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2013年9月13日 (金)

プレイバック獅子の時代・(22)雲井竜雄襲撃

芝の二本榎の寺に、米沢藩の雲井龍雄が
「点検所」という看板を掲げて旧士族の救済を始めていました。

雲井の説によれば、
旧士族を路頭に迷わせたのは薩摩のせいである、
そのような荒療治をしなくても、日本は近代国家へ移行できたものを
天下欲しさに薩摩が戦争に持ち込んだ──と。

そのような雲井の元に集まる武士は、
ただ生活の救済を求めるだけではないはずでした。

しかし、政府を呪う者にたちまち捕らえて制裁するのでは、
徳川幕府と少しも変わらないわけで、
このような存在にどう対処するのか、
これも新政府に突きつけられた大きな課題でした。

太政官庁舎に赴いた苅谷嘉顕は、大久保利通と対面します。

ポリスとして、武士はもちろん百姓町人から
3,000名を募集するという考えを持つ嘉顕ですが、
だれ彼構わず武器を持たせることを大久保は危惧します。

誰が何をしでかすか分からない世の中なのです。
4日前にも横浜の鉄砲蔵が襲われたばかりですし。

大久保は、嘉顕に1,000名だけ選ばせ
残りについては西郷隆盛に任せて鹿児島で募るように命じます。

しかしこれでは、ポリスの大半が鹿児島人になってしまいますし、
長州や土佐、肥前などからも不満の声は出そうですが、
何か事を成す時に薩摩が主導権を握っておく必要があると
大久保は嘉顕を説きます。

その上で、雲井の件は嘉顕に一任することにします。


前回の洪継賢の手助けをした“10両の仕事”ですが、
金を渡す前に洪が仲間に殺されてしまったので
手元には入ってきませんでした。

一攫千金を狙うより、
地道にコツコツ働いた方がいいと感じたのか
銑次と弥太郎はまたも土木現場で働いています。

そんな二人を遠巻きに見ている一人の武士がいました。
彼を気味悪がって、弥太郎は銑次の隣にべったりですが、
弥太郎も平沼家に対して同じことをしていたのです(^ ^;;)

彼は二人に、長岡藩士・橋川信造と名乗ります。
“横浜でのお手並みを拝見”と言っていましたが、
彼が見たのは鉄砲強奪の場面ではなく
洪らを裏切り殺害した清国人相手に
少人数ながら倒していった部分です。

であれば、銑次たちは鉄砲強奪には関わりないと
言い訳が立つ(←その現場を見られていない)ので
まずは一安心ですが、

銑次たちは橋川に、雲井に会うことを勧められます。
困窮している武士たちを、政府に掛け合って
世話をしたり仕事を探して与えたりしている男です。


嘉顕はさっそく、雲井の人物像を探ってみます。

雲井のやっていることは、
新政府も見習わなければならない部分は多々あり、
嘉顕はそれを咎めるつもりはありませんが、

仲間の大槻信春は、反乱の火の手が上がる前に
芽を摘んでおくべきだと主張して譲りません。


「米沢藩の雲井です」
「会津藩の平沼だす。米沢にお味方を得られなかった会津だす」
銑次は、会津戦争で会津藩に援軍を送らなかった
米沢藩の行動をよく思っていないようです。

援軍をもらっていたら勝てたかもしれねぇ、と考える銑次に
雲井は、あの当時の時の勢いは新政府軍に傾いていたからこそ
米沢藩は和平に務めたと説き直します。

しかし銑次は、
今さらそんな言い訳がましいことは聞きたくありません。
用件だけ聞いてさっさと帰るつもりです。

雲井は、今世の中に渦巻いている新政府、
特に薩摩や長州に対しての不平不満を一つにまとめ
それを新政府の監視役として存在させなければならないと
考えているのです。

いわゆる、新政府に対する対抗勢力とでも言いましょうか。
新政府が誤った方針を出した場合にはそれを批判し
ミスに気づいて方針を軌道修正させるための集団です。

そこで雲井は、いざという時
つまり新政府と相対するときのために
力あるものを仲間に引き入れておきたいのです。

「お断りする。オレにはそんなヒマはねえ」

雲井の言う“いざという時”がいつ来るか分からない、
その間にしておかなければならないこともない中で、
斗南に家族を残してきている銑次としては、
この集団になんとなく所属している時間はないわけです。

斗南での厳しい冬は、今回だけではなく
恐らく会津藩が斗南にいる限り永遠に続いていくことです。
雲井は、困ったらいつでもいらっしゃいと銑次を帰します。
「支えぐらいにはなって差し上げられるでしょう」

再び土木作業に従事することになった銑次と弥太郎の元に
面白い仕事が見つけましてね、と雲井が訪問してきます。

浅草寺の境内に捨て札があり、銑次を思い出したとのこと。
詳しくはそれを見てください、とでも言わんばかりに
「私が使っていたものです」と包みと木刀を置いていきます。

銑次は弥太郎とともに浅草寺に捨て札を見に行きます。
古武術試合、勝ち抜き戦と書いてあります。

全て勝っていけば10両になると知って
すでに勝ったように大喜びする弥太郎ですが、
銑次は一喝します。
「バカッタレ! 剣というものはそういうもンじゃねぇ」


雲井の元に、嘉顕が訪問してきました。
点検所の真意を探りにきたわけです。

政府としては、雲井のような人物の意見をもっとよく聞き
旧士族の救済にももっときめ細かさを持たなければなりません。
(無論、これは嘉顕の意見)

しかし、雲井がやっているのは救済ではありません。
武士は救済されるのを屈辱と捉えるので、
誇りを失わず、己の力で生きたいと考えるのが武士なのです。

薩長政府ではなく、日本政府であるために
新政府はこれからも努力をしていく必要がありますが、
雲井から見れば、そんな努力は一切しておらず
放蕩に耽り権力に溺れるだけの政府にしか見えません。

この男は親政転覆を謀っている……?
嘉顕がそう感じた時、政府軍が乱入してきます。

「誰の命令か!」
嘉顕は声を荒げますが、時はすでに遅く
雲井は捕縛されてしまいます。

この時捕縛されたのは50余名でしたが、
銑次は仲間入りに断りを入れていたので、
間一髪、捕縛されずにすみました。

雲井捕縛を命じたのは大久保でした。

雲井の一見では嘉顕に一任した大久保でしたが、
嘉顕は反政府集団をあからさまに放置しているし、
その集団の中に飛び込んで真意を聞くという行動には
政府の中にいる人物として誇りがないと判断されたのでした。

とはいえ、捕縛されるだけの決定的証拠がない中での逮捕は
やはり納得できません。
雲井の放免を要求する嘉顕でしたが、
今はそのような時か、と首を縦に振らない大久保。
「戦うとるんじゃ。抗う者を許す言うとるヒマはなかとじゃ」


銑次は、古武術試合の会場にいました。
周囲を見渡せば猛者ばっかりです。

そんな中、妻が病気で
賞金で薬を買おうと途中参加志願の武士がおりました。
「いやぁ……剣術が見せ物になるとは思いませんでした」
その武士の一言に、思わず苦笑する銑次です。

東22番、平川銑次郎!
呼ばれて舞台に立った銑次ですが、
相手はすでに13人抜きだそうです(^ ^;;)

「バカタレッ! 見せ物になるとは何事だッ!」
構えた銑次の脳裏に、
平沼助右衛門の厳しい言葉がこだまします。
それに発奮したか、次々と猛者たちを倒していく銑次。
結局、16人抜きの銑次が優勝となりました。

しかし、先ほどの武士が躍り出て銑次に手をつきます。
「拙者、打ち勝つ自信がござる。10両、是非自分のものにしたい」

さすがにこの身勝手な願いは、弥太郎始め
その場にいる者たちの批難を集めることになりますが、
先ほどの、病気がちな妻に買う薬のことを聞いているので
銑次は相手することにします。

木刀を受け取る武士の手が震えているところを見ると、
恐らくは打ち勝つ自信どころか、
剣術もそこまで強くはないと思えます。


「……お前さまはバカだよ!」
帰宅しうまそうに酒を呑む銑次に
珍しくとげとげしい弥太郎の怒鳴り声です。
恐らくは銑次が気を利かせて負けてやったものと。

結局、優勝賞金10両はその武士のものになったわけですが
3両でええと、残り7両を銑次に返したんだそうです。

銑次は弥太郎を横浜から八戸への船に乗せて、
前と同じように金や衣類など届けることにします。


嘉顕は大久保の許可を得て、獄中にいる雲井を訪問します。

雲井には、今までの一方的な言い分しか聞かない
奉行絶対の御白洲のような裁判ではなく
雲井自身も自分の意見を主張できる場を儲けた
近代的裁判を受けてもらうことにします。

その裁判までの間に、嘉顕は嘉顕で
各方面に根回しを謀るわけですが、
雲井を反政府集団のトップと見る人ばかりの中では
嘉顕の根回し活動も空回りです。

そんな中、耳を疑う知らせが嘉顕の元に届きます。
「雲井が打ち首になります」


これが新政府か!
これが新しい日本か!

雲井はこうして、刑場の露と消えます。

全力で掛けてきた嘉顕でしたが、
執行停止は間にあいませんでした。

「おはんの振舞い、このごろ少々目に余る」
斬首に立ち会った久松府兵総長の言葉から、
嘉顕の根回しや説得は、
実は何にも実になっていなかったわけです。

刑場で立ち尽くす嘉顕でした。


作:山田 太一
音楽:宇崎 竜童
語り:和田 篤 アナウンサー
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[出演]
菅原 文太 (平沼銑次)
金田 賢一 (弥太郎)
三田村 邦彦 (大槻信春)
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鶴田 浩二 (大久保利通)

風間 杜夫 (雲井龍雄)
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加藤 嘉 (平沼助右衛門)

加藤 剛 (苅谷嘉顕)
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制作:近藤 晋
演出:清水 満

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