プレイバック利家とまつ・(05)まつの大ぼら
まつに似ておろう──。
まつは、前田利家が父・前田利昌からもらったという
勝軍地蔵に向かい、手を合わせます。
戦いが終わったとはいえ、利家は未だに勘当の身です。
尾張領内の掘建て小屋で、まつと幸、乳母のうめとが
共同生活を送るのは相変わらず。
そこに藤吉郎がちょくちょく様子を見にきてくれています。
ひとまず利家はこの家に戻って来ているので、
付き従っている村井長八郎もあばら屋にいて
何やら縫い物をやっているようです。
そして弟の佐脇良之もいるので、
今日はいつもよりも人口密度が高くにぎやかです。
今日は珍しく柴田勝家が来てくれたので
父が卒した報告を入れます。
前田家は長兄の前田利久が継ぐことになりましたが、
織田家に仕える利家がこんな状態なので
勝家に、前田家のことをよろしくと頼み込みます。
「首取り足立?」
勝家はまつに、足立六兵衛という
身の丈は1丈(3m)、目方は100貫(375kg)の
大男の話をします。
当然、まつは大きい目をさらに大きくしてビックリ(^ ^)
それだけの大男であれば、いったんナタを振るえば
敵兵の首がまるで花火のようにポンポン! と……。(勝家談)
「私、首取り足立に決めました」
面白おかしく語っていた勝家の口さえも止まらせる
まつのこの言葉は、夫に足立を討ち取ってもらって
織田信長に勘気を解いてもらおうという魂胆です。
いくら利家でもそりゃ無理だと勝家やうめは引き止めますが
まつは俄然ヤル気です。
実家・荒子城に向かって
利家とまつ、長八郎の三人が歩いていると
荒子領内で滝川一益の軍勢に行く手を阻まれます。
普段なら、大声を上げて立ち向かっていく利家ですが
今日はなぜか冷静です。
前田の領内になぜ滝川軍がいるのか
不思議でならないといった感じでしょうか。
守備の兵士に聞けば、利久の妻の子は
一益の甥の滝川益氏という者の子で
利久の妻に頼まれてこの周辺を警備しているそうですが……。
「とんと意味がよく分かりませぬ」(長八郎談)
ともかく、無事に荒子城に入った三人。
利久の膝には、利久の妻の連れ子である慶次郎が
無邪気に遊んでいます。
利久やたつによれば、要するに
益氏の妻だった女が利久に再嫁したというわけです。
滝川家はそもそも忍びの者の家ということもあって
たつは“あんな女狐!”と、その子の目の前で叫びます。
そういえば滝川の軍勢に囲まれたとき、ひとりの女狐が
怪しげに微笑んで飛んで跳ねて行ってましたね(^ ^;;)
たつ、利家の三番目の兄・前田安勝、家臣の奥村家福、
女狐──つねを利久の嫁に迎えることには反対ですが、
荒子に着いたばかりのまつも、その輪に加わります。
利家は、つねが前田家当主の妻として適任かどうかは
分かっていながらも、それをあえて口にせず
田畑を耕し米を収穫する生真面目な利久が
恋をして女に夢中になることは喜ばしいことだと言います。
織田軍が美濃と戦になるため、その準備に勤しんでいる頃
利家と長八郎は美濃に前乗りしています。
大雨で川の水が増水し、向こう岸に渡れないと
二人は雨宿りして飯にすることにしました。
しかし、長八郎に渡された握り飯は1個です。
利家はそれを半分に割り、長八郎に渡します。
「貧乏で申し訳ない限りだ」
それを後ろで聞いていたのか、“美しい主従の様子や!”と
寝ていた大男がムクッと起き出して
二人にそれぞれ大きな握り飯を差し入れします。
「怪しい者ではない、わしは足立六兵衛という者だ」
えっ!! とのけぞる二人(笑)。
利家や長八郎に比べると、確かにデカイです。
足立が持つ太刀も、重すぎて長八郎には持ち上げられません。
永禄3(1560)年6月、
織田信長は長良川を渡って美濃に攻め込みますが、
雨で増水した川が、織田軍の侵出を阻みます。
長良川と木曽川に囲まれた場所に
軍勢の拠点となるべき砦があれば
幾分かは戦がしやすくなることは誰もが承知していますが、
敵陣の目の前でゆっくり建設する余裕もありません。
一番に名乗りを上げた秀吉は納戸役だからと一蹴され
良之も左腕を怪我して使えず、更に無理だということで、
内蔵助という名を与えられた佐々成政に、
その大役を任せてみることにしました。
その成政が、はると祝言を挙げることになりました。
ま、ふくの反対は次第に呆れに変わり
母としてはおもしろくないと思いながらも
成政の妻として認めたのかもしれません。
まつは、利家が勘当中なので
人目につかないようにこっそりとお祝いに出かけるそうです。
信長は、まつの心根を褒め称えわずかながら金子を与えます。
桶狭間合戦の間、
城中に詰める女たちの動揺をまつが抑えたということで
金子はその褒美というわけですが、まつは首を横に振ります。
「首取り足立を討って勘当を許していただくときに頂戴いたします」
吹いたな、まつ──。
信長は、もし足立を討ち取った暁には
勘当を解いて300貫の加増を約束します。
信長に身を見せないために、小屋の中で平伏していた利家は
去ってゆく信長と勝家に聞こえるように礼を述べます。
「早くおねとサルと一緒の祝言をいたせ! ワシの手でやろう」
それは利家に、早く這い上がって戻って来いという
信長なりのメッセージでありました。
翌日、夜にこっそりと比良城に赴いた利家とまつは
藤吉郎が贈った豪華なご祝儀に口を開けて驚きつつ、
夫婦で摘んだなでしこの花を成政とはるに手渡します。
心の贈り物に、涙する成政とはるです。
永禄4(1561)年5月、美濃の斎藤義竜が急死。
信長はその時を逃さず、
5月13日、清洲から美濃へ攻め込みます。
利家も、信長軍の元に馳せ参じます。
戦場で、足立の姿を見つけた利家は
名乗りを上げて足立に向き合います。
「あいよ! どこからでもかかって来い!」
利家と足立の一騎打ち。
得意の槍を払われ、落馬した利家に
刀を振り回しながら足立は容赦なく向かってきます。
どうなる利家──。
永禄4(1561)年5月、
美濃森部の戦いが行われる。
慶長3(1598)年8月18日、
太閤・豊臣秀吉が波乱の生涯を閉じるまで
あと37年3ヶ月──。
原作・脚本:竹山 洋
音楽:渡辺 俊幸
語り:阿部 渉 アナウンサー
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[出演]
唐沢 寿明 (前田利家)
松嶋 菜々子 (まつ)
反町 隆史 (織田信長)
香川 照之 (木下藤吉郎)
酒井 法子 (おね)
天海 祐希 (はる)
山口 祐一郎 (佐々成政)
竹野内 豊 (佐脇良之)
中条 きよし (奥村家福)
的場 浩司 (村井長八郎)
田中 健 (佐久間信盛)
梅沢 富美男 (丹羽長秀)
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草笛 光子 (なか)
池内 淳子 (ふく)
八千草 薫 (たえ)
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松平 健 (柴田勝家)
三浦 友和 (前田利久)
名取 裕子 (つね)
赤木 春恵 (うめ)
加賀 まりこ (たつ)
菅原 文太 (前田利昌(回想))
丹波 哲郎 (井口太郎左衛門)
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制作統括:浅野 加寿子
演出:鈴木 圭
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