プレイバック黄金の日日・(08)呂宋(ルソン)島漂着
晴天。
穏やかな海。
キレイな浜辺に助左は打ち上げられています。
しばらく気絶していましたが、目を覚ましました。
助左の脳裏に、
昨晩の荒波の映像がフラッシュバックします。
「うぬが船が沈む時は、船長も一緒に死ぬ!」
船が横に大揺れし、海に投げ出された助左は
五右衛門や善住坊の名を叫びながら、気を失ったのです。
ここは? と辺りを見渡しますが、
頭上には大きなヤシの木が何本もそびえ立ち
見たこともないような光景が広がっています。
「どこなんだここは……」
元亀元(1570)年10月、助左は
海流に運ばれて南海の孤島に漂着します。
ルソン島の北にあるバタン島です。
助左の声に気づいた善住坊は
海辺の岩の間からひょっこりと顔を出しますが、
何だか様子がおかしいです。
助左は善住坊の元に行ってみますと、
現地の男たちに囲まれていました。
侵入者──助左や善住坊──に立ち向かう
リーダー風の男は、ハギビス。
ハギビスは、いかだに乗ろうとしていた
ボコス族族長のラバ・ガボニに侵入者の存在を知らせます。
そのまま彼らに連行された助左らは
洞窟の中に閉じ込められ、監禁されてしまいます。
このままでは死ねない、と
見張りがついている出口とは真逆の
洞窟の奥の方に進んでいくふたりは
新たに小さな出口を発見しますが、
その出口の手前に、歌を歌っている少女を見つけます。
トンド族王女のマリキットです。
涙を流している彼女は、およそ
戦の人質となってここに監禁されているのでしょう。
しかし、助左と目が合ったマリキット王女は
彼らを敵とみて急に脅え出します。
自分たちが敵ではないと知ってもらうために、
助左はまるで赤子をあやすかの如く
ベロベロバーとやってみたり、曲芸を披露したりしてみますが、
全く理解してもらえません(汗)。
ただ、おかしなことを真顔でやり続ければ
いつかは意思も伝わるというもので、
いつの間にかマリキット王女はキャッキャッと笑っています。
目の前の難関はなんとかクリアしましたが、
当初の目的であった、洞窟からの逃亡は難しくなりました。
マリキット王女を置いて逃げるわけにはいきません。
「逃げる時は、この子も一緒だ」
助左がバタン島に漂着する5ヶ月前、
マイニラは海軍総督レガスピ率いるイスパニアに猛攻撃を受け
ルソン島に頻発していた部族間抗争も影響してか陥落。
ボコス族とトンド族の争いも、そうした部族間抗争の一つでした。
運命共同体となっている3人は、お互いの名前を覚え合い
距離は少しずつ縮まりつつあります。
ただ助左は、美緒を船に乗せなくて
本当に良かったと思っています。
美緒は、未だに琉球ゆきの夢を諦めていませんでした。
モニカに強引に頼み込み、
小西家の船が来月琉球へ向かうという情報を入手します。
小西家の若頭領・弥九郎に会うのは、
宣教師とともに京へ赴いたとき以来2度目です。
商いの一巻として琉球に行くなら
大いに手助けしますという弥九郎ですが、
事前にモニカから聞いていたのとは事情が異なり
“父親の許しを得ずに”“ひとりで”琉球に渡ると知り、
弥九郎は答えに窮しています。
7〜12歳ぐらいの女の子たちが100人以上人買いに売られ
今はそれぞれが行先も分からずバラバラになってしまいました。
うち、堺に戻って来たのは美緒と灯台守りをするお仙の2人のみです。
美緒は、自分と同じ運命を辿った少女たちの消息を調べて
堺に連れ戻したいと考えているのです。
「海を渡りたいと思われたのは、それだけですか」
どこかへ逃れたいという気持ちがあるのではないか?
鋭く質問する弥九郎に、美緒はその全貌を明らかにしないまでも
おおよそのあらましを正直に弥九郎に話します。
船乗り(=助左)に頼み込んで断られたこと、
無理強いせずに諦めてしまったこと。
しかし渡航の気持ちが大きく膨らんだ今なら、
もっとゴリ押しして乗せてもらったかもしれません。
美緒はなぜそうしなかったかと、後悔しきりです。
夕日がまさに落ちようとしている頃、
「お前たちの仲間を連れて来た」と
洞窟にひとりの男を放り投げます。
石川五右衛門です。
情報通の五右衛門によれば、
頭は戦に出て不在ですが明日にも戻ってくるようです。
そうなれば、人質のマリキット王女とともに
自分たちの命も奪われる可能性は非常に高いです。
助左は、このマリキット王女だけでも
無事に逃がしてやりたいと強く思いますが、
その手段方法がありません。
そして翌朝、ホラ貝が鳴り響きます。
戦から頭が戻って来たようです。
いよいよだ、とふんだ善住坊は洞窟の中で大声でわめき散らし
驚いて洞窟の中に入ってきた見張りたちを五右衛門が仕留めると
助左はマリキット王女を外に誘導し、逃げ出します。
後から善住坊がついてきて、3人で逃走します。
しかし兵たちが追いついて来て、
3人は岩陰に隠れてやり過ごそうとします。
「ここにはおらん。そっちを探せ」
追って来たハギビスは、彼らの姿がそこにあるのに気づきつつ
気づかないフリをして味方の意識を他に逸らさせます。
……と、善住坊のすぐ脇に矢が突き刺さります。
これは敵兵の攻撃ではなく、見張りたちを仕留めた五右衛門が
木の上から逃げる方角を示したものと思われます。
逃げる途中で川があり、細長いいかだが浮かんでいるのを見て
助左と善住坊はそれにマリキット王女を乗せ、いかだを出します。
やがて夕方になり、
日が落ちてあたりは真っ暗に。
漕ぎ疲れた助左と善住坊は、手を止めて
しばらく休むことにしました。
マリキット王女は、自分の名前を良いながら自分を指さし、
またも自分の名前を言って夜空を指さします。
「そうか……マリキットというのは星のことか」
織田方が、信長狙撃犯を
血眼になって追っていることを知った今井兼久は
捕らえられる前に善住坊を探し出したいと
必死の捜索を続けていますが、
宗久は今すぐにそれを止めさせます。
善住坊は助左と琉球丸に乗って堺を脱出しているのです。
しかも、同乗させた五右衛門の手で始末されているはずなので
証拠は上がりようがありません。
渡航して逃がすという妙案を思いついた助左を
このような息子が欲しかった、と言う宗久ですが、
これはこれで実子の兼久の反発を食らいます。
そこに、小西弥九郎の来訪を受けます。
「琉球丸が難破しました」
船長や助左も命を落としたかもしれない。
そう考えると、敬うキリストの心が
ますます分からなくなる美緒でした。
翌朝も引き続き船を漕ぎ続ける助左と善住坊ですが、
ようやくルソン島にたどり着きます。
マリキット王女の帰還を祝って、
島民はみな出てきて祝福。
トンド族族長ラハ・ラカンドーラは
マリキット王女を出迎え、再会を喜びます。
「あの日本人が助けてくれたの」
マリキット王女が指を指すその先には、
疲れ果てた助左と善住坊の二人が。
二人とも、達成感に満ちあふれて照れ笑いしています。
しかし、ラカンドーラの口からは、
思いもかけぬ言葉が飛び出します。
「逃すな!」
複数の男たちに囲まれ、腕を捕まれたふたりは
ラカンドーラの前に連れ出されます。
マリキット王女は、なぜ父が怒っているのか
自分の命を救ってくれた日本人をなぜ捕らえようとしているのか
理解できずにただ立ち尽くしています。
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元亀元(1570)年5月24日、
マイニラ(=マニラ)に入った植民者のスペイン人たちが
現地人たちの兵を敗ってマイニラを制圧する。
慶長3(1598)年8月18日、
太閤・豊臣秀吉が波乱の生涯を閉じるまで
あと28年2ヶ月──。
原作:城山 三郎
脚本:市川 森一
:長坂 秀佳
音楽:池辺 晋一郎
語り手:梶原 四郎
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[出演]
市川 染五郎 (助左)
栗原 小巻 (美緒)
林 隆三 (今井兼久)
川谷 拓三 (杉谷善住坊)
根津 甚八 (石川五右衛門)
夏目 雅子 (笛(モニカ))
ビック・バルガス (ラカンドーラ)
プリンセス・アキノ (マリキット)
ロベルト・アレバロ (ハギビス)
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小野寺 昭 (小西弥九郎)
李 礼仙 (お仙)
花沢 徳衛 (才蔵)
丹波 哲郎 (今井宗久)
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制作:近藤 晋
演出:宮沢 俊樹
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