プレイバック新選組!・(38)ある隊士の切腹
慶応2(1866)年1月23日深夜・伏見寺田屋──。
おりょうが入浴中です。
旅館の女中ともなれば、客人が寝静まった深夜帯に
ちと冷めつつあるお湯を浴びるというのが
習慣なのかもしれません。
今日もひと仕事を終え、ゆったり浸かっています。
おりょうは、外が異様に騒がしいのに気づき
目隠しの戸を少し開いて外の様子をうかがいますと
無数の捕り方が寺田屋を囲んでおります。
とりあえず襦袢(じゅばん)の袖に腕を通し
捕り方にバレないように静かに急いで坂本龍馬の部屋へ急ぎます。
龍馬は、ほぼ素っ裸のおりょうに
丸見えじゃないかえ! と笑っていますが、
「大変や。表に捕り方がおる」とおりょう。
お登勢も、役人にとぼけるふりをして時間稼ぎをしますが、
前回おとりに使われた滝本捨助は
龍馬のせいだと早合点しております。
「二階の奥の間だ! 逃がしちゃいけませんぜ!」
捕り方が龍馬の部屋に踏み込むと、
龍馬はピストルを構えています。
パン!
パン!
パン! パン! パン!
撃ちすぎですって(笑)。
西本願寺・新選組の屯所では
相変わらず隊士たちの剣の稽古が行われています。
長州藩への処分が決まり、
老中がその書状を携えて広島に赴くことになったわけですが、
近藤 勇はそれに随行することになりました。
ついては、勇は
伊東甲子太郎と武田観柳斎を伴うつもりでしたが、
武田は諸事情あってか、同行を辞退。
その足で、河合耆三郎のところへ赴き
50両の借用を申し出ます。
「勝手に貸したら私が土方さんに叱られますから」
河合は首を縦に振りません。
労咳の診断を受けた沖田総司ですが、
最近は咳き込むことばかりか、血を吐くことも多くなり
孝庵の元を訪れます。
なんで医者の言うことを聞かん? と孝庵に怒られる総司ですが、
あと5年、都が平穏な街になるまでのあと5年を
元気でいれれば総司としては満足です。
しかし孝庵に言わせれば、言う通り養生もしないくせに
元気に5年も生きられるわけないと総司を突き放します。
「病気を甘く見るのもいい加減にせぇ!」
慶応2(1866)年2月12日・京──。
この日もまたひとり、新選組隊士が切腹していきます。
それは意外や意外、勘定方の河合耆三郎であります。
事の顛末を誰かに話しておかなければならない、と
西本願寺の侍臣・西村兼文に聞いてもらうことにしました。
あれは、12日前のことになります……。
話を聞いてもらえるということに感謝しながら
河合はポツリポツリと話し出します。
1月30日。
日本に1冊しかないらしい西洋軍学の本を
武田がとても欲しがっております。
武田はそもそも甲州流軍学を修めた人物ですが、
だからこそ西洋軍学には興味があるそうです。
武田は河合を古本屋に連れてきてまで
この本をどれだけ欲しいかをアピール。
武田はいつもえらそうにしていて、隊士たちの評判は散々なのですが
この人はこの人なりに一生懸命なんだなと心打たれまして、
結局押し切られた河合は、土方歳三らにはナイショで
武田に50両を貸し出します。
ただ、このままでは50両不足となります。
50両を送ってくれるように河合は親元に手紙を送ります。
河合の実家は播磨高砂で米問屋を営んでいて、
5日もあれば金は届くはずです。
が、2日後の2月2日。
歳三が突如として「勘定帳と照らし合わせたい」と言い出します。
どうやら歳三も、その西洋軍学の本を欲しがっていたようで
武田が50両の大金を出して買っていったらしいという情報を
古本屋の主に聞いた歳三は、
新選組から無断で借用したのではないかと疑ったわけです。
勘定帳には512両、そして実際には462両。
ちょうど50両の不足です。
歳三に聞かれても、口を割ろうとしない河合。
でも、誰かを庇っているらしいのはすぐに分かります。
歳三としては、河合を白状させて
武田からその西洋軍学の本を取り上げて
我が物にしてしまおうという魂胆があった
……かどうかは分かりませんが(^ ^;;)
しかし、河合はそれでも白状せず。
実家に5日以内に50両届けさせるので、今回は
自分自身(=河合)の紛失という失態にしてほしいと申し出ますが、
もし届かなかったら、切腹ということになりました。
ただ、歳三は河合が悪いわけではないと気づいているので
5日の猶予期間を10日に延ばすという計らいも見せます。
もし10日以内に金が届けられれば、見逃すというわけです。
5日以内に金が届くことに不安はなかったのですが、
予定の2月7日になっても金は届かず。
歳三は、河合に脱走されてしまっては
結局切腹という処分になってしまうことを恐れて
河合を(切腹させないための)謹慎ということにしました。
そして3日前になり2日前になり、
昨日になっても金は届きませんでした。
歳三は河合を説得し、事のあらましを白状させます。
それで武田を問いつめるわけですが、
武田は「金を紛失した方便」とシラを切ります。
本は、生活を切り詰めて貯めたお金で買ったと言い張ります。
確かに、勘定方は金を守ることこそが役割であり、
それを守れなかった場合は死に値します。
しかし、軍師と声高に唱える者が
ウソをついて仲間を売るような真似をしたら……。
「オレはそいつを許さねえ」(by 歳三)
斎藤 一も、永倉新八も
河合を死なせるのは大反対です。
しかし、歳三は己を曲げようとしません。
かつて山南敬助が切腹したのは、新選組にとって
一切の例外は認めないと宣言したようなものです。
こうなれば、意地です。
永倉は「こんな時、近藤さんにいてくれれば」と
ポツリとつぶやきますが、
その実は、勇に最もいてほしかったのは
歳三なのかもしれません。
そして、今日です。
「父に……父にだけは伝えてほしいのです」
河合は続けます。
河合耆三郎は、何一つ恥じることはなかった、と。
その言葉を西村に託し、切腹。
介錯の役目を仰せつかった谷 三十郎(勇の養子・近藤周平の実兄)は
介錯で外してしまい、河合はひどく苦しんでおりますが
総司が河合のとどめを刺します。
歳三は武田を睨みつけ、その場を後にします。
「武田のために死ぬことはないンだ!」
そう言っていた島田 魁も、切腹の場の後片付けをしながら
箒を叩き割って悔し泣きです。
それは原田左之助も同じです。
いつもにない原田の表情に、まさはそっと側に寄り添います。
河合もつくづく運のない男だ──。
歳三は河合のことをこう言っていますが、
本当にそうだと思ったのは、むしろ河合の没後かもしれません。
シャンシャンシャン……。
鈴を腰につけた飛脚が、
走って西本願寺に入っていきました。
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慶応2(1866)年2月12日、
新選組隊士で勘定方を務める河合耆三郎が切腹、享年29。
慶応3(1867)年11月18日、
新選組から分裂した御陵衛士を粛清する『油小路事件』まで
あと1年9ヶ月──。
作:三谷 幸喜
音楽:服部 隆之
題字:荻野 丹雪
版画:木田 安彦
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[出演]
香取 慎吾 (近藤 勇)
藤原 竜也 (沖田総司)
山本 耕史 (土方歳三)
優香 (お幸)
オダギリ ジョー (斎藤 一)
中村 勘太郎 (藤堂平助)
山本 太郎 (原田左之助)
山口 智充 (永倉新八)
小林 隆 (井上源三郎)
八嶋 智人 (武田観柳斎)
照英 (島田 魁)
中村 獅童 (滝本捨助)
笹野 高史 (孝庵)
はしの えみ (まさ)
大倉 孝二 (河合耆三郎)
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谷原 章介 (伊東甲子太郎)
麻生 久美子 (おりょう)
戸田 恵子 (お登勢)
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佐藤 B作 (永井尚志)
江口 洋介 (坂本龍馬)
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制作統括:吉川 幸司
演出:山本 敏彦
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