プレイバック黄金の日日・(12)叡山焼打
泥酔した南蛮人にからまれていた旅の女を助け出し
助左は手を取って走り出します。
そして、杉谷善住坊がお仙に匿われている小船に女を押し込み
追って来た南蛮人の囮(おとり)になるべく、更に先に走り去る助左。
南蛮人はふらつきながら、助左が走る方向へ追って行きます。
灯台のところまで走ってきました。
南蛮人はまだ追って来ています。
意外にしつこいヤツですなぁ。
……と、そこへ現れたのは今井の奉公人・梢。
岩陰から様子をうかがってみると、
見知らぬ男に何やら紙切れを渡しています。
その紙切れは、つい先日
梢が今井宗久の部屋にこっそり忍び込んで
模写した大筒の図面、
そしてそれを手渡した男は、服部半蔵であります。
半蔵は、浅井長政の居城・小谷城を囲んでいながら
織田信長軍が琵琶湖を渡って坂本へ移動を開始したと梢に伝えます。
坂本には天台宗本山の比叡山があり、信長のみならず
織田家家臣の佐々成政・柴田勝家・佐久間信盛・丹羽長秀・
明智光秀・木下藤吉郎らも坂本へ大移動を開始しているとか。
それよりも衝撃なのは、“お役目のために”
今井兼久と通じているという梢自身の言葉です。
まさか……梢は徳川の間者?
お仙の小船に戻った時には、女はいなくなっていました。
何だか狐につままれた感じの助左です。
そしてそのころ、木下藤吉郎の妻・ねねは
今井屋敷を訪問していました。
美緒に蔵の中を案内してもらいながら
さまざまな南蛮渡来のものを見て、目を輝かせます。
ねねは、翌朝に近江の横山城へ向かうことになっているのですが、
その列に助左を加えたいと美緒に伝えます。
織田嫌いの兼久は、ねねが木下藤吉郎の妻と知って
ねねが今井屋敷にいることを代官所に届け出ます。
そしてじきにお出迎えが到着するのですが、
ねねは名残惜しそうに、輿に乗って去ってゆきます。
美緒はねねが願ったように行列の供をせよと助左に命じますが、
助左は、木下藤吉郎のことはよく知っていても、
その奥方のことは全く知りません。
「ところがあちら様は、お前をよーくご存知だったわ」
美緒はイジワルそうに笑います。
翌朝、出発前に助左は
善住坊に「近江へ行って来る」と挨拶。
すると善住坊は、近江へ行くなら
叡山に登ってくれ、と言い出します。
法華堂にホウリンボウという僧が修行しているらしく、
善住坊の小さいころからのなじみ者なのだそうです。
織田信長の狙撃犯(未遂)という肩書きで
身を隠しながら生きている善住坊は、
そのホウリンボウの力を借りて叡山で身を隠したいとのこと。
叡山は歴史がとても古く、信長でさえ手は出せないので
織田に追われる立場の善住坊には絶好の隠れ場所になります。
助左は大きく頷き、ホウリンボウに会いに行くことにします。
ちなみに。
モニカの窮地を救ってケガをした石川五右衛門は
相変わらずモニカの介抱を受けています。
いよいよ出発の時です。
木下藤吉郎の奥方さまは、笠をかぶって馬上の人です。
助左の場所からは後ろ姿しか見えませんが、
とてもおとなしく素晴らしい女性に見えます。
琵琶湖で船に乗り換え、ゆっくりと進んでゆきます。
すると、ねねから助左に呼び出しがあります。
おそるおそるねねの元に向かってみる助左。
「ゆうべはお礼も言わずに消えてもうて許してちょうだいでなも」
その言葉に顔を上げれば、木下藤吉郎の奥方さまとは
あの泥酔した南蛮人から救った旅の女ではありませんか!
旅の途中、助左は
己の夢──ルソンと交易したい──について熱く語ります。
しかし、それも叶わぬ夢と分かり
呑んだくれていたところ、
ねねが南蛮人に絡まれていたというわけです。
ねねは、いっそ今井を辞めて
己が活躍できる場を探すのも手だと言い助左を驚かせます。
夫である木下藤吉郎も、奉公先を今川から織田に変えたことで
今のように活躍場所があるわけです。
しかし、助左は父も母も今井の奉公人でしたので
今井から飛び出すというのはちと難しい話です。
今井の中に属していながら、大海を渡れるチャンスを
じっくりと見定めていくしかなさそうです。
朝廷と将軍と宗門。
中世を支えた3つの柱の1つ、宗門の頂点に君臨するのが
700年の歴史を持つ比叡山延暦寺であります。
平安末期、後白河法皇は意のままにならぬものの例として
“すごろくの賽”“鴨川の水の流れ”“山法師”を挙げています。
その叡山に、真っ正面から挑もうとしていたのが
織田信長なのであります。
光秀は、叡山に立ち向かうというのは
天下への反逆に匹敵するほどの
あまりにも恐ろしいことであるとして異を唱えますが、
「かまわぬ」と信長は聞く耳を持ちません。
狢(ムジナ)が坊主に化けて民を騙してきたわけで、
この辺りで信長自身が大鉄槌を下して
目を覚まさせてやろうというわけです。
助左が、叡山の法華堂に赴き
ホウリンボウに善住坊のことを託します。
ホウリンボウは善住坊を懐かしそうに思い出し
織田に追われる身であれば匿ってくれるでしょう、と
取り次いでくれる約束をします。
しかし──。
辺りには鉄砲の音が断続的に鳴り響き、
火の手が上がります。
横川に陣を敷く藤吉郎のもとには
顔なじみだという僧が命乞いに来ますが
信長の命令のこともあり、
「知らん知らん」と見殺しにせざるをえません。
しかし、やはり落ち着かないのか
立ったり座ったり、とても忙しい藤吉郎です。
読経を続ける僧たちに、問答無用に斬りつける織田の兵。
叡山の長い石段を急いで駆け下りる僧たちも
待ち構える兵たちになで切りにされます。
藤吉郎は、信長の命に背くいけないこととは知りつつも
山から逃げて来た女や子どもらは
そのまま逃がせと蜂須賀小六に命じます。
一方で、明智光秀は信長の命通りに
か弱い女であれ子どもであれ、殺害を命じます。
あたりに響く女の断末魔の声……。
燃え盛る炎の中、助左は
ホウリンボウの名を叫びながら必死に逃げます。
しかし、目の前で斬り倒されてゆく僧を見て
助左は腰が抜けてしまいます。
教会でオルガンを奏でるモニカ。
その真後ろには五右衛門が立っています。
五右衛門の存在に気づいたモニカは
柔和な微笑みを浮かべますが、
刀を置き、黙って近づいて来る五右衛門に
殺気のようなものを感じ、後ずさりします。
モニカを押し倒し
衣服をはぎとろうとする五右衛門。
必死に抵抗するモニカ。
キリスト像が、それを見下ろしています。
ねねが秀吉の陣に到着しました。
ねねは、助左がここまで送ってくれたことを伝え
秀吉に助左を助けるように頼みます。
秀吉は、半ば躊躇しながらも
小六に助左探しを命じることにします。
ホウリンボウの遺体を見つけた助左は
あまりの失望に大泣きし、更に現れた武者に
ガムシャラに立ち向かおうとしますが、
その武者は助左を探しに来た小六でした。
叡山は焼き尽くされ、そのほとんどが焼失。
助左は兵たちに守られ、安全な場所まで送られます。
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元亀2(1571)年9月12日、
織田信長が比叡山延暦寺を焼き討ちする。
慶長3(1598)年8月18日、
太閤・豊臣秀吉が波乱の生涯を閉じるまで
あと26年11ヶ月──。
原作:城山 三郎
脚本:市川 森一
音楽:池辺 晋一郎
語り手:梶原 四郎
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[出演]
市川 染五郎 (助左)
栗原 小巻 (美緒)
林 隆三 (今井兼久)
川谷 拓三 (杉谷善住坊)
根津 甚八 (石川五右衛門)
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高橋 幸治 (織田信長)
李 礼仙 (お仙)
内藤 武敏 (明智光秀)
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緒形 拳 (木下藤吉郎)
十朱 幸代 (ねね)
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制作:近藤 晋
演出:高橋 康夫
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