プレイバック利家とまつ・(29)人質麻阿姫
天正10(1582)年 夏・清洲城──。
前田利家は、羽柴秀吉主導で行われた
清洲会議のやり直しを柴田勝家に主張しますが
当の勝家は、寄り添う市にハートを奪われ
今まで見せて来たような“漢(おとこ)”ではありません。
そこへ、三法師を抱いた秀吉が登場。
わしは認められん、と反発する利家ですが、
勝家も市も、三法師に手をつき頭を下げています。
口惜しや、と利家は秀吉を突き飛ばし、飛び出していきます。
おねは、そんなお怒りモードの利家を呼び止めて一室に誘導します。
まつも村井又兵衛も、同じようにおねに呼び出されました。
一室には、かわいらしい娘御と女性が座っています。
その女性を見て、まつは「あっ」と声をあげそうになります。
女性は、利家の弟・佐脇良之の思い人であった、ゆうです。
(エピソードは第9話「明智病」をご参照あれ)
ゆうは、もともと三河武士の妻であったので
良之との間に出来た子を、佐脇家や前田家に迷惑がかかると
良之の子として産めないことは承知していました。
そして何も言わず、黙って三河に帰ったのでした。
それでどうしてゆうがここにいるのかと言いますと……、
浅井家に嫁ぐお市の供をするために北近江へ向かった良之でしたが、
お市に恋する秀吉が彼女を救出し、我がものにするためには
お側近くに仕える良之がどうしても邪魔だったのです。
秀吉の讒言で良之は織田家への帰参が叶わず、徳川家へ走り
三方ヶ原の戦いで討ち死にしたのでした。
生前の織田信長は、そんな良之を不憫だと思い
その思い人であったゆうに、お市の長女・茶々の
乳母になるように命じたのだそうです。
無論、このことは佐脇家や前田家には内緒で今日まで来ました。
利家もまつも、そのことを知らないでも不思議ではありません。
そう、ゆうの隣に座っている娘御は、その茶々であります。
ちなみに良之が織田家を追われ、三河へ走った後
三方ヶ原で討ち死にするまでの短い間はゆうと夫婦となり、
ゆうが産んだ娘と、さらに生まれた娘と四人で
幸せに暮らしたそうです。
上杉軍に対峙して清洲会議に出席できなかった佐々成政は
自らのこれからのことについて思案しています。
もちろん、わずか3歳の三法師に跡目相続させた秀吉に
反発する気持ちもあるのですが、
秀吉に言いくるめられ、今はお市にぞっこんな勝家にも
成政は何も望めません。
特に、成政や利家、不破光治といった三人衆は
あくまでも信長直属でありまして、勝家の家臣でもないので
勝家についていく! という義理立てをする必要もありません。
「徳川と組むのもひとつの方策じゃ」
さっぱりした表情で、母のふくは言ってのけます。
その徳川家康も、清洲会議のバカバカしさを
大いに感じているところです。
いずれ秀吉と戦になるでしょう、と予見する今井宗久に
まずは甲斐を我がものにしてからだ、と不気味に笑います。
「そのうち、秀吉殿と柴田殿、そのいずれかが消えるであろう」
上杉軍や反乱軍と対する利家は、攻撃に苦戦しています。
つねは、手下の四井主馬とともに天平寺に火を放つので
そのスキに総攻撃をかけて討ち取れと提案。
比叡山焼き討ちにも匹敵することにもなりますが、
苦しいながらも利家はゴーサインを出します。
勝家に呼び出された利家ですが、
恐らくは人質の件だと確信しています。
秀吉のところには実子豪姫がいるので、
何も手を打たなければ利家は秀吉に味方しかねません。
話を聞くまでもなく、内容はやっぱり人質の件です。
ただ、利家から人質を取るからには
秀吉と戦する段取りだけでも聞いておきたいところです。
お屋形さまの百日法要が済んでから。
ただし、そうなれば冬なので雪深い北ノ庄城から動けません。
「戦をするのは……来年かのう」
利家は、百日法要の後などと悠長なことは言わず
佐久間盛政や成政、自分(利家)の軍勢を一つにまとめて
秀吉と戦をするべきだ、と主張。
自分のために働くと言う利家を見て、勝家は涙を浮かべます。
小丸山城に戻った利家は
キレイにおしろいを塗って口紅をつけた麻阿に驚いて
ついつい「遊女のようだ」と言ってしまい、
麻阿をすねさせます。
おしろいと口紅を塗ったのは、
自らではなくつねがさせたのですけど(^ ^;;)
つねは、女心が分かってないわね! と利家を睨みます。
もちろん、まつも(笑)。
人質は麻阿になさればよい、とつねは言いますが
麻阿は良之の子じゃ、という利家の言葉を
すねて側に隠れていた麻阿が聞いてしまいました。
しかし、自分の出自について聞かされて驚く麻阿に
追い打ちをかけるつねの言葉が聞こえてきました。
「麻阿は良之殿が比叡山で拾った子です」
麻阿は、部屋の入口で立ち尽くしています。
先ほどまでの表情が、一変しているので
先ほどの会話が聞かれたことは明らかです。
「私は捨て子なんでしょ!」
飛び出す麻阿を追いかける利家とまつですが、
麻阿は自分の部屋に閉じこもってしまいました。
和平を願う勝家の言葉を伝えに秀吉の元に出向く利家に、
まつは麻阿に人質のことをなぜ言えぬのかと問い詰めます。
まつは、自らが産んだ子たちと分け隔てなく育てて来て
麻阿を捨て子などと思ったことはない、と言います。
その上で、麻阿を良之の子だと言った利家を
目に涙をいっぱいためて非難するわけです。
「麻阿の父親は……あなた様でございましょう?」
わしが悪かった、と非を認めた利家は
いろり端にいる麻阿に話をすべく向かいますが、
賢い麻阿は、状況を察して自ら北ノ庄に行くと言い出します。
どうやら、利家とまつが話し合っている間に
又兵衛が麻阿にこんこんと話をしてくれたようです。
お前は、比叡山の御堂の中で拾われた御仏の子だと。
決して鬼の子ではない、と。
「お前は、私の娘だ」
麻阿は、人質として北ノ庄に向かうことになりました。
天正10(1582)年11月、
柴田勝家は前田利家・金森長近・不破勝光を羽柴秀吉に派遣し、
秀吉との和睦を交渉させる。
慶長3(1598)年8月18日、
太閤・豊臣秀吉が波乱の生涯を閉じるまで
あと15年9ヶ月──。
原作・脚本:竹山 洋
音楽:渡辺 俊幸
語り:阿部 渉 アナウンサー
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[出演]
唐沢 寿明 (前田利家)
松嶋 菜々子 (まつ)
香川 照之 (羽柴秀吉)
酒井 法子 (おね)
天海 祐希 (はる)
山口 祐一郎 (佐々成政)
高嶋 政宏 (徳川家康)
田中 美里 (市)
的場 浩司 (村井又兵衛)
及川 光博 (前田慶次郎)
羽田 美智子 (ゆう)
梅沢 富美男 (丹羽長秀)
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三浦 友和 (前田利久)
名取 裕子 (つね)
林 隆三 (今井宗久)
古谷 一行 (千 宗易)
池内 淳子 (ふく)
松平 健 (柴田勝家)
丹波 哲郎 (井口太郎左衛門)
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制作統括:浅野 加寿子
演出:伊勢田 雅也
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