プレイバック獅子の時代・(21)栄光なき志士
幕府を倒し、明治政府を作らんとする日本の動きとほぼ並行して、
中国でも、清王朝を倒し新しい国家を作ろうとする動きが
激しく起こっていました。
しかしそれは、イギリス・フランス軍隊の介入、
清王朝の強さの前で次々と滅していました。
志士の中には、洪継賢のように
日本にまで武器を求めに渡る者もいました。
「イギリスを清国から追い払いたい」
そんな洪に横浜へ行かないかと誘われた平沼銑次です。
差し迫る冬を前にして
銑次は米を買う金をなお求めていましたが、
横浜へ向かう胸の中には、ただ金のみではなく
巨大な力に立ち向かおうとしている清国の若者への共感が
抑え難く芽生えていたわけです。
植村信吾は、来年早々にも
開拓を学ぶためにアメリカへ留学することになりました。
その前に、語学をしっかり学ばなければ何にもなりません。
信吾は友人たち5人と先生の家に住み込むことにします。
そうなると……、
今は苅谷屋敷へ信吾の家から通っている姉の菊子ですが、
ひとりになってしまいます。
嘉顕がどうしてもイヤなら、近所に小さな家を借りて
そこから通わせるというのもありですが、
せっかくの大きな屋敷、ふたりで住む方が都合がよく
菊子自身も「義姉として、義弟の世話をする」と承諾。
信吾は、あまり乗り気でない嘉顕に説得を続けます。
横浜に向かう銑次は、道中
畳屋平蔵宅の2階で療養を続けるおもんを見舞います。
嘉顕がおもんを放ったらかしにしていると銑次は不満げですが、
嘉顕はちょくちょく顔を見せにきているようです。
銑次はおもんを元気づけ、励まします。
そんな銑次を初めて見た弥太郎は、ニタニタしてますが(笑)。
翌朝、大きな荷物を抱えて苅谷屋敷に入った菊子ですが、
玄関先の廊下の拭き掃除をしている女性の姿が目に入ります。
きわ、という嘉顕が新たに雇った住み込みで働く女中です。
旗本の妻で、彰義隊に入った夫と子どもをなくし
ひとりになってしまったのだとか。
道理で、所作や言葉がかなりキレイだと思いました。
ま、義姉と義弟の関係を続けて一緒に暮らすためには
ふたりきりではなく、もう一人いた方がよいと
嘉顕が考えたのでしょうけど。
菊子は、自分が嘉顕の義姉であり
義弟の世話をするために来た、ときわに伝えます。
そのニュアンスからは、嘉顕の世話はさせないぞという
何だか強い意志を感じたのは私だけでしょうか(^ ^;;)
夜、嘉顕が帰宅しました。
嘉顕に膳を用意する菊子ときわですが、
用意はきわに任せ、菊子と膳を共にする嘉顕です。
明治3(1870)年の夏から、
東京〜横浜間を蒸気船が往復し始めました。
9時に東京を出港して昼に横浜へ、
そして1時に横浜を出港という1日1往復のダイヤです。
横浜側の船着き場で銑次と弥太郎は仲間と落ち合います。
その仲間の導きで、洪継賢の元へ向かうふたり。
洪は銑次らに、番所を襲って鉄砲を奪うように言います。
日本人を殺さずに倒せる力を見込んでのことです。
弥太郎は番所に行き、
警護兵を番所の外におびき出すことに成功。
それを後ろから銑次が襲って気絶させ、
そのスキに洪らが鉄砲を奪いに突入します。
鉄砲は上手く奪えたのですが、その鉄砲を
洪が主張するようにイギリスを追い払うために使うのではなく
金に換えて売り払おうという者たちが現れました。
そんな裏切りはあるはずはない、と
洪は仲間の元へかけつけますが、
洪の胸元に鳥のように飛び込んできた少年に
ナイフで刺されて亡くなります。
その少年も、口封じのためか仲間に殺されるわけですが、
銑次は「許せねえ」と、その裏切った者たちを襲撃し
奪い取っていた鉄砲は海に投げ捨てます。
斗南藩の蓄えは11月ごろに底をつく見込みなのだそうです。
しかし、実質的には食料の調達はできておらず
厳しい冬を迎える準備も完全とは言えない状況です。
平沼鉱造は父・助右衛門に、銑次よりも稼いでくるから
青森でもどこでも出してくれと許しを請いますが、
ここに居残って冬を越す気概がなければ会津武士の名折れだと
商人の真似をして出稼ぎすることを許しませんでした。
苅谷屋敷を信吾が訪ねてきました。
無論、嘉顕は太政官庁に出仕していて不在なので、
菊子が対応します。
信吾は、きわがいることで
嘉顕と菊子がふたりきりになれない現状に文句を言います。
弟としては、アメリカへ出立する前に
何とかふたりをくっつけたい思惑があるようです。
奥に下がったきわは、それをじっと聞いています。
聞こうとしなくとも、こんなに静かな屋敷内では
会話は筒抜けなのかもしれません。
姉は弟に「帰りやんせ」と厳しい口調で叱りながら
義姉ではなく女としては、思うところがあるのかもしれません。
作:山田 太一
音楽:宇崎 竜童
語り:和田 篤 アナウンサー
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[出演]
菅原 文太 (平沼銑次)
大原 麗子 (もん)
大竹 しのぶ (平沼千代)
藤 真利子 (苅谷菊子)
永島 敏行 (平沼鉱造)
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清水 健太郎 (洪継賢)
岡本 信人 (尾関平吉)
金田 賢一 (弥太郎)
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加藤 嘉 (平沼助右衛門)
野村 昭子 (さく)
加藤 剛 (苅谷嘉顕)
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制作:近藤 晋
演出:中村 克史
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