大河ドラマ軍師官兵衛・(33)傷だらけの魂 〜死を望んだ男が流した涙〜
天正13(1585)年7月、羽柴秀吉はついに関白となり
9月には姓を「豊臣」と改めます。
この年、黒田官兵衛の父・黒田職隆が他界。
官兵衛は、戦なき世はまもなくと
職隆の墓前で手を合わせます。
関白となった秀吉は、石田治部少輔三成、
福島左衛門太夫正則、加藤主計頭清正など
子飼いの武将たちに官位を与え側近として用いていました。
『天下惣無事』を掲げる秀吉は
帝に対し「天下を静謐」にすることを約束し、
各地の大名に、私利私欲による争いをやめるよう命じます。
さしあたって、秀吉に従わない大名はまだまだ多いですが
次の目的は九州島津……という噂です。
とはいえ、蜂須賀小六や小早川隆景、安国寺恵瓊など
戦の戦功があった者は加増され、大名に取り立てられましたが
先陣切って働いたはずの官兵衛には恩賞がありません。
ま、昨年4万石に加増されたこともあるので
今回は、と官兵衛が辞退したことも考えられますが、
井上九郎右衛門が推測するに、他にも理由はありそうです。
「殿のことを快く思わぬ者が、殿下のおそばにおるのでは」
大坂城下の南蛮寺に、官兵衛はふらりと立ち寄ります。
中からはキリシタンたちのキレイな歌声が響いてきます。
この歌はたしか、有岡城で
荒木村重の妻・だしが歌っていたものです。
キリシタンの女性が赤子をあやしているのを見て
官兵衛は、だしにも幼い子がいたことをふと思い出します。
生きていれば、8歳になっているはずです。
浅井長政とお市の遺児・茶々姫は
秀吉が用意させた舞や能には全く興味を示しませんが、
お伽衆の道薫(荒木村重)を見て
有岡城の話をしてほしいと言い出します。
お伽衆とは、求められるまま面白い話をするのがお役目ですので
断る道理はないのですが、それができるか分かりません。
道薫は官兵衛に、自分を見届けてほしいと願い出ます。
黒田屋敷に新たに仕えることになった親子がおりまして、
父親は谷崎新吉、母親はさと。
それぞれ有岡城で鉄砲組、奥方の侍女を務めてきた者たちです。
そして子の又兵衛は、村重とだしの子──。
道薫は、秀吉や茶々、千利休の前で
有岡城での話をする時がやってきました。
信長へ仕官したときのことから
信長を裏切り、高山右近に裏切られて
有岡城を逃げ出したときのことまで話したところで
これ以上は意味がありませぬ、と利休が止めに入り
そうじゃな、と秀吉も道薫に話を止めさせます。
しかし茶々は引き下がりません。
妻や家臣を見捨て、どうして一人生きながらえているのか
それを聞きたくて仕方ないのです。
死にたくても死ねないのです、と答えた道薫は
今度は茶々に逆質問します。
「父母を殺されながら、何ゆえ
仇のもとで生きながらえておられるのです?」
それまで温厚だった秀吉は
鞘を投げ捨て道薫に斬り掛かりますが、
ハハハハ……と笑い出す官兵衛。
己で死にたくても死ねないのならば
秀吉に討ってもらうしかない。
望みが叶いましたな、というわけです。
しかし、話を聞いた茶々は
生き恥をさらして生き続けることこそ
道薫が受けねばならない報いであるとし
殺してはなりませぬ、と秀吉を止めます。
道薫の子・又兵衛は8歳ながら絵を描くことに優れ
将来は絵師になりたいのだそうです。
所払いが決まって大坂を出て行く道薫に
官兵衛は又兵衛を再び会わせ、
又兵衛が道薫を描いた絵を渡させます。
道薫はたまらず又兵衛を抱き寄せ
すまなかった、とだしへの謝罪の念を表します。
「わしはもう一度、生きてみせる」
大坂を去る道薫が官兵衛に約束します。
絵が好きならその道を極めよ、と
又兵衛には1本の絵筆を差し出します。
道薫こと荒木村重は、翌 天正14(1586)年
堺でその生涯を閉じました。
その息子・又兵衛は、長じて岩佐又兵衛と名乗り
後世に名を残す絵師となりました。
──そして。
南蛮寺に足しげく通う官兵衛は、
様子を見に来た右近に微笑みます。
「門は開いておりましょうか」
つまり、キリシタンへの門であります。
それから官兵衛は洗礼を受け
「シメオン」という洗礼名を授かります。
播磨山崎城では、官兵衛がキリシタンになったことは
重臣の栗山善助がもたらしました。
光は官兵衛から、有岡城に幽閉されていたときに
どこからかキリシタンの歌声が聞こえて来て
生きる力を得た、という話を聞かされていたので、
あぁそうだろな、という感覚だったのかもしれません。
光はそこまでビックリしてはいないのですが……、
お福の驚きようはすさまじく、
黒田家の行く末まで案じ始める有り様です。
四国攻めに対する恩賞のお礼言上のため、
小早川隆景が安国寺恵瓊を伴って大坂城を訪問します。
秀吉は二人にプレハブ式の黄金の茶室を見せ
二人は目が飛び出そうになるほど驚きます。
その対面が終わり、秀吉は
島津は天下惣無事には従わないらしい、と
九州攻めの支度にかかるように官兵衛に命じます。
とはいえ、官兵衛から断られたとはいえ
四国攻めの恩賞がないことを
不満に思っているのではないかと秀吉は気がかりです。
領地のために働いているわけではない。
殿下の下、天下が静まることのみを望んでいる。
そう答える官兵衛に、秀吉はついつぶやきます。
「無欲な男ほど、恐いものはないのう」
官兵衛と秀吉の間に、ほころびが生じようとしていました。
天正14(1586)年5月4日、
荒木村重が堺で死去。享年52。
慶長3(1598)年8月18日、
太閤・豊臣秀吉が波乱の生涯を閉じるまで
あと12年3ヶ月──。
作:前川 洋一
脚本協力:穴吹 一朗
音楽:菅野 祐悟
題字:祥洲
語り:広瀬 修子
──────────
[出演]
岡田 准一 (黒田官兵衛)
中谷 美紀 (光)
寺尾 聰 (徳川家康)
松坂 桃季 (黒田長政)
二階堂 ふみ (茶々)
生田 斗真 (石田三成)
田中 哲司 (道薫(荒木村重))
濱田 岳 (栗山善助)
速水 もこみち (母里太兵衛)
高橋 一生 (井上九郎右衛門)
田中 圭 (石田三成)
山路 和弘 (安国寺恵瓊)
──────────
鶴見 辰吾 (小早川隆景)
伊武 雅刀 (千利休)
黒木 瞳 (おね)
竹中 直人 (豊臣秀吉)
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制作統括:中村 高志
プロデューサー:勝田 夏子
演出:大原 拓
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』
第34回「九州出陣」
デジタル総合:午後8時〜
BSプレミアム:午後6時〜
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