プレイバック義経・(43)堀川夜討
後白河法皇から任じられた伊予守ですが、
鎌倉の源頼朝から地頭が派遣され
源義経の実質的支配権はなくなってしまいました。
治める領地がなくなるということは、
年貢、つまり収入がなくなるということです。
鎌倉に対して、
さらに反抗心をむき出しにする可能性は大ですが、
ここはこちらも徹底的になさなければなりません。
京・六条堀川──。
乳母車(?)に乗せられて、
朱雀の翁は薄暗い京の町を見廻り中です。
もちろん、車を押すのは烏丸。
こんな夜更けに、コソコソと探るような動きの武士が3人。
盗賊としたら、あまり見ない顔ですし
この付近の屋敷を狙っているのなら、
都の盗賊ではなく他から紛れ込んだ盗賊のようです。
烏丸が彼らの後をつけてみると、
三条のある寺に入っていったらしく。
しかもそこには、10人ほどが宿として使っていたようです。
寺の者の話だと、彼らはリーダー格の男を
「土佐坊」とか「昌俊」とか読んでいたそうです。
それを知った武蔵坊弁慶は、土佐坊昌俊の名を聞いて
懐かしさがこみ上げています。
翌日。
昌俊を訪ねた弁慶は、熊野詣でに行くという昌俊に
あれやこれやと聞きまくり。
やれ、よく鎌倉を離れられたなー、だの
10人ばかり引き連れて? だの
熊野へはどの道を通る? などなど。
もし海沿いをいくなら、田辺に立ち寄って
別当湛増に人づてしてもらうつもりなのです。
熊野へ行く、とだけ準備していた昌俊は
まさかそこまで根掘り葉掘り聞かれるとは露思わず、
「あいにくだが、吉野から山道をゆく」と答えるのが精一杯。
すると弁慶は、吉野の本宮宮司の誰それに
言づてを……と続けるわけです。
昌俊の憔悴さを見て、
弁慶は少し怪しさを感じずにはいられません。
昌俊のことが気になり、
弁慶らは手分けしてその情報収集にあたりますが、
その動きは義経も薄々感じております。
そして萌も、郎党たちに
何だか見張られているような気配を感じています。
義経と言わず弁慶と言わず、
鎌倉を出てから、少しずつ人というものが
信じられなくなりつつあるのかもしれません。
夜、昌俊を寺に訪ねた弁慶ですが、
宿舎としていたお堂は、すでにもぬけの殻です。
弁慶は慌てて屋敷に戻ります。
「狙うは九郎判官殿のお命。者どもよいな!」
昌俊です。
おう、と声がして、音もなく堀川屋敷内に侵入します。
庭を駆ける襲撃者の物音で、伊勢三郎は目覚めます。
三郎だけでなく、次郎や喜三太など、次々に。
一気に襲撃を受けます。
しかしこちらも、
武装して迎え撃つ形で負けてはいません。
途中で義経も加わり、次々に倒していきます。
しかし、倒しても倒しても
敵の数は一向に減りません。
そこへ弁慶が戻り、源 行家が加勢して
ようやく仕留められました。
「この仕打ちが頼朝の存念ぞ!」
行家の言葉に、黙っている義経です。
昌俊は、洛中を騒がせたばかりか
朝廷より任官した検非違使の館に討ち入った罪により
打ち首となりました。
鎌倉方御家人の家来ではありますが、
情をかけたからといって、
頼朝の存念が変わるわけではありません。
後日、御所に上がった義経は
法皇に頼朝追討の院宣を求め、
行家とともにそれを下されます。
二度と引き返せない道の入口に、
義経は立ち入ってしまったわけです。
一方、それを受ける形となった鎌倉では
頼朝が、冷静に言い放ちます。
「もはやこれまで……九郎を討つ!」
頼朝は自ら兵を率いて、鎌倉を発ちました。
義経は、10万という大軍と対峙するためには
広いところに打って出るよりも
狭いところに誘い込んだ方が有利と見ます。
戦場は、つまり都です。
戦となれば、かつての五足やうつぼ、烏丸のように
孤児を作り出してしまうでしょう。
都を戦場としなければならないことを、
義経は申し訳なく思っています。
行家の必死のかけずりも功を奏さず
頼朝を恐れて、義経の味方をしようという軍勢はなく。
10万の大軍に対し、義経軍はたった300。
戦上手の義経でも、相当難しい大軍です。
いわば法皇の院宣を持つ義経軍が敗れた場合、
頼朝は法皇に対してどのような対応を迫るでしょうか。
そう考えると、義経への院宣は早まった感さえあります。
法皇は、こめかみを押さえながらしばし思案に明け暮れます。
義経は、このまま頼朝軍を迎えるのは困難と見て
ひとまず都から離れることにします。
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原作:宮尾 登美子
「宮尾本平家物語」「義経」より
脚本:金子 成人
音楽:岩代 太郎
脚本協力:川上 英幸
:眞鍋 由起子
題字:陳 燮君
タイトル画:宮田 雅之
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[出演]
滝沢 秀明 (源 義経)
松平 健 (武蔵坊弁慶)
上戸 彩 (うつぼ)
南原 清隆 (伊勢三郎)
うじき つよし (駿河次郎)
伊藤 淳史 (喜三太)
海東 健 (佐藤忠信)
長谷川 朝晴 (鷲尾義久)
尾野 真千子 (萌)
石原 さとみ (静)
六平 直政 (土佐坊昌俊)
梅津 栄 (朱雀の翁)
白石 加代子 (お徳(回想))
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平 幹二朗 (後白河法皇)
財前 直見 (北条政子)
大杉 漣 (源 行家)
市川 左團次 (金売り吉次)
草刈 正雄 (平 知康)
夏木 マリ (丹後局)
小林 稔侍 (北条時政)
中井 貴一 (源 頼朝)
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制作統括:諏訪部 章夫
演出:大杉 太郎
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