プレイバック義経・(31)飛べ屋島へ
源 義経は、平氏追討という役目を背負って
大将として屋島へ向かうことになりました。
源 頼朝に勘気を被っていた義経ですが、
そのわだかまりが解ける時だと感じます。
一の谷合戦の時に世話になった
鷲尾三郎も新たに家来衆に加わって
義経はついに都を出発します。
屋島の平氏本陣には、その情報はすでに流れてきております。
瀬戸内の屋島が舞台とあっては船の戦となります。
船戦に慣れぬ源氏ですので、
4万という大軍とはいえ、どうということはなさそうです。
ただ、足止めを食らわせている
源 範頼軍との挟み撃ちになる危険性はあります。
平 知盛は範頼軍を抑えるために長門に戻ります。
平 時忠・領子に預けられている能子は
最近塞ぎがちになっております。
それが義経出陣の時期とたまたま同じであったため、
領子からあらぬ詮索を受けるわけですが、
能子は、源氏が屋島攻めに向かっていることも
その軍には義経が総大将としていることも知らぬことであります。
最近塞ぎがちであったのは、母・常盤が亡くなったからです。
その話を聞いて、時子は1度だけ会った常盤を思い出していました。
清盛が心を寄せる常盤に会うために
平 盛国の妹と偽って常盤と対面したのですが、
その時、常盤は清盛の子を宿していたわけです。
その子こそ、能子というわけですね。
時の運命というものを、時子は感じずにはいられません。
義経軍は、屋島の対岸に当たる摂津国渡辺に陣取ります。
この地には、渡辺水軍という
義経には非常にありがたい味方がおります。
ただ、船はかき集めてもせいぜい40艘でして、
梶原水軍を加えても150ほど。
これでは、阿波水軍や熊野水軍を擁する平氏軍とは
屋島で満足には戦えそうにありません。
もう少し粘って船を集めようとしても
平氏方に水軍が取られておりまして、それも不可能です。
安全牌をとるならば、梶原水軍が到着するのを
7日ほど待つ必要がありますが、それでは遅すぎます。
義経としては、平氏が万全の準備を整えてしまう前に
屋島攻めを敢行したい腹づもりです。
義経は、伊勢三郎と駿河次郎、喜三太と鷲尾三郎に
いろいろな情報を集めて来させます。
郎党たちが集めてきた情報を元に、
義経はいったん阿波を目指し
陸路を屋島に向かうことにします。
しかし、戦目付として義経の陣にいる梶原景時は
真っ向から反対を唱えます。
阿波から屋島への陸路の途中にも、
平氏に味方する土着の民たちも大勢いて、
仮にそれを打ち破っても兵は疲弊してしまうでしょう。
やはり梶原水軍の到着を待ってから
船で屋島を攻めた方がいいと主張する景時に
義経はズバリと指摘します。
「船戦に慣れぬ我らが、数にも勝る平家の水軍に太刀打ちできようか」
平氏に味方する土着の民といっても
その実は平氏に怨みを持つ者もいて、
彼らが源氏方に味方してくれさえすれば
ことは容易に動きます。
ただ、容易に動かなかったものがあります──「自然」です。
渡辺から阿波へ渡ろうとしていた日、春の嵐で海は大荒れに荒れ
渡辺党の船の多くが痛手を被りました。
修理には2日ほどかかるようです。
景時は改めて、従来の主張を繰り返し
もしどうしてもというのなら、もしもの退却に備えて
船に逆櫓をつけるように義経に進言します。
船の舳先(へさき)にも櫓をつければ
どの方向へもたやすく転回出来るようなるための提案でしたが、
すべての船に逆櫓を取り付けるのに5日はかかると聞いて、
義経は「待てぬ!」といら立ちながら言います。
そもそも武士が、退却のことを考えて出陣することなど
縁起が悪くてあってはならないと義経は考えています。
しかし景時は、退却時のことを考えるのも
軍略の一つとして折れません。
後の戦のことを考えて、味方の損傷を少なく抑えることも
大将としては考えなければならないのです。
義経が考える鎌倉軍の使命は、
平氏をたたき潰して三種の神器の奪還を狙うこと。
一つの戦で決してしまわねば
そうチャンスはたびたびやってくるはずもありません。
でも、ここにいる軍勢はあくまでも鎌倉軍であって、
義経の軍勢ではありません。
戦法を義経ひとりが勝手に組立てていくと、
戦目付としての景時自身の立場がないわけです。
「逆櫓(さかろ)の争い」
退却の備え(=逆櫓)を義経が拒んで争いになる
売り言葉に買い言葉……いっそう泥沼化していきます。
そうこうしている間にも、風はなお強く吹いています。
義経は、北から南に吹いている今こそ好機と
大きくしける今、船を出して阿波を目指すことにします。
「無謀にござる!」と景時は留めようとしますが、
一度火がついた義経は、説得で折れる男ではありません。
梶原景季も従って、荒波の中に船を出します。
──────────
元暦2(1185)年2月18日、
午前2時、暴風雨の中を義経は郎党に命じ、
僅か5艘150騎で出航を強行、阿波へ向かう。
元暦2(1185)年5月24日、
源 義経が兄・源 頼朝に弁明の腰越状を送るまで
あと3ヶ月──。
原作:宮尾 登美子
「宮尾本平家物語」「義経」より
脚本:金子 成人
音楽:岩代 太郎
脚本協力:川上 英幸
:眞鍋 由起子
題字:陳 燮君
タイトル画:宮田 雅之
語り:白石 加代子
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[出演]
滝沢 秀明 (源 義経)
石原 さとみ (静)
南原 清隆 (伊勢三郎)
うじき つよし (駿河次郎)
伊藤 淳史 (喜三太)
海東 健 (佐藤忠信)
宮内 敦士 (佐藤継信)
小栗 旬 (梶原景季)
長谷川 朝晴 (鷲尾三郎)
高野 志穂 (まごめ)
尾野 真千子 (萌)
鶴見 辰吾 (平 宗盛)
かとう かずこ (領子)
大橋 吾郎 (平 時忠)
小泉 孝太郎 (平 資盛)
後藤 真希 (能子)
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平 幹二朗 (後白河法皇)
阿部 寛 (平 知盛)
夏木 マリ (丹後局)
稲森 いずみ (常盤(回想))
中尾 彬 (梶原景時)
松坂 慶子 (時子)
松平 健 (武蔵坊弁慶)
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制作統括:諏訪部 章夫
演出:一木 正恵
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