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2013年10月29日 (火)

プレイバック獅子の時代・(35)西南戦争前夜

大久保利通の厳命を受けて、苅谷嘉顕が鹿児島に到着したのは
明治9(1876)年11月2日。

しかし、太陽暦が採用されてまもなく4年になるというのに、
鹿児島では未だ太陰暦を用いていて、9月でした。
また、廃刀令も発布されているはずですが、
ちょんまげに刀を差して街を闊歩するという出で立ちは
時代の逆行を思わせます。

明治政府の改革は、鹿児島へは
少しも及んでいないかに見えました。

実家に帰った嘉顕は、父・宗行に茶を点ててもらいます。
しかし、父に教えてもらった鹿児島の実状は
抹茶のようにはふんわりと甘くはありませんでした。

鹿児島は今、中央政権への不満で爆発寸前でありまして、
特に、英雄・西郷隆盛を追い出した形の大久保への評判は
かなり悪いわけです。

宗行は親ごころから、
街中を出歩かないようにと嘉顕に忠告しておきます。
ただ、かく言う宗行も、中央政権に対しては
深い怒りを持っているようです。

翌朝、嘉顕は西郷の元へ訪れてみますが、
誰とも対面しないと追い返されてしまいます。
「内務省の苅谷とお伝えください」と真っ向からぶつかってみますが、
内務省と聞いただけで、取り次ぎの者は殺気立ちます。

もし、ここで
“司法卿・江藤新平の下におった苅谷です”などと言えば、
江藤は政府に反旗を翻した人物だけあって、
少しは対応が違うような気がするのは……気のせい?


嘉顕は、思い切って宗行に
母の和哥と一緒に東京に住まないかと提案してみますが、
鹿児島の土地を捨てたくないとあっけなく断られます。

そればかりか、
西洋化によって日本人の心をなくしてしまうだの
廃刀令で武士の魂をなくしてしまうだの
民衆の力を削いで政府だけが力を持とうとするだの、

宗行の政府への怒りに火がついたこともあって、
珍しく親子言い合いの喧嘩になってしまいます。

このままでは政府は、鹿児島に兵を送ることになるという嘉顕に
温和な宗行は声を荒げます。
「政府が間違うちょるとはちっとも思わんとか!」
「おいは断じて、鹿児島が間違うとると思いもすッ!」

そんな時、和哥は嘉顕に難題を突きつけます。
「もし政府が薩摩を攻めるようなことがあったら、
お前は戻って、父上と一緒に戦うてくいやっとじゃろうな。
父上に弓を引くようなこと、ごわはんじゃろな」


嘉顕は、父母が丹誠込めて造った畑で鍬を手に耕します。
そこに、思いもかけぬ知らせが舞い込みます。
「今、おまんさぁの家に、西郷先生がお見えじゃっど」
親子して大急ぎで走って、慌てて家に戻ります(笑)。

西郷は、大久保からの手紙を読み終えると
士族たちに乗せられて政府に対して
反乱を起こす気はないと断言します。
嘉顕は胸を撫で下ろしますが、

ただ、逆に士族たちを抑え込むつもりもないとも言い、
大久保に伝えるように言います。
「おいはおいなりに、良かと思うた道ば歩いていく」

その西郷が帰り、苅谷家では興奮が冷めやらぬ感じです。
嘉顕は宗行の腰をマッサージしながら、
千代との縁談話を打ち明けます。
(ちなみに、宗行が江戸に来た際に千代とは顔を合わせています)

しかし、会津の下女と聞いて和哥は難色を示し、
宗行も「いかんな」と途端に口を閉ざします。

ついに父母は理解してくれませんでしたが、
嘉顕の出発間際、和哥は
まずは会ってみてからと譲歩してくれました。

嘉顕を乗せた船は鹿児島から東に向かいますが、
途中で鹿児島に向かう船とすれ違います。
その船には、東京警視局の中原ら
鹿児島出身の警察官20数名が乗っていました。

表向きは鹿児島への里帰りでしたが、
その実は、詳細な鹿児島偵察という任務を帯びていました。


東京に戻った嘉顕は、
鹿児島の許しが出なかったことを千代に打ち明けます。
千代も、平沼銑次の許しは出ないままです。

嘉顕は、翌3月3日に式を挙げることを千代に伝えます。
ただ、それまでの間にも銑次への説得は続けることにします。

銑次はもんに思い切って相談してみます。
もんは嘉顕も千代も知った数少ない人物ですが、
意外にも「いいじゃありませんか」と賛成します。

銑次は、16歳で形ばかりの結婚をし
その許嫁は会津戦争で落命したこともあって、
千代には本当に幸せな結婚をしてもらいたいという
兄としての気持ちがあるようです。

「そんなものなの、きょうだいなんて」
こちらが思っても結局は損してしまう、と
ダメな弟を持つ姉は自嘲しています。


雨の中を、陸軍が行進していきます。
その中に鉱造の姿があったわけですが、
龍子も鉱造の姿を見つけ、見つめ続けます。

鉱造も龍子を見、何か言いたげですが
それはついにかなわず。

結婚間近の妹とは違って、
こちらの恋バナは、しばらく別れ別れになりそうです。


明治10(1877)年1月29日、
政府は鹿児島にあるいくつかの火薬庫から
弾薬を次々と運び出し、引き揚げようとします。

しかしそれが鹿児島士族たちに露呈すると、
それがかえって刺激することになり、
彼らの火薬庫襲撃に発展します。

西郷は、事前にそのことを知れば
当然抑えに奔走したかもしれませんが、
すでに起こってしまっている以上、
西郷は何一つ非難を浴びせませんでした。

重い決断をせざるを得ません。
「もう、これまででごわす」


作:山田 太一
音楽:宇崎 竜童
語り:和田 篤 アナウンサー
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[出演]
菅原 文太 (平沼銑次)
大原 麗子 (もん)
大竹 しのぶ (平沼千代)
永島 敏行 (平沼鉱造)
岸本 加世子 (龍子)
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鶴田 浩二 (大久保利通)

沢村 貞子 (苅谷和哥)
中村 富十郎 (西郷隆盛)

柳家 小さん (車屋の親方)
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丹波 哲郎 (松本英吉)

千秋 実 (苅谷宗行)

加藤 剛 (苅谷嘉顕)
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制作:近藤 晋
演出:重光 亨彦

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