プレイバック獅子の時代・(14)五稜郭決戦
1868(明治元)年11月に
蝦夷地(北海道)をほぼ制圧した榎本軍に対し、
政府軍は春を待って攻撃を開始しました。
4月9日に北海道に上陸、またたく間に江差、松前を奪還。
海からの軍艦による攻撃も絶やさず、
5月に入ると、早くも箱館を目前にするまでに至り、
榎本軍を追いつめていました。
1869(明治2)年5月8日。
高松凌雲が建てた箱館病院には
戦の負傷者が次々に運ばれ、
銑次も凌雲の手伝いに務めます。
「敵を匿っちゃいねぇだろうなッ!?」
そこへ土足で上がり込んできたのは総裁・榎本武揚です。
敵がいる場所とこの病院との間には榎本軍がいるのだから、
こちらの病院に来れようはずもないのですが、
榎本によると、味方の中に
裏切り者が出始めているのだそうです。
裏切り者を匿えば士気に響くので
敵や裏切り者に対して
生温いことをしないように、と厳命する榎本を
凌雲は激しく睨みつけます。
「病院の全権は私です。命令は受けません」
改めて凌雲を訪問した榎本は、
この病院周辺が箱館五稜郭の戦場の中心になると予想し
軍艦千代田丸を準備しているので、それに負傷兵を乗せて
室蘭辺りでしばらく退避してほしいと打診しますが、
病院を離れれば医薬品はいずれ底を尽き
かといって病院を担いで逃げるわけにも行かず
負傷兵も置いて行けないので、
凌雲は、仮に敵に踏み込まれたら助命を請うつもりです。
病院に居残って凌雲の敵への説得に身を任せるか、
千代田丸に乗って退避するか、
ここは共和国らしく
負傷兵それぞれが選択させることにしました。
五稜郭を前にする政府軍の中には
苅谷巳代治や植村信吾の姿がありました。
決戦を前に、薩摩から手紙が届いたそうで
信吾は巳代治に、彼の母・和哥からの文を届けます。
しかし、信吾の元に届いたのは姉・菊子からの文でした。
菊子は夫に手紙を送らず、弟に送ってくるので
弟である信吾は妙に気を遣って
自分に送られた手紙のことを隠し立てするのですが、
巳代治には、それで嫉妬したりします(^ ^;;)
箱館病院の負傷兵全員が、病院に残る道を選択。
榎本は五稜郭へ戻って行きました。
凌雲は、一部の兵による軽率な行動のために
それまでの努力が水泡に帰すことがないように、
そして負傷兵たち全員の安全を守るために
それぞれが所持する武器を一つ残らず預かることにします。
預かった全ての武器を箱に入れ終わり、
銑次はにっこりと笑っていましたが──。
「銑次、お前もだよ」
ただ、凌雲の与り知らぬところで
負傷兵の一人が布団の下に銃を隠し持っていました。
苅谷嘉顕からの、千代への差し入れは続いていました。
ただ、直接手渡したのでは千代も受け取れないと判断し、
近くにすむ男の子に託すわけです。
「敵の情けは受けねす」と言いつつも、
義姉・玲が生んだ赤ちゃんのことを冷静に考えれば
自分を曲げてもらっておく千代です。
その嘉顕を、夜遅くに訪ねてくる一人の男がいました。
アメリカに留学していて、つい先日横浜に帰り着いた
森 有礼(ありのり)です。
自分のことを「モリユーレイっちゅうもんじゃが」と名乗ったので
畳屋平蔵の妻・さくは、幽霊と名乗る妙な男が来たと思っています。
平蔵も、幽霊と聞いて飛び起きますが(笑)。
ま、徳川慶喜が「とくがわけいき」と呼ばれるのと同じですかね。
嘉顕は、有礼のアメリカ留学話を聞きたがっているのですが
それはまた追々ということで、
アメリカからの帰りの船で、日本人芸者と出会った話をします。
日本人芸者──フランスからアメリカへ渡った、もんのことです。
話だけかと思いきや、
有礼がここまで連れてきていると知って
慌てて外に出て行ってもんと再会する嘉顕です。
端から聞いている平蔵・さく夫婦にとっては
嘉顕という男がどういう人間か、
ますます分からなくなっています。
5月11日。
ついに箱館五稜郭への総攻撃が始まりました。
箱館病院にも政府軍が迫り来ますが、
丸腰の銑次が両手を大きく上げて
「撃つなッ」と叫ぶ姿に圧倒されてか
政府軍は何も手出しできません。
入ってお確かめください、と言う凌雲や銑次を先頭に
巳代治と信吾らが刀を抜いて、病院内部を調査します。
預かった武器を収納している箱も確認しました。
「よか! “薩摩隊既に改め済”と書きもんそ」
全てを確認し終えた巳代治は、凌雲を信用します。
しかし、それが悲劇に変わるのはこの直後です。
凌雲が負い続けた理想の病院が箱館にあることに
ひどく驚き感心していた巳代治を、
例の、鉄砲を隠し持っていた負傷兵が撃ったわけです。
その負傷兵はたちまち撃ち殺されますが、
巳代治は「殺してはならん」との言葉を残し、絶命。
信吾は、すでにこと切れているその負傷兵を何度も刺し、
その前に立っていた銑次をも刺します。
「おはんら……!!」
信吾の悔しそうな叫び声が、病院に残されました。
5月13日。
黒田清隆が榎本に降伏を勧告。
18日には、五稜郭はついに、政府軍の手に落ちました。
鳥羽・伏見の戦いより1年あまり続いた
幕府 対 明治新政府との戦いは終わりを告げました。
兄さま……銑次兄さま……。
千代の声に目覚めた銑次ですが、
それが夢だと分かるまでにはそう時間はかかりませんでした。
現実には見知らぬ女が腹の包帯を替えに来ていましたが、
その女が誰なのか、ここはどこなのか、
そして自分がどうしてここにいるのかはナゾのままです。
家の内部を見回していると、
一人の武士が戸を開けて入ってきました。
伊河泉太郎。
徳川昭武に付き従う水戸藩士で、
銑次と一緒にフランスに渡り寝食を共にした仲です。
「何が何だか、わけがわかんね」
銑次は笑いますが、笑うと刺された腹が痛みます。
そんな姿に伊河は大笑いして、銑次も控えめに照れ笑い。
ともかく、久々の再会です。
作:山田 太一
音楽:宇崎 竜童
語り:和田 篤 アナウンサー
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[出演]
菅原 文太 (平沼銑次)
大原 麗子 (もん)
大竹 しのぶ (平沼千代)
藤 真利子 (苅谷菊子)
香野 百合子 (平沼 玲)
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鶴田 浩二 (大久保利通)
尾上 菊五郎 (高松凌雲)
近藤 洋介 (苅谷巳代治)
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佐野 浅夫 (畳屋平蔵)
中山 仁 (森 有礼)
加藤 剛 (苅谷嘉顕)
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制作:近藤 晋
演出:重光 亨彦
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