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2013年9月20日 (金)

プレイバック獅子の時代・(24)斗南に死す

菊子が苅谷嘉顕の元から消えていなくなりました。
おもんもいなくなってしまいました。
ふたり同時にいなくなるという感覚は
なかなか経験することのないことだと思いますが(^ ^;;)

嘉顕は、平沼銑次の元を訪ねます。
嘉顕としては、おもんを奪い返しにきた……というわけではなく
菊子のことで病身でありながら府庁舎まで知らせにきてくれたお礼と
詫びを入れたいと思ったわけです。

銑次は、嘉顕の言葉を伝言として伝える約束はしますが
嘉顕のことを忘れたと言っている以上、
会わせるわけにはいきません。

薬を飲んでいたおもんが扉を開けてみると
「太政官」と書かれた提灯を下げているのが見えました。
銑次と会っていたのが嘉顕だと気づいて、少し動揺します。


弥太郎が斗南から戻ってきましたが、少し浮かぬ顔です。
銑次が渡したお金だけ斗南に持って帰ったのですが、
平沼助右衛門があろうことか、ウチだけが潤うわけにはいかないと
斗南藩に全部納めてしまったわけです。

ここまでくると、この分からず屋なオヤジを
なんとかしてくれという声も聞こえてきそうですが(^ ^;;)

銑次はとりあえず、
少しのお金を準備して斗南に向かうことにします。
おもんも金を作るために力になると言ってくれますが、
おもんは病気なので、銑次は優しく止めます。

銑次が向かった先は、瑞穂屋。
パリ万国博覧会の時に関わった、あの卯三郎です。
浅草森田町で西洋図書を扱っている
瑞穂屋の看板を見つけていたわけです。

そういえば、おもんは困窮しても
なぜ瑞穂屋を頼ろうとしないのか
銑次は今更ながら疑問に考えます。
二人の間に何かあったのではないか、と。


銑次はぜひ卯三郎に会わせてくれと
瑞穂屋の店先で一歩も動きません。
それを姪の龍子が卯三郎に伝えに来ました。

久しぶりの再会です。
いつもポーカーフェイスな卯三郎が
明るい笑顔で銑次を奥の間に通します。
それを龍子のみならず
柳沢慎吾さん演じる丁稚も怪訝そうに見つめます。

「金を貸してもらいたい」
銑次は卯三郎に手をつきます。
卯三郎も、会津藩出身の銑次の運命を想像すると
事情を何も聞かず、気持ちよくお金を貸してくれます。

貸してくれた10両を元に、
2両はおもんと世話役の弥太郎に残し
残り8両を持って斗南へ向かいます。


とうとう、恐れていた雪が降り始めました。

斗南の平沼家に
鉱造が小袋を手に家に戻ってきます。
「これが……最後の米だそうです」

しかし、助右衛門は動じません。
米のねえのがなんだ!? と、表情一つ変えません。

実は、弥太郎が届けた金を藩に納めた後、
玲と保子のことを考えて
衣類を1枚だけでも分けてほしいと申告しましたが、
上納したにもかかわらず「余裕なし」とにべもなく。

鉱造にはそれが悔しかったようです。

助右衛門は、卑しさが出るこんな時だからこそ
いがみ合っていくのはやめなければならないと諭します。

そんな会話をしていたとき、銑次が帰って来ました。
千代と玲、そして保子には綿入れも買ってきてくれました。
ナイスタイミング! です。

ただ、銑次が浜で昆布などを取っている間に
助右衛門はまたも……。

銑次が斗南藩庁へ急ぐと、
助右衛門はすでに金子を納めた後でした。
「ワシらだけ生きればええっつうのか。それがぬしの忠義か」

銑次は改めて、自分の考えを述べます。

新政府は賊軍の会津に新しい土地を与えたと
恩情めいたことを言ってはいますが、体のいい流罪です。
そしてここは領地ではなく、地獄です。
政府は、会津の人間が冬を越せるとは思っていません。

その上で銑次は、一家で東京に出ようともちかけますが、
藩を捨てるのかと助右衛門が受け入れるはずもありません。
銑次は、黙って引き下がるしかありません。


明治4(1871)年・正月。
保子がひどい発熱で寝込んでいます。

医者を呼びにいった鉱造ですが、一人で帰ってきました。
無理矢理にでも連れて来いと言ったはずなのですが……。

なんでもこの周辺では、流行病で病人が急増し
昼夜寝る間を惜しんで診察し続けていた医師は
一昨々日、亡くなってしまったんだそうです。

たまらず、銑次と鉱造は食料を探しに飛び出していきます。

孫娘が病気で苦しんでいるのを見るのはさぞ辛いようで、
助右衛門も人家に頼み込んで大根をもらおうとしますが、
あっさり断られてしまいます。

脇差しと引き換えに大根を持って帰ろうとしますが、
「こんなもん、いらねぇよ!」と脇差しを投げ返され
大根を取り返される始末。

少なくともここ斗南では、武士の魂である脇差しよりは
食料の方が重要度合いは高いです。


銑次は、少しでも仕事の足しになればと
鉱造を藩の役所で働けるように助右衛門に相談してみますが、
あまりにぶしつけな願い出で、助右衛門は承服しません。

そう思いながらも、あくまで下手下手に出て
藩から仕事をもらえるように斡旋仲介を願い出ますが、
どうやら他の家からも、同じような願いは届けられているようです。

そんな事実に、会津藩のために今までどれだけの人が
命を捨てて死んでいったのかと助右衛門は憤慨しますが、
役人からは意外な、恐ろしいことを聞かされます。
「藩はなくなるということなんじゃ」

藩は県というものに置き換わり、
その役職には中央から派遣された役人が就任するとか。
藩士も武士も全てなくしてしまうというウワサが流れています。

藩がなくなるのは、あるわけがねえ!
これは助右衛門でなくとも、銑次でさえもご立腹です。
藩がなくなるのなら、助右衛門らは何のために生きてきたのか、
何のために藩に尽くしてきたのかわかりません。

藩のために耐えてきた助右衛門は、
藩がなくなるかもしれないということを聞いて
張り合いがなくなってしまったのか、
それ以降、助右衛門は心を閉ざし始めます。


助右衛門が粥をほとんど食べなくなったまま
3月を迎えました。

「薩長め! 下郎め!」
という叫び声で銑次らが目を覚ますと、
助右衛門も姿がありません。

助右衛門にとっては、藩がなくなるということが
どれだけショッキングなことかしれません。
見えぬ敵に刀をブンブンと振り回し、
自害して果ててしまいます。

享年五十九でした。


家族で小さな墓を建ててやります。
銑次は鉱造に髷を切ってもらった上で、
一家で東京に出る決意を固めます。
「必ず、薩長を見返してやりやす!」

廃藩置県が行われたのは、それから4ヶ月後。
斗南藩は青森県の一部となり、消滅しました。


作:山田 太一
音楽:宇崎 竜童
語り:和田 篤 アナウンサー
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[出演]
菅原 文太 (平沼銑次)
大原 麗子 (もん)
大竹 しのぶ (平沼千代)
永島 敏行 (平沼鉱造)
香野 百合子 (平沼 玲)
岡本 信人 (尾関平吉)

金田 賢一 (弥太郎)
岸本 加世子 (龍子)
──────────
加藤 嘉 (平沼助右衛門)
児玉 清 (瑞穂屋卯三郎)

加藤 剛 (苅谷嘉顕)
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制作:近藤 晋
演出:中村 克史

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