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2013年2月12日 (火)

プレイバック新選組!・(11)母上行ってきます

文久3(1863)年。

攘夷(外国人を実力行使で排斥しようという思想)を迫る
朝廷の圧力により、幕府は将軍の上洛を決定しました。
当時、政治闘争の場であった京都は相次ぐ暗殺で甚だ治安が悪く、
不逞な浪士たちが集まり、攘夷派の一大拠点と化していました。

ここにおいて幕府は、浪士によって浪士を取り締まるという
清河八郎の途方もない案を採用。
いよいよ、浪士組が動き出しました。

その浪士組の取締役であった松平上総介は
集まりすぎた浪士たちと明らかに足りない恩賞との間で
“や〜めたッ”と言わんばかりに仮病で退任。

浪士のテッペンに立つのは浪士が一番いい、と
上総介の後任には清河を推す山岡鉄太郎の声がある中で、
浪士取扱(取締)の佐々木只三郎は、
発案者・清河の意のままにさせまいと鵜殿鳩翁を推薦します。


文久3(1863)年2月5日・江戸──。

勇は、近藤周斎とふでの隠居先を訪れます。
(といいつつも、二人はなつの家に居候しているのですが)

近藤道場は、塾頭の沖田総司に頼むつもりでいましたが、
本人がとても参加したがっていることもあって
浪士組として合わせて連れて行くことにしまして、
結局道場は周斎が面倒を見てくれることになりました。

出発に際し、ふでに挨拶することにします。

父に武士として育てられた勇は、
今や近藤家の跡取りとなりました。
ゆえに武士として恥じない生き方をしたい。
武士以上に武士らしく生きたい。

思いの丈をふでに打ち明けます。


つねは、そんな勇とふでを
京への出発前には仲直りさせたいと
躍起になっています。

似たもの同士だからこそ、ぶつかりやすい。
二人とも、武士だとか武士の妻だとか
誇りを持って生きている。
うーん、確かに言われてみればそうかもしれません。


勇と土方歳三、それに井上源三郎の三人は
多摩へ帰って上洛の挨拶回りです。

勇の兄・宮川音五郎は
20両で買った名刀を餞別に渡します。
名刀は20両で買えるわけなんてないのですけど、
さすがは勇クン、兄貴の顔を立ててあげます。

さらに訪れた佐藤家で、歳三の実姉・佐藤のぶは
歳三の小さい頃のエピソードを勇に話してくれます。

『石田散薬』に使う薬草を
流行病に倒れた大人たちに代わって歳三に刈り取りを頼むと、
歳三は村の子どもたちを集め、うまく分担し
大人でも一日がかりの作業を
昼前には終わらせてしまった、という。

歳三は恥ずかしがってか、忘れた! と言っていますが、
姉はしっかりと覚えています。
「うまく使ってやってください」と
のぶは勇に頭を下げます。

佐藤家に、お琴が訪ねてきました。
一度お見合いをして、しばらく付き合ってみたものの
結婚する気がないために振ったという女性です。

歳三は、勇にお琴を追い返すように頼み込みます。
勇は「またか」という顔で、
歳三に代わってお琴に謝罪します。

パン!


多摩から戻った勇を、なつが呼びにきました。

ふでは、勇が京で命を落とすかもしれないと
自分の出自について語り始めます──。

下総の百姓出身で、村を大飢饉が襲い、
12歳の時に売られて江戸にやってきました。
15歳の時に見込まれて芸者になり
血がにじむほどの稽古を積んで、一番の売れっ子に。

当時のふでの望みはただ一つ。
身分の高い武士に身請けしてもらうこと。
そうすることで親を見返すつもりでした。

やがて周斎に出会ったふでは結婚することにします。
望みは叶ったと心から思ったそうです。
しかしふたを開けてみれば、
周斎ももとは百姓出身ということが判明し、ふでは落胆。

子どもはできず、養子をもらうことになりました。
由緒ある家の子どもを貰えば、
ふでは武士の母親になることができる。
今度こそ親を見返せる。

周斎が選んだのは、やはり百姓の子でした。
つまり、勇です。

勇自身に罪がないのは充分分かっていますが、
どうしても許せなかった、どうしても憎かった。
勇がいとも簡単に武士の身分を手にしていくのを見て、
さらに腹が立ちました。

でも。

勇を避けてきたからこそ、
一番大事なことに気がつきませんでした。

私たちはともに百姓の家に生まれ、
ともに武家の世界に入ろうと努め、
死にものぐるいでここまでやってきた。

やっと分かりました。
「あなたは……私です」

あなたは、今の自分に折り合いをつけず
あるべき姿を求めて生きてきた。
私がずっとそうしてきたように。

よくがんばりました──。

今までの数多くの非礼を、
ふでは手をついて詫びます。

「近藤家のために、存分に働いてきなさい。
そして武士よりも武士らしくなって戻ってくるのです」

──行っておいで、勇。

本当の母と子になれた瞬間でした。

──────────

文久3(1863)年2月5日、
浪士組取締役だった松平上総介の後任として鵜殿鳩翁が就任。

慶応3(1867)年11月18日、
新選組から分裂した御陵衛士を粛清する『油小路事件』まで

あと4年9ヶ月──。


作:三谷 幸喜
音楽:服部 隆之
題字:荻野 丹雪
版画:木田 安彦
──────────
[出演]

香取 慎吾 (近藤 勇)

藤原 竜也 (沖田総司)
山本 耕史 (土方歳三)

中村 勘太郎 (藤堂平助)
山本 太郎 (原田左之助)
堺 雅人 (山南敬助)
山口 智充 (永倉新八)
小林 隆 (井上源三郎)

中村 獅童 (滝本捨助)

田畑 智子 (近藤つね)
浅田 美代子 (佐藤のぶ)
小日向 文世 (佐藤彦五郎)
小野 武彦 (小島鹿之助)
──────────
石黒 賢 (桂 小五郎)
谷原 章介 (伊東大蔵)
白井 晃 (清河八郎)
羽場 裕一 (山岡鉄太郎)
岩崎 加根子 (なつ)
伊原 剛志 (佐々木只三郎)
──────────
沢口 靖子 (沖田みつ)
栗塚 旭 (土方為次郎)
伊吹 吾郎 (粕屋新五郎)
野際 陽子 (近藤ふで)
田中 邦衛 (近藤周斎)
──────────
制作統括:吉川 幸司
演出:清水 一彦

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