢門院璋子は、産着を得子に届けます。
受け取る謂れはございませぬ、と拒否する得子に
産着は何枚あっても邪魔にはならない、
一の皇子は赤子の頃によだれを垂らして……と
五男二女を生んだなりの経験をたらたらと話す璋子。
ここは得子が折れ、産着を受け取っておきます。
嫌みであるならまだいいのですが、
璋子の場合、本心でお祝いをしに来たわけです。
その純真さが得子のハートに火をつけているようです。
時子は琵琶を習いに来ておりますが、
その師匠たる人物が──かの明子であります。
「それはまるで、光源氏と明石の君ではござりませぬか!」
清盛との出会い話を聞いたとき、
時子は歓喜して黄色い声を上げます。
そこへ基章が登場するのですが、
先日の、装束を借りに行った友人というのは
時子の父・時信だそうです。
世間はとても、狭いですなぁ(笑)。
ともかく、善は急げと
時子は明子を連れ立ってお参りに行くことにします。
そのお参り先・住吉明神では、一人の武士がかしわ手を打って
「どうか再び会えますように」とお願いしています。
しかし振り返ったその武士が清盛と知って、
時子も明子も驚いてしまいます。
清盛は、そのお願いごとがさっそくに叶って
腰を抜かしておりますが(^ ^)
明子にすれば「光の君」、時子にすれば「雀男」。
同じ人物を前に、二人の女性の評価が
こうも真逆に向いてしまうとは(^ ^;;)
ただ、先に帰った明子を追いかけて来た清盛に
本心ではないながら別れを告げてしまいます。
「父の申したことはお忘れくださりませ」
清盛のことで思い悩む明子は、
琵琶をポロロンと弾いています。
清盛の嫁取りの話は、清盛と明子、
時子の知らないところでどんどん進んでいるようで、
上皇の側近や公卿らが
娘を清盛の妻にと申し出ているようです。
時子は、明子が清盛との結婚に
気が進まないと誤解しているようで、
清盛の悪口ばかり口にしますが、
そんな時、その清盛から恋文が届きました。
からふねの
風なき夜の ここちして
ゆくも戻るも 君ぞ知るべし
風のない夜の唐船のように、
このままでは進むことも戻ることもかなわない。
この恋の行方は、あなた次第──。
唐船の“から”と空虚の“から”を掛けるという
佐藤義清の作です。
……あれ? 清盛が作ったのではないのですね(^ ^;;)
で、さっそく返歌が届きます。
小夜ふけて
ゆくえあやまつ からのふね
めざめし君の ひとり揺れけむ
それを聞いた義清は「なるほど」と微笑みます。
清盛は、歌の解釈をほとんど理解していませんけど(^ ^)
義清の解説によると……
夜が明けて目覚めてみると、
行く先の間違えた船に女の姿はなく空っぽで、
己ひとり揺れていることに気がつくであろう。
いわば、おことわりのお返事のようで(笑)。
どっひゃあ! と倒れる清盛ですが、
こういう恋文を何往復か交わして恋の駆け引きを楽しむのが
この時代の恋愛事情のようです。
つまり、諦めるにはまだ早いということでしょうか。
とはいえ、恋文を何往復もさせて
のらりくらりと時が過ぎていくのは性に合わないし、
第一、代作を頼んでいることにも後ろめたさもあった清盛は
“断るなら面と向かって”と高階屋敷に向かいます。
さっそくに断られて玉砕(^ ^;;)
しかしその断る理由は、清盛の人となりにあるのではなく
父の基章が住吉明神でお参りし続けてきたことにあるようです。
仮に清盛と一緒になったとき、
清盛に本当に思われて幸せな一生を送っているのか
住吉明神のご加護で幸せなのかが分からないわけで、
明子自身、その点で悩んで生きていかなければなりません。
「そなたと会うた時、なんと清げなる女かと思うた!」
「そなたの夕餉を食い、毎日食いたいと思うた!」
「生涯、俺のそばにおってほしいと思うた!」
「俺は俺の心に従い、そなたを妻にしたいと申しておるのじゃ!」
清盛の本心です。
清盛の気持ちを知った明子は、清盛を受け入れることにします。
「海へ行きとうござりまする」
──きっと、連れていってやる。
基章は、目の前の光景に感動したか
肩をふるわせて泣いています。
そして、垣根の向こう側で その光景の一部始終を見ていた時子は
ひとりきょとんとしています。
帰り道、雀の鳴き声が聞こえる竹やぶで
立ち止まった時子は一節を復唱します。
雀の子を犬君が逃がしつる。
伏篭の中に込めたりつるものを。
実家に戻った清盛を待っていたのは、
婚儀反対の声でした。
基章の位を聞いて、平 忠正は「たかだか六位」と軽く見るし、
家貞に至っては、どの家と結ばれるかで
平氏の行く末が決まると身分違いをやんわりと諭します。
特に宗子の従兄弟にあたる藤原家成が
清盛の縁談を多数持ち込んで来ている最中です。
しかし、そんな声は清盛には届きません。
位が違うからと共に生きることが許されないとすれば、
それはおかしいと思う──。
つまらない戯れ言に惑わされず、己の力で乗り越える。
楽しい時も苦しい時も、一緒に面白く生きたい。
そんな清盛の気持ちは、かつて舞子を娶ろうとした
忠盛の心に届いたのかもしれません。
一門反対の中、忠盛の鶴の一声で婚儀となりました。
──────────
保延元(1135)年12月4日、
得子が鳥羽上皇の皇女・叡子内親王を出産する。
治承4(1180)年8月17日、
源 頼朝が挙兵して平氏に反旗を翻すまで
あと44年8ヶ月──。
作:藤本 有紀
音楽:吉松 隆
題字:金澤 翔子
──────────
松山 ケンイチ (平 清盛)
藤木 直人 (佐藤義清)
深田 恭子 (時子)
三上 博史 (鳥羽上皇)
加藤 あい (明子)
豊原 功補 (平 忠正)
──────────
檀 れい (待賢門院 璋子)
りょう (堀河局)
井浦 新 (崇徳天皇)
加藤 浩次 (兎丸)
平田 満 (高階基章)
矢島 健一 (藤原教長)
岡田 将生 (源 頼朝・語り)
──────────
和久井 映見 (宗子)
上川 隆也 (平 盛国)
松雪 泰子 (得子)
國村 隼 (藤原忠実)
中村 梅雀 (平 家貞)
中井 貴一 (平 忠盛)
──────────
制作統括:磯 智明
:落合 将
プロデューサー:櫻井 壮一
演出:渡辺 一貴
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『平 清盛』
第8回「宋銭と内大臣」
デジタル総合:午後8時〜
BSプレミアム:午後6時〜
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