大河ドラマ八重の桜・(25)白虎隊出陣
新政府軍は奥州街道に兵を進めます。
西郷頼母は松平容保に再び恭順を説きますが
受け入れられず、白河総督の任を解かれます。
慶応4(1868)年7月29日
新政府軍に抗戦を貫いた二本松藩は壊滅し、
奥羽越列藩同盟は崩壊寸前に。
刻一刻と、会津に危機が迫っていました。
8月19日、陽暦で10月の奥羽には
もう寒さが忍び寄っていました。
何があっても、殿とお家を第一に考えて動けば
会津の人間として道を誤ることはない。
山本家では、権八が家族に対し訓示します。
「見苦しい真似は決してすんな」
権八と川崎尚之助は、角場で整理を始めます。
いつお城からお召しがあってもいいように、
余分なものは埋めておくことにします。
山本八重と日向ユキは、体調を崩した黒河内伝五郎の見舞いに
古川春英に処方してもらった薬を持って訪れますが、
道場では気合いの入った女たちのかけ声がかかっています。
どうやら、照姫を守るための「薙刀隊」なるものを結成し、
その鍛錬に励んでいるようです。
その中には、中野竹子の姿も。
道場を覗いてみた八重の姿を見て、
竹子と互角な八重が薙刀隊に入ってくれれば百人力と
薙刀隊の女たちは歓喜しますが、
八重にその考えはありません。
途端にさんざんな批判を浴びる八重ですが、
それを半ば遮るように、竹子の凛とした声が響きます。
「別のお考えがおありなのでしょう。私たちは稽古を」
何を言われても言い返そうとしない八重に、ユキは
言われっぱなしで悔しくないのかと膨れっ面ですが、
「んだけんじょ……薙刀では薩長は倒せねえ」
八重は厳しい表情のままで、道場の外から稽古を見つめています。
8月20日──新政府軍が会津城下に到達する3日前
新政府軍がついに動き出したとの情報が鶴ヶ城に入ります。
領内への敵の侵攻を何としても食い止めるべく
会津藩は城下に至る道をすべて封鎖する作戦を決行。
ただ、どこから会津に攻め込まれるのかという情報はありませんで、
手勢を各峠に分散させている上に、
更に主力部隊を分けなければならないのでは
数の面では敵を圧倒できません。
敵より会津が勝っているものといえば、寒さでしょうか。
もう少し時間を稼げれば雪が降り、
敵も身動きが取れなくなるでしょう。
今が踏ん張り時、と佐川官兵衛の大声が響きます。
容保は、日光口に詰めている山川大蔵と
敵に鬼と畏れられている佐川官兵衛を家老に昇進させます。
西郷吉之助は、同郷の中村半次郎に
難儀している日光口に派遣することにします。
総督府は会津を根絶やしにする方策のようですが
そもそも私怨で始めた戦ではないので、
吉之助は、なるだけ早く鎮圧して
会津を治めたいと考えているわけです。
「話してみっか……あん男と」
吉之助の脳裏に、山本覚馬の姿が浮かんでいました。
その覚馬、意見書を完成させた後は足もいよいよ悪くなり、
起き上がることすらできなくなっていました。
吉之助は、覚馬を死なせるには惜しい人物と
牢から出して医者に診せることにします。
8月21日──到達2日前、
新政府軍は守りが手薄だった母成峠を突破。
会津はついに、領内への敵侵入を許してしまいました。
会津軍800は、3,000の敵を前に止むなく猪苗代城へ撤退。
22日──到達前日、各家にお触れが。
“15歳から60歳までの男子は城内に入れ”。
それに従い、山本家では
権八と尚之助が入城することになりました。
「私もお供させてくなんしょ!」
鉄砲の腕はある、大砲についての知識もある。
お役に立ちたい一心なのでしょうが、
権八としては女子を連れて行くわけにはいきません。
「私は三郎の仇を討ぢてえ! 私は鉄砲で戦いやす!」
直後、パン! と手のひらが飛んできます。
母の佐久です。
「余計なこと言って、大切な御出陣の邪魔をしてはなんねえ!」
権八も佐久も、八重の気持ちが分かるだけに
武士ではない八重を
入城させるわけにはいかないのです。
そのころ、西郷家でも頼母の出陣の準備が進んでいました。
身支度も終わり、千恵が刀を手渡すと
ニッコリと微笑んで頷く頼母の姿がありました。
だまって家を後にする頼母に手をつく千恵ですが、
我慢していた涙が溢れてきました。
平伏したまま、肩を揺らしています。
その頼母は背炙山に布陣します。
そして萱野権兵衛は大寺に、官兵衛は強清水に
部隊をそれぞれ率いて向かいます。
猪苗代の土方歳三は、猪苗代城に火を放って
仙台まで引き揚げるつもりですが、
斎藤 一は会津に戻って戦い続けるつもりです。
「今、会津を……見捨てるのは義にあらず!」
愚かなほどに真っすぐな、会津という国を
斎藤は惚れきってしまっています。
土方も、自分の信じる戦の道を進むことに。
ふたりはここで道を違えることになりました。
その猪苗代撤退の知らせは鶴ヶ城に届き、
容保は出陣して全軍の指揮を執ると決断します。
今度こそ、みんなと共に戦わねばならない──。
容保の心に、大坂から江戸へ引き揚げた時の後ろめたさが
まだ残っていたのかもしれません。
前線へ向かう容保を護衛する兵は
『白虎隊』という年の若い兵たちでした。
鶴ヶ城城内には、もはや
精鋭部隊が残っていなかったわけです。
会津城下への入口となる十六橋という橋がありまして
敵が襲来する前にそこを破壊しておきたい会津軍ですが、
石橋であることで破壊に手間がかかり
そうしている間に敵が到着、さんざんに砲撃を受け
十六橋は敵の手に落ちてしまいます。
容保が指揮を執る滝沢本陣は
鶴ヶ城から十六橋に向かう途中にありまして、
もはや2里程度しか離れていません。
敵は、目前です。
更なる敵の侵入を防ぐため、もう一つの戸ノ口原に
本陣の半分を向かわせたいところですが、
すでに手薄な本陣から向かわせられると言ったら
白虎隊しかありません。
そして、その戸ノ口原が敗れた時に備えて
城下の者たちには籠城の準備をさせておきます。
敵が迫ったら、藩士家族は半鐘を合図に鶴ヶ城へ。
町方、村方の者は城下を出よ──。
遠くから大砲の音が聞こえ、驚く佐久です。
「おッ母さま……敵はもう間近まで迫ってっからし」
佐久は、山本家に長年仕えてくれたお吉と徳蔵に
心ばかりの金を渡し、村に帰るよう諭します。
しかし二人は、せめて佐久や八重らが
城に入るのを見届けるまでは、と受け取ろうとしません。
女たちは、敵に乱暴されないように、足手まといにならないように
命を捨てる覚悟だという話を聞いて来たようで、
入城を見届けるまでは、と言ったのでしょう。
「心配いらねえ。私たちは必ず、お城に入る」
八重は微笑んで、徳蔵とお吉を安心させようとします。
その言葉を聞いて少し安心したか、徳蔵は
せめて今夜の準備まで手伝わせてほしいと譲歩します。
佐久は、仕方ないなぁ……と困った顔をしながらも
「ありがとなし」と手をつきます。
雷鳴が轟き、雨が降り出しました。
滝沢本陣から出撃した白虎隊士中二番隊は
その日の夜、戸ノ原口で野営となりました。
冷え込む夜に加え、雨で体感温度は下がる一方で
少年たちは“おしくらまんじゅう”で身体を温めます。
戦を前に緊張気味の少年たちは、
徐々に緊張も解けて笑い声も出始めます。
「明日は戸ノ口原から敵を追っ払ってやんべ!」
少年たちは一致団結して、その時を待ちます。
山本家では、庭に大きな穴を掘って野菜を埋めます。
野菜を掘り返せば、また食べれます。
みねは、お吉の好きなかぼちゃも埋めんべ! と笑いますが
その優しさが嬉しくて、お吉はみねを抱きしめます。
八重は、角場を見て
いろいろな思い出が走馬灯のように駆け巡っていきます。
(三郎)姉上が嫁に行けば、角場は俺の天下だと思ったげんじょ……。
(覚馬)覚悟はいいな!
(八重)はいッ!
(八重)やっぱり鉄砲さやりでえ! お父ッ様、教えてくなんしょ!
(権八)駄目だ。ならぬことはならぬ!
「今まで……ありがとなし」
角場に向かって深々と頭を下げる八重でした。
そして、8月23日・早朝──。
カサカサッという物音に目が覚めた白虎隊隊士は
その音の方に向かって銃を構えますが
出てきたのはウサギでした。
フッと安心したのもつかの間、一気に銃撃を受けます。
「敵だ! みんな構えろ!」
城下に半鐘が鳴り響きます。
佐久らが入城の準備に追われる中、
八重は、角場に駆けて行って籠ってしまいました。
再び角場から出てきた八重は、
三郎が来ていた軍服を着て、腰には大小の刀。
そして手にはスペンサー銃、髪も短くまとめています。
「私は……戦う」
──────────
慶応4(1868)年7月29日、
新政府軍が二本松城下に殺到し、二本松城が落城する。
明治39(1906)年4月1日、
篤志看護婦としての功績により
皇室以外の女性として初めて『勲六等宝冠章』を受章するまで
あと37年8ヶ月──。
作:山本 むつみ
テーマ音楽:坂本 龍一
音楽:中島 ノブユキ
題字:赤松 陽構造
語り:草笛 光子
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[出演]
綾瀬 はるか (川崎八重)
西島 秀俊 (山本覚馬)
長谷川 博己 (川崎尚之助)
風吹 ジュン (山本佐久)
松重 豊 (山本権八)
長谷川 京子 (山本うら)
貫地谷 しほり (高木時尾)
市川 実日子 (梶原二葉)
剛力 彩芽 (日向ユキ)
綾野 剛 (松平容保)
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黒木 メイサ (中野竹子)
宮崎 美子 (西郷千恵)
秋吉 久美子 (山川 艶)
中村 獅童 (佐川官兵衛)
降谷 建志 (斎藤 一)
池内 博之 (梶原平馬)
北村 有起哉 (秋月悌次郎)
六平 直政 (黒河内伝五郎)
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津嘉山 正種 (神保内蔵助)
勝地 涼 (山川健次郎)
山本 圭 (山川兵衛)
柳沢 慎吾 (萱野権兵衛)
佐藤 B作 (田中土佐)
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反町 隆史 (大山弥助)
加藤 雅也 (板垣退助)
吉川 晃司 (西郷吉之助)
稲森 いずみ (松平 照)
西田 敏行 (西郷頼母)
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制作統括:内藤 愼介
プロデューサー:樋口 俊一
演出:佐々木 善春
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『八重の桜』
第26回「八重、決戦のとき」
デジタル総合:午後8時〜
BSプレミアム:午後6時〜
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