大河ドラマ花燃ゆ・(04)生きてつかあさい 〜密航失敗そして父の心と赤ん坊〜
「寅次郎が……寅次郎が……ペルリの黒船に乗り込んだ!」
へなへなと倒れ込んだ父・杉 百合之助の口から出てきた言葉は、
一家を奈落の底へ突き落とすほどの衝撃を与えます。
護送される寅次郎。
小田村伊之助は、寅次郎の乗った竹駕篭に駆け寄り
どうして早まる? 先を急ぐ? と言葉を突きつけます。
真友だと思っていた寅次郎が、
実行前にどうして自分に打ち明けてくれなかったのか。
伊之助は、それがとても心残りです。
寅次郎は、伝馬町の牢に入れられました。
杉家では、寅次郎の暴走を
寸前で止めたと思っていた兄の梅太郎が
叔父の玉木文之進に責め立てられています。
文之進は、もし自分が梅太郎なら
牢に押しかけて寅次郎を討ち、
自分も腹をかき切る! のだそうです。
梅太郎もですが、百合之助も
場合によっては自分も寅次郎の責任を負って
切腹しなければならないかも、と覚悟を決めます。
ご公儀(=幕府)に楯突いて国禁を犯したとなれば、
寅次郎の死罪は免れますまい。
寅次郎の死を待つだけだなんて
イヤです! と文は百合之助に駆け寄りますが、
百合之助は寂しそうに文を見つめ、突き放します。
「そんなら、お前の出来ることをすりゃええ」
長州藩から寅次郎のような不届き者が出たことで
萩の毛利家では、右筆の椋梨藤太が
寅次郎に関わった者は厳罰に処す! と声を荒げます。
「寅次郎は長州の宝ぞ」と毛利敬親がつぶやいたところで
その声はもはや藤太には届きません。
寅次郎は、密航の日のことを
同じ牢屋の男たちに話して聞かせます。
ペルリの国をこの目で見てみたいと
金子重輔とともに真っ暗な夜に黒船目がけて船出しますが、
その船には櫓杭がなく、
代わりにふんどしを結びつけて懸命に漕ぎ出します。
ようやく軍艦ミシシッピ号にたどり着いたふたりは
この船に乗ってメリケン国に渡りたいという気持ちを
伝えようとしますが、彼らは日本の言葉が分からず
自分たちはメリケンの言葉が分からず、全く通じません。
記録係のスポールディングは、通詞・ウィリアムズの乗る
ポーハタン号に行くように勧めます。
“ユア ホープ”キミたちの希望が、あの船にある、と。
疲労困憊の金子を連れて、再度船を漕ぎ出した寅次郎。
やっとの思いでポーハタン号にたどり着きます。
「お頼み申す!」と叫び、船員が甲板から縄梯子を下ろしてくれ、
寅次郎と重輔はそれに飛び移りますが
とも綱を縛っていなかったために、
小舟は流されていってしまいます。
寅次郎たちの要求(と書くと、寅次郎が軍艦乗組員たちを
脅しているようにも思えますが)を理解した通詞・ウィリアムズ。
アメリカに行きたい、学びたいという気持ちは
ペリー提督も大変喜んでいる……のだそうですが、
日本とアメリカの間には条約というものがあり、
寅次郎らを船に乗せては約束を破ることになる、と。
いずれ、日本とアメリカの間で自由に行き来できるようになる。
その時まで待て、とペリーは言っているのです。
すでに国禁を犯し、国を捨てて来ている寅次郎には
“いずれ”だなんて悠長なことは言っていられません。
しかし、軍艦はあと3ヶ月、ココに滞在します。
夢、破れたり──。
密航を企てるなど、死罪に値することは
寅次郎ほどの人間であれば重々承知しているわけですが、
欧米列強は、あの強大な清国でさえ力で押さえつけ
次の矛先がこの日本に向けられていることに気づいた寅次郎は
彼らを迎え撃つためにも、早く相手を知ることが大切と説きます。
そのためなら、この命は奪われてもいい! という考えなのです。
そして、寅次郎の根本には、
どんなに悪い(とされている)ことでさえも
言葉を尽くして相手に分かりやすく説けば
いずれは自分の考えを分かってくれる、と考えているようで、
寅次郎は、わざわざ自ら番所に名乗り出て
国禁を犯したことを告白します。
それで、逮捕されたわけです。
嘉永7(1854)年8月25日、小田村家に長男篤太郎が誕生。
伊之助は、寅次郎救出に奔走していましたが
寅次郎に関する知らせを持って
ちょうど産まれたころに長州に戻ってきました。
国許での蟄居、だそうです。
寅次郎の身柄は、伝馬町の牢から
長州藩江戸屋敷に移され、萩に戻されることになりました。
寅次郎の勇気、熱意に感じ入り、
ペリーが幕府に働きかけてくれたそうです。
その裏には、伊之助の奔走があったのは間違いないわけで
杉家の者たちはみな、伊之助に頭を下げて感謝します。
毛利家では、寅次郎の処分を巡って大紛糾。
江戸ですでに処分が決まって萩に戻って来るというのに
萩で改めて寅次郎を裁かねばならないことに
周布政之助が異論を唱え始めたのです。
どうしても寅次郎を処刑してしまいたい藤太は
長州藩の幕府への忠義を見るために
萩での裁きに注目しているのだ、と主張。
寅次郎と、育(はぐくみ)役たちに厳罰を与えるつもりです。
大紛糾して、
寅次郎に新たに下った沙汰は──野山獄。
野山獄に入ったら、
生きては外に出られないとうわさの獄のようです。
そして百合之助には
育役をなお続けよ、とのお達しであります。
それを伝えに来た梅太郎は、
懐から1通の書状を取り出します。
「父上の切腹願いは、差し戻されました」
10月、寅次郎がようやく萩に戻ってきました。
寅次郎は野山獄に入獄しましたが、
身分の低い金子重輔は、道を隔てた岩倉獄へと収監。
「あんなに旅の好きな子やったのに、
もう二度と外へ出られんとは……」
せわぁない! と勇気づけ、自分自身も励ましていた滝ですが
この時ばかりは、涙を流しています。
書物を読めば、いにしえの人にも会うことが出来る。
寅次郎がそう言っていました。
寅次郎が外を出歩けないのなら
私が寅次郎の手足になる──。
文はそう決意します。
作:宮村 優子
音楽:川井 憲次
題字:國重 友美
語り:池田 秀一
──────────
[出演]
井上 真央 (杉 文)
大沢 たかお (小田村伊之助)
伊勢谷 友介 (吉田寅次郎)
原田 泰造 (杉 梅太郎)
優 香 (小田村 寿)
──────────
石丸 幹二 (周布政之助)
麻生 祐未 (金子ツル)
泉澤 祐希 (金子重輔)
──────────
井川 遥 (高須久子)
内藤 剛志 (椋梨藤太)
檀 ふみ (杉 滝)
奥田 瑛二 (玉木文之進)
長塚 京三 (杉 百合之助)
北大路 欣也 (毛利敬親)
──────────
制作統括:土屋 勝裕
:小松 昌代
プロデューサー:堀之内 礼二郎
演出:渡邊 良雄
◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆
NHK大河ドラマ『花燃ゆ』
第5回「志の果て」
デジタル総合:午後8時〜
BSプレミアム:午後6時〜
| 固定リンク
「NHK大河2015・花燃ゆ」カテゴリの記事
- 大河ドラマ花燃ゆ・(51-6)総集編第四部 後編「二人の再婚」(2015.12.26)
- 大河ドラマ花燃ゆ・(51-5)総集編第四部 前編「いざ、群馬へ」(2015.12.26)
- 大河ドラマ花燃ゆ・(51-4)総集編第三部「女たちの園」(2015.12.26)
- 大河ドラマ花燃ゆ・(51-3)総集編第二部「妻のたたかい」(2015.12.26)
- 大河ドラマ花燃ゆ・(51-2)総集編第一部 後編「松下村塾を守れ!」(2015.12.26)
コメント