大河ドラマ八重の桜・(17)長崎からの贈り物
孝明帝崩御の急報を聞き、松平容保はひどく取り乱し
帝のご無事を確かめに御所に参る! などと口走ります。
天皇は確かに10日前、疱瘡にかかったわけですが
それも日日快方に向かっていたはずです。
(容保が聞いた情報によれば)
容保の目の前は、急に真っ暗になってしまいます。
慶応2(1866)年12月25日のことでした。
同じころ、会津の黒河内伝五郎道場では
山本八重と中野竹子の薙刀の試合が行われております。
竹子は、この道場には新参者ながら薙刀にはめっぽう強く、
八重は連戦連敗であります。
「来年こそは……」
八重が、そう強く心に誓ったその時
道場にも、崩御の知らせが入りました。
謹慎中の西郷頼母のところにも、同様です。
「何事も起ぎねばいいが」
長崎──。
ここは医学伝習所の「精得館」です。
オランダ人医師・ボードウィンは
部屋の扉という扉を全て閉めて光が入らないようにし、
灯をつけて山本覚馬の目を診察します。
そもそも覚馬は、新式銃調達のために長崎に出張に来たのですが
もう一つの目的というのが、
白そこひ(白内障)の治療というものだったのです。
「残念だが──失明する」
ボードウィンの言葉に、衝撃を隠しきれない覚馬ですが、
更なる事実が彼を襲います。
失明してしまうのは、1年先・2年先……という彼の予想以上に
早い可能性が高いというのです。
あまりのことに、言葉を失います。
しかし、と覚馬は気を取り直し
精得館を見学して回ります。
西洋医術の治療院があり、舎密術(化学)の試験所があり、
異国の本も山のようにあります。
あまりに物事が未来に進みすぎていて
ココは夢のようだ、と目を輝かせるのも理解できます。
そんな覚馬にも、帝崩御の急報が舞い込みます。
孝明天皇が凛と存在してくれたお陰で静まっていた者たちが
これを機に一気に動き出してしまう……。
覚馬は、武器調達を急ぐことにしました。
グラバー邸に赴いた覚馬と神保修理は
邸内に長州藩の伊藤俊輔がいるのを発見します。
長州は交易を許されていないはずですが、
それを可能にしたのは……やはり薩摩藩です。
薩摩藩が名義を貸し、武器を横流ししていたわけです。
現に、薩摩藩の村田新八も邸内におります。
その事実だけを掴み、覚馬らはグラバー邸を後にし、
同じ長崎のレーマン・ハルトマン商会を訪ねます。
“元込め式で、銃身に溝が切ってある新式のライフル”
そんな覚馬の要望を満たすツェントナーデル銃を見つけ
1,000丁の手配をかけますが、カール・レーマンは
バカバカしい! と一笑に付します。
そんな大量の数を揃えられるはずもないし
仮に揃えられたとしても、破談になった時のことを考えれば
大損を食らうのは商人のレーマン側です。
カッとなった覚馬はレーマンに詰め寄り、
話はたちまちこじれてしまいます。
もはや、相手にされません。
目が見えなくなる前に、長州や薩摩に先を越される前に
新式銃を発注しておきたいという焦りからでしょうか、
覚馬は少し強引に話を進めてしまっています。
そんな覚馬をすぐ横でずっと見て来た修理は
悔しがる覚馬の気持ちも知りつつ、穏やかに諭します。
「たとえ光を失ったとしても、銃を知るこの手がある」
覚馬は手荒な真似をしたことを詫び、
もう一度レーマンに、取引の話を
最初からやり直してもらうことにします。
慶応3(1867)年・春。
孝明天皇の大喪の礼が執り行われました。
そして、容保に帰国の許可が下りました。
京都守護職の役目はそのままに、1年限定の帰国という
条件付きではありましたが(^ ^;;)
そして覚馬から、ツェントナーデル銃1,000丁買い付けの
許可を求める書状が会津本陣に届きます。
容保は、それだけの銃が揃えば自分が帰国しても安心だと
買い付けを認めます。
八重の弟・三郎が、洋式調練修業生に選ばれ
早々に江戸に発つことになりました。
「行って参りやす!」
まだまだ子どもと思っていましたが、
家族の気づかぬうちに、
三郎は大きく大きく成長していたのかもしれません。
そして同じころ、長崎を発つ覚馬たちの姿がありました。
ボードウィンは、勉強熱心だった彼らの帰国を残念がり
ビールを振る舞ってささやかな別れの宴を開いてくれます。
(といっても、ビールを一口飲んですぐ出立なのですが(笑))
レーマンも見送りに駆けつけてくれました。
レーマンとは、再度の取引にも紳士的に対応してくれ
取引の銃のことにとどまらず、
覚馬に新聞を見せたり洋服を着せてみたりと
異国の文化を紹介し、
異国人の立ち入りが禁じられていた神戸にまで
危険を承知で足を踏み入れ、
会津藩の田中土佐にツェントナーデル銃を紹介して
自分が信用できる人間である証しを立てました。
レーマンと出会わなければ、
覚馬は本当に厄介者になってしまうところでした。
長崎を離れる覚馬に、
レーマンはスペンサー銃をプレゼントします。
意外なプレゼントに、覚馬は大感激です。
そして、一度はケンカ別れをした覚馬とレーマンを結びつけた
レーマンの愛娘・ルィーズからは、ビードロのプレゼントです。
「……ありがとなし」
5月、土佐藩の乾 退助は西郷吉之助を訪問。
薩摩は長州と手を組んで討幕を仕掛けるのを知って
土佐藩も仲間に加えてほしいと願い出て来たのです。
しかし、藩主の父・山内容堂や藩の上役の人たちは
公武一和で方針が固まっているはずです。
すると乾は、ひと月の間に
藩の意見を幕府打倒に変えてみせると鼻息荒いです。
6月、容保の養子として会津松平家に入っていた
徳川慶喜の実弟・余九麿は、元服を済ませます。
烏帽子親は実兄の慶喜で、片諱「喜」を与えて
喜徳(のぶのり)と名乗らせます。
立派な跡取りができ、容保も心置きなく会津に帰れますが
帰国はしばらく待ってほしい、と慶喜からの横やりが入ります。
昨年の城下の大火で、会津は困窮を極めているため
しばらくは国元で政務をとりたいと願う容保は
今度ばかりはご容赦を、と食い下がりますが、
「都を放り出されるのか」という慶喜の言葉を聞いて
黙り込んでしまいます。
都はいま、長州藩主親子の官位復旧を願い出る薩摩と土佐が、
公家たちに説いて回るなど動きが活発化してきています。
そして、新帝の祖父・中山忠能は薩摩寄りの人間です。
薩摩が公家を操って騒乱を起こしかねない状況なのです。
容保は、その抑えのために会津藩の兵士1,000を都に残して
いざという時には自らも会津から参じると約束しますが、
それでは間にあわないわけです。
「公武一和を願われた先帝に対し、あまりに不忠ではないか!」
帰国の話は流れてしまいます。
長崎から、銃の買い付けを済ませた
覚馬と修理が戻ってきました。
覚馬が目の治療を受けて来たことを知り、
容保はいたわりの言葉をかけます。
「大事にいたせよ」
先帝崩御から半年で、
国の状況はめまぐるしく変わってきています。
家老の梶原平馬も、急きょ江戸へ向かい
今後の策について話し合うことになっています。
長崎から戻ってきたばかりですが、
明日出発する平馬の代わりを
果たさなければならなくなりました。
ただ、発注したツェントナーデル銃が届くまでには
もうしばらくかかります。
修理は覚馬に一度帰国してはどうかと提案します。
「娘御に会っておいでなさい。それができるうちに」
しかし、藩主の容保が帰れないのに
自分だけが国元に戻るというのはできません。
覚馬は、長崎で得た土産を会津に送ります。
ビードロはみねに、そしてスペンサー銃は八重に。
その他にも西洋の酒など、たくさんの土産が届けられます。
うらは、1日でも半日でも顔見せてくれたら
それでいいのに、と涙を流します。
八重は、兄に託されたスペンサー銃を角場で試し撃ち。
とても軽く、一度充填すれば7発連続で射撃でき
しかも精度が高いというのが魅力的です。
「覚馬さんが戻れないはずだ」
もし西国諸藩が、日本の鉄砲鍛冶でも真似できないこの銃を
大量に買い入れているとなったら
戦の火種は、もはや長州だけではないということです。
三郎が江戸へ出発する前日
山に登ってお城を見て来たと言っていましたが、
それは逆に言えば、山から城が丸見えということでして
仮に攻め込まれた場合、山に陣取られては城が危ないわけです。
会津につながる5つの街道のうち、
重要なものといえば白河方向。
行くか、と尚之助は腰を上げます。
ところが、八重は尚之助についてきました。
新婚旅行のようにルンルン♪気分です。
尚之助は、白河まで18里もあって
峠も幾つも越えなければならないことを話しますが
八重にとっては、そんなことはどうでもいいみたいです。
尚之助は、少し早歩きになりながら忠告します。
「本当に知りませんよ、遅れたら置いていきますからね」
(笑)。
──────────
慶応3(1867)年4月、
ドイツ商人・カール・レーマンと
ツェンドナーデル銃を購入するという約束を交わす。
明治39(1906)年4月1日、
篤志看護婦としての功績により
皇室以外の女性として初めて『勲六等宝冠章』を受章するまで
あと39年──。
作:山本 むつみ
テーマ音楽:坂本 龍一
音楽:中島 ノブユキ
題字:赤松 陽構造
語り:草笛 光子
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[出演]
綾瀬 はるか (川崎八重)
西島 秀俊 (山本覚馬)
長谷川 博己 (川崎尚之助)
風吹 ジュン (山本佐久)
松重 豊 (山本権八)
長谷川 京子 (山本うら)
貫地谷 しほり (高木時尾)
剛力 彩芽 (日向ユキ)
綾野 剛 (松平容保)
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小泉 孝太郎 (徳川慶喜)
中村 獅童 (佐川官兵衛)
斎藤 工 (神保修理)
池内 博之 (梶原平馬)
岡田 義徳 (広沢富次郎)
六平 直政 (黒河内伝五郎)
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黒木 メイサ (中野竹子)
佐藤 B作 (田中土佐)
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加藤 雅也 (乾 退助)
宮崎 美子 (西郷千恵)
吉川 晃司 (西郷吉之助)
稲森 いずみ (松平 照)
西田 敏行 (西郷頼母)
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制作統括:内藤 愼介
プロデューサー:樋口 俊一
演出:一木 正恵
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『八重の桜』
第18回「尚之助との旅」
デジタル総合:午後8時〜
BSプレミアム:午後6時〜
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