プレイバック黄金の日日・(07)琉球丸難破
元亀元(1570)年5月20日・千草峠──。
杉谷善住坊が待ち構える場所に向かって
何も知らない織田信長が徐々に近づきつつあります。
狙うシミュレーションを繰り返しつつも
善住坊は手が震えて脂汗も出てきました。
緊張が高まります。
善住坊を止めようと堺から急行した助左は
おそらく善住坊が焚いたと思われるたき火の後を発見。
そう遠くには行っていないはずです。
懐から羅針盤を取り出し、方角を確認して行きます。
信長が来ました。
引き金に指をかけます。
「善住坊!」
ようやく追いついた助左が大声を上げると、
善住坊はそれに驚いて引き金を引いてしまいます。
弾は信長の右肩あたりをかすめ、
身体への命中はしませんでした。
助左に引きずり倒される善住坊は
なおももがいて戻ろうとしますが、
助左はそれを許さず、手を取って逃走します。
──現場に残された、火縄銃。
堺の代官所で、松井有閑と今井宗久が向き合います。
現場に残されていた火縄銃が
今井の鍛冶場で作られた火縄銃に間違いないと確認した上で、
有閑は、それが信長狙撃に使われた事実を明かします。
宗久は衝撃を隠しきれないまま今井屋敷に戻ってきますが、
そこには、荷駄隊を放り出して逃げ帰って来た今井兼久が
悠長にもワインを飲んでいました。
兼久に平手打ちを食らわせた宗久ですが、
兼久の口から思いもかけぬ言葉が発せられます。
「信長狙撃を企てたのは六角承禎、撃ったのは杉谷善住坊」
今井の鍛冶場で作られた鉄砲が悪用されただけであれば
誰かに盗まれて使われただけだと逃げ道を作ることもできましたが、
信長狙撃に直接加担した人間が今井の奉公人であれば、
これはもう……今井はピンチです。
怒りを露にする宗久に、美緒は
宗久が取り乱せば今井が滅びると落ち着かせます。
そして今井を守るため、美緒は
兼久と夫婦になる決意を固めます。
宗久は、石川五右衛門に善住坊探索を命じます。
善住坊は、北ノ庄村の
今井の元奉公人のしまのところにいました。
堺の町を包囲した信長に茶器を届けるために
芥川城へ向かう途中でかくまってもらったところです。
助左はしまに善住坊の身を託すと
そのまま堺に戻って行ってしまいます。
善住坊も堺に戻りたがりますが、堺には織田の代官所があり
町中に織田の目が光っておりますので、危険です。
狙撃の相手は誰か聞いていなかった善住坊は、今更ながら
とんでもないことをしてしまったと悔やんでいます。
6月19日、岐阜で軍勢を立て直した信長は
3万の軍勢を率いて浅井長政を攻めるべく近江へ。
28日、織田・徳川連合軍29,000と
浅井・朝倉連合軍18,000が姉川で激突します。
午前6時に始まった戦も午前10時に最高潮に達し
トータル8時間にも及びます。
そして、浅井・朝倉連合軍の敗北に終わります。
宗久は五右衛門を再び呼び出し、
北ノ庄村のしまと娘の様子を見て来てこいと命じます。
「親子ともどもこの堺に引き取りたいと、そう伝えてほしい」
しまの家に戻って来た助左ですが、
家にいたのは善住坊のみで、しまたちの姿が見当たりません。
どうやら本願寺の命令で伊勢の長島へ移らされたようです。
琉球丸が来月19日に出航することが決まったので、
助左はそれを善住坊に伝えに来たのですが、
乗組員として堂々と乗船するわけにもいかないので
積み荷の中に紛れて乗り込むしかなさそうです。
その時、五右衛門は
家の屋根に上って中での会話を全て聞いていました。
五右衛門はそれをさっそく宗久に報告しますが、
助左はとんでもないことを考えるヤツだ、と笑います。
下手に動かれて捕まってしまっては事は重大なので、
助左の計画通りにさせるため
しばらくは善住坊の身は助左に任せることにします。
兼久との婚儀は来春ということになりました。
今井のためという彼女の冷静さは愚息兼久にはない部分で、
宗久とすればそれを高く買ったのかもしれません。
しかし兼久は堺に連れ帰った梢にぞっこんで、
障子越しに梢を押し倒すところを見てしまった美緒は
複雑な表情を浮かべたまま、来た道を引き返します。
琉球丸出航の前夜、美緒は助左を呼び出して
兼久と夫婦にさせられる自分の状況を全て話し
自分も船に乗せてほしいと懇願したのですが、
人の良い助左が首を横に振るばかりです。
何か他に事情があるに違いありません。
まさか信長狙撃の犯人である善住坊が乗っているというのは
口が裂けても言えることではないのですが、
問いつめても口を割らない助左に絶望したか、
「諦めました」とため息をつきます。
翌朝。
助左や善住坊を乗せた琉球丸は、大海原へ出航して行きます。
それを寂しそうに見送る美緒です。
……というか、なぜか五右衛門も乗船しているんですけど(笑)。
酒樽の中に善住坊がいるのはお見通しである宗久は
五右衛門に船に乗らせ、琉球に到着する前に
誰にも気取られぬように始末するように命じたわけです。
琉球丸の大きさ 千二百石(約100トン)
乗組員数 二百名
琉球までの日数 平均四十日
日本からの輸出品
銅、鉄、屏風、蒔絵道具、小袖、小麦粉、酒等……。
貨物室に忍び込んだ五右衛門は
それらしい酒樽を見つけてトントントンと合図します。
善住坊は助左が様子を見に来てくれたと思って
何の用だ? と笑顔を見せますが、目の前にいるのは五右衛門です。
ひいいい! と恐れおののく善住坊。
宗久に善住坊を守れと言われたとごまかす五右衛門ですが、
善住坊は、五右衛門が宗久に言われて
自分の命を奪いに来たことぐらいすぐに察しがつきます。
穏やかな海も、次第に嵐に変わります。
五右衛門が様子を見に来てみると、
助左は──船の底で身体を震わせていました。
カミナリが大嫌いのようです。
「それでよく水夫になりたいと言えたもンだな!」
五右衛門は笑って出て行きます。
そして、貨物室の善住坊のもとへ。
手には刀……。
甲板の上では、荒れ狂う波に足元をすくわれ
落雷で柱が折れて落ちて来るありさまで、
助左は甲板の上では無力です。
そして甲板の下、貨物室では船に揺られながら
五右衛門と善住坊の争いが始まっていました。
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元亀元(1570)年6月28日、
近江国浅井郡姉川河原で
織田・徳川連合軍と浅井・朝倉連合軍が激突する。
慶長3(1598)年8月18日、
太閤・豊臣秀吉が波乱の生涯を閉じるまで
あと28年1ヶ月──。
原作:城山 三郎
脚本:市川 森一
音楽:池辺 晋一郎
語り手:梶原 四郎
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[出演]
市川 染五郎 (助左)
栗原 小巻 (美緒)
林 隆三 (今井兼久)
川谷 拓三 (杉谷善住坊)
根津 甚八 (石川五右衛門)
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高橋 幸治 (織田信長)
竹下 景子 (しま)
花沢 徳衛 (才蔵)
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津川 雅彦 (津田宗及)
志村 喬 (能登屋平久)
丹波 哲郎 (今井宗久)
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制作:近藤 晋
演出:岡本 憙侑
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