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2013年12月10日 (火)

プレイバック獅子の時代・(47)別離

高松凌雲の建てた鶯渓病院が、9月13日の台風によって倒壊したことを
秩父にいる平沼銑次と松本英吉が知ったのは、それから8日後。

英吉が秩父から運んで来て凌雲に看てもらっていた村人ですが、
一旦避難させた後上野の病院に託そうとします。
しかしその病院が預かりを断って来て、困惑しているわけです。
銑次は、病人の家族と英吉とともに上野へ向かいます。


もんは、浅草の瑞穂屋に預けてあります。

もんには、起き上がる余力すらありませんが
銑次はわざと明るく振る舞って、元気づけます。
嬉しさのあまり、泣き出すもん。

銑次は凌雲に、もんの病状について真っ正面から聞いてみます。

凌雲によれば、病気は見事に快方に向かいつつあったのですが
先日の台風でひどく濡れ、一気に悪化してしまったとのこと。
大金をはたいて買えるような薬も、存在しないそうです。

凌雲は、できるだけもんのそばについているように伝えます。
手をついて、もんを頼む銑次です。

それからは、銑次は瑞穂屋に残り
もんへの献身的な看病を続けます。
卵粥をつくって食べさせ、洗濯も買ってでます。

ある夜、手ぬぐいを濡らしてもんの額に乗せようとすると
もんがうわ言を言っています。
「キョウヘイ」
……無論、ただ一人の弟の名前です。

弟は立派にやっとるぞ、とだけ言う銑次は
少し複雑な表情です。


卯三郎が100円を差し出してきました。
借りた480円のうちの一部というわけです。

銑次は、借金を立て替えたことはあっても
卯三郎には直接貸した覚えはありません。
そういう意味では、卯三郎は銑次から金は借りていないのですが
銑次が卯三郎のために立て替えたわけですから、
受け取ってほしいのです。

しかし、銑次は受け取りません。

ただ、その100円を元手に病院再建の費用と考えれば
銑次も気持ちよく受け取れます。
銑次は、卯三郎に感謝しながら金を懐に入れます。


もんの病状が回復して来ている、と凌雲は笑います。
脈も正常だし、何より顔色がすこぶる良いのです。
「銑次薬だ」
思わず微笑むもんです。

そんな凌雲は、貧困の病人を相手をするのはしばらく止め
身軽になって、政府に働きかける運動を続けようと考えています。
よって、銑次が差し出した100円は受け取れません。


福島県は東日本で自由党が最も活発な地域でした。
そこへ、薩摩出身の三島通庸が県令(県知事)として乗り込み
「火付け・強盗と自由党は一匹も置かぬ」と豪語した三島は
自由党員に対する弾圧を開始。

会津で、県令と自由党の争いに発展します。

パリ万国博覧会から旧知の仲である伊河泉太郎は
その争いの応援に駆けつけるため、
会津出身の銑次を瑞穂屋に訪ね、仲間に誘います。

「断る」
銑次には、苦渋の決断でした。

そんな銑次と伊河の会話を立ち聞きしてしまったもんは
床上げを早め、銑次の介抱が必要ないというアピールをします。
もちろん、銑次は慌ててやめさせるのですが(^ ^;;)


浅草新福亭という者たちが
ヘラヘラ節を踊りながら街中を進んでいきます。
そののぼりを持っている小此木恭平は
銑次の姿を見かけると追いかけていき、声をかけます。

銑次は、もんの弟の成り下がった姿を見て
もんに会わせるわけにはいかないと一発殴ります。


「しかるにだ諸君! むしろ人民の権利を主張するもの……」
警棒を持ったいかつい警察官たちが取り囲む中で
立会演説会が開かれております。

苅谷嘉顕は、努めて民間の演説会場をはしごしていました。
多くの弁士たちが、国会開設、憲法発布について論じ
なかには、嘉顕が納得できる意見もあります。

しかし、前方に座っていた警察官が合図を送ると
囲んでいた警察官が弁士に近寄り、強制的に連行していきます。
そんな排除のやり方に不満顔の嘉顕です。


政府に働きかけた土地の譲り受けが失敗に終わり
凌雲は酒をあおっています。

やろうとしているのはとてもいいことなのですが、
凌雲が幕府方として活動して来たことが
ダメになった理由なのだそうです。

有力政治家にも助けを借りていったのですが
よくよく考えれば、凌雲が声をかけたのは幕府方なので
結局は意味のなかったことなのです。

一度は諦めかけた凌雲ですが、銑次の言葉で
再度チャレンジしてみることにしました。


そのころ、もんは廊下で激しく咳き込み
倒れてしまいます。

瑞穂屋の女中からの知らせで銑次は瑞穂屋へ急ぎます。

「銑さん……死にたくない……」
もんは、虚ろな表情になりながら
銑次の手を固く握って昏睡。

大病というのは、時として急に良くなることもあります。
もんが持ち直していたのは、全てもんの銑次への思いです。

「誰か知らせる人はいねえかなぁ」
静かに言う凌雲に、何とかしてくださいと
銑次は頭を下げるしかありません。


翌朝。

薄れゆく意識の中で、
銑次に囁きます。

「ありがとう……」

何度ももんを呼ぶ銑次の大声で気づいた凌雲と英吉は
もんの寝床に駆けつけます。

銑次は、急ではありますが花嫁衣裳を準備してもらい
もんと祝言を挙げることにしました。

その間に、恭平を呼びに人をやります。

恭平が瑞穂屋にたどり着いた時には、
もんは薄化粧を施し、花嫁衣裳に身を包み
銑次に抱かれていました。

恭平の呼び声に一瞬目を開けるもんですが、
そのまま旅立ちます。


思い出されるのは、もんの笑顔よりも
二人の仲を無理矢理引き裂かれたときの
もんの涙。

でも、いつもそばにいました。

もんの一途な想いが、
銑次の脳裏を横切ります。


作:山田 太一
音楽:宇崎 竜童
語り:和田 篤 アナウンサー
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[出演]
菅原 文太 (平沼銑次)
大原 麗子 (もん)
市村 正親 (小此木恭平)
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丹波 哲郎 (松本英吉)

尾上 菊五郎 (高松凌雲)
村井 国夫 (伊河泉太郎)
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大滝 秀治 (甚助)
児玉 清 (瑞穂屋卯三郎)

加藤 剛 (苅谷嘉顕)
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制作:近藤 晋
演出:清水 満

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