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2013年7月19日 (金)

プレイバック獅子の時代・(06)江戸城終焉(えん)

南フランスの玄関・マルセイユは、古くから
北アフリカ、中近東、遠くはアジアへの足がかりとして
地中海貿易の重要な港であった。

人口約90万、パリに次ぐフランス第2の大都市である。

「幕府倒るる」の知らせに
急ぎ帰国することになった徳川昭武の一行は、
このマルセイユで半月を過ごさねばなりませんでした。

送金の途絶えた幕府派遣の留学生を
フランスのみならずイギリスからも
集めて帰らねばならなかったからです。

平沼銑次は帰国への焦りを抑え、
できるだけ多くの西洋を写すことで過ごします。
帰国後の土産話の証拠にするつもりもあったわけです。


苅谷嘉顕の横浜港到着は、慶応4(1868)年4月9日。
そのまま品川宿に入ります。

しかし帰国したばかりの嘉顕には
今の日本がどうなっているかさっぱり呑み込めません。

嘉顕より一足先に帰国していた尾関平吉は
嘉顕が知っている鳥羽・伏見の戦い以降について
簡単に説明しておきます。

戦い後、江戸に戻ってきた幕府軍を官軍が追って来たわけですが、
勝 安房守(海舟)と西郷隆盛で3回会見が行われ
3度目、江戸城総攻撃予定日の前日昼に
総攻撃が中止となりました。


尾関の説明ではよく状況が分からず
嘉顕は軽装で江戸に行ってみることにします。

そんな嘉顕を追うひとりの男がいました。
彼は嘉顕が薩摩の、かつフランス帰りの人だと分かって
声をかけたわけです。
「消息を求めています。小此木みつと申します」

知らんなぁ、と答えつつ、
嘉顕は江戸への案内役を彼に求めます。

江戸幕府という大きな体制が終わり
つい先日まで総攻撃がかけられる予定だったというのに
江戸の町は、拍子抜けするほど平穏でした。

江戸を歩いているうち、
屋敷についつい足を踏み入れてしまったふたりは
捕らえられます。

奥から出てきたのは、榎本武揚です。

榎本は、江戸城攻防戦として
軍艦を集めて官軍と戦うつもりでいましたが、
謹慎中の慶喜がそれを聞いて激怒し、やめさせます。

捕らえられたふたりは斬られる直前で
間一髪脱出することができました。

屋敷から走って走って逃げてきたふたり。
男は嘉顕を竹やぶに誘導し、竹でめった打ちします。

嘉顕の懐にある巾着袋を取り上げ、男は逃げて行きますが、
嘉顕は、この男がおもんの弟・小此木恭平であることには
気づいていません。

足を引きづりながら山を下りてきた嘉顕は
番所を見つけますが、そこには襲撃されたか
死体が転がっているばかりです。

嘉顕は力尽き、倒れ込みます。


慶応4(1868)年4月11日、夜明け前。
将軍徳川慶喜は江戸を出て水戸に向かいます。
そして夜明けとともに官軍は江戸城に到着。
朝廷への江戸城明け渡しは終始平穏に進みます。

しかしそれを不服として江戸を脱走する兵も後を絶たず
歩兵奉行・大鳥圭介率いる450名を始めとして
東北へ向かう兵士たちは、集結してみれば
およそ2,000人の軍勢になっていました。

東北に、会津あり──。
脱走して北に向かう兵士たちは、
そんな会津に向いていました。

軍艦7隻を率いて江戸表に現れた榎本でしたが、
明け渡しの日にはいなくなっていました。
榎本も同様、北に向かって進んでいたわけです。


血を流して倒れていた嘉顕は助けられ、
畳屋平蔵の2階に寝かされていました。

様子を見にきた平蔵に、嘉顕は礼を言いますが
その話し言葉から、
嘉顕が薩摩の人間であることを知ってしまいます。
「……出てってくんねえ」

江戸全体で見ればどうかは分かりませんが、
この集落の人間は少なくとも薩摩嫌いが大多数です。
人の家に土足で上がり込んで、
好き勝手に振る舞う薩摩の行動が許せないわけです。

薩摩の振る舞いを聞かされた嘉顕は
これ以上迷惑をかけるわけにはいかないと
平蔵の家から出て行くことにします。

品川宿に戻っても、
嘉顕は悶々としたときを過ごします。
帰国後、今日まで見てきた日本の町は
何かがおかしいと感じています。


4月15日に品川を発ち、11日を要して
嘉顕が京に到着したのは4月26日でした。

京都御所に入った嘉顕は、
さっそく岩下左次右衛門に帰国の挨拶を済ませます。
ただ、御所内もいろいろと忙しいようで
すぐに出て行ってしまいます。

大久保利通が嘉顕に会いたいと言っているようで、
嘉顕はそのまま御所にとどまることになりました。

数時間が経過し──大久保が現れました。

大久保は、ヨーロッパ帰りの嘉顕に
江戸の町の見たままを話させます。
それを目を閉じて黙って聞く姿勢に、
嘉顕はいたく感動しています。


5月15日、官軍は
最後の砦・上野山の彰義隊を壊滅させます。
指揮官は長州藩士の大村益次郎であります。

家老・岩下の命により、嘉顕は
鹿児島に帰ることになりました。

ちょうど同じころ、
ヨーロッパから日本に帰国する途上の
平沼銑次の姿もありました。


作:山田 太一
音楽:宇崎 竜童
語り:和田 篤
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[出演]
菅原 文太 (平沼銑次)
藤 真利子 (苅谷菊子)
市村 正親 (小此木恭平)
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鶴田 浩二 (大久保利通)

尾上 菊五郎 (高松凌雲)
近藤 洋介 (苅谷巳代治)
岡本 信人 (尾関平吉)
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神山 繁 (岩下左次右衛門)
佐野 浅夫 (畳屋平蔵)

加藤 剛 (苅谷嘉顕)
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制作:近藤 晋
演出:中村 克史

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