プレイバック翔ぶが如く・(09)大老・井伊直弼
安政4(1857)年11月・熊本──。
西郷吉之助の誘いで、熊本まで同行した大久保正助。
約束通り熊本で長岡監物と会うことができ
正助にとってはとても有意義な旅になったようです。
二人は熊本で、正助は鹿児島に帰り
そして吉之助は江戸に向かうために別れます。
吉之助が向かう江戸では、アメリカ総領事・ハリスが
強引に将軍徳川家定との対面を済ませ
再三、通商条約調印の要求を繰り返しています。
何としてでも拒む水戸藩の徳川斉昭は、
国内で通商をする必要はなく、相手国に出向いて貿易を行えば
通商も友好も果たせるからいいではないか、と
その船を建造するから幕府に100万両を借せと願い出た模様。
「何たる無鉄砲な考えじゃ」
せっかく一橋慶喜を将軍後継に推しているのに、と
松平春嶽は舌打ちします。
彦根藩・井伊直弼と長野主膳はその話を知って、
斉昭が謀反を起こそうとしていると話をでっち上げ
紀州藩の徳川慶福を将軍後継者として推挙できると
不気味な笑いです。
吉之助が京都に着きました。
薩摩藩の定宿である鍵屋に入る吉之助ですが、
女将のお房は、影に怪しげな男がこちらの様子を
うかがっていることが気がかりでなりません。
自分には何も後ろめたいことはない、と
吉之助はお房に、気にするなと言いますが、
実はその男、主膳が放った密偵であります。
「薩摩守、しびれを切らして動き出したか」
いよいよか、と主膳は厳しい表情です。
翌日、月照のところに赴いた吉之助は
紀州家からの将軍後継をしきりに推す
主膳の存在を知らされます。
月照のところを辞し、帰ろうとすると
屋敷の庭木を眺めていた主膳が偵察に来ていて、
寺の住職が不在だと吉之助に教えられたために出直し
吉之助と同道して帰ることにします。
「ひゃー、長野はん! 長野のだんなはんやおへんか!」
恐らくは、主膳と親しい舞妓はん? かと思うのですが、
親しげに声をかけてきました。
まずいと思ったのか、主膳はそのまま無視して行こうとしますが、
女たちがそれを引き止めないわけはありません。
ニヤニヤしている吉之助は、
女たちに囲まれる主膳を置き去りにし
そのまま一人で歩を進めます。
「長野……あれが長野主膳か」
アッという間に江戸に到着した吉之助。
江戸城を抜け出して、幾島が会いに来ました。
最近の大奥の様子は、紀州派の面々が
当主の慶福を大奥に遊びに行かせるという手段に出て
大奥内の女たちは、慶福がまだ幼少であるのに
かわいらしい殿さま! と色めき立っているようで。
篤姫が必死に慶喜を推挙しても、その声はかき消されつつあり
大奥の独特の雰囲気とも相まって、
篤姫は少々疲れを見せ始めているようです。
まぁ、それはそれとして
こんな真っ昼間から逢い引き! と女中はニヤニヤしているし
新門辰五郎の娘・お芳は「まぁいやらしい!」と言いつつも
その相手が噂に聞く吉之助と知って、興味津々です。
疲れてきたのは家定も同じでありまして、
家臣たちがあれこれと言い出すものだから
少々頭が痛くなってきました。
篤姫は、家定の肩をさすりながら、
将軍職など誰かに譲ってしまって
私と一緒にゆっくり過ごしましょうと勧めます。
篤姫のことだけは素直に言うことを聞く家定。
篤姫が糸繰りの道具を使っているのを面白いと言い出した家定。
それを知った篤姫は、早速に
その道具を一橋慶喜に用意させて将軍家に献上させます。
幾島は、ここぞと一橋のアピールをするのですが
篤姫はやんわりと、首を横に振ります。
幾島のトークも、たちまちのうちにトーンダウン(笑)。
そこに、生母本寿院がお見舞いに。
せっかく家定と信頼関係が築けつつあったのに
本寿院は、一橋を推すようなことがあったら
喉を突いて死にますッと家定を責め立て
幾島はその直接的な手法に呆れ、
篤姫は本寿院から目を背けます。
明けて安政5(1858)年。
老中・堀田正睦が懸案の条約問題を持って京に上ると
吉之助と橋本左内も援護すべく後を追います。
ただ、病気という表向きで京に上っているので
表立った動きが取れないのが難点です。
しかも、誰が吹き込んだのか
帝は外国人が赤鬼だと信じ切っているようで
朝廷としては条約には反対の立場です。
ここは、条約問題云々よりも先に
将軍後継の問題を片づけた方がよさそうです。
そんな吉之助や左内の働きがあって
朝廷から堀田老中には、
将軍後継者は英名で人望のある年長の人物がよい、と
沙汰が下りそうです。
「それに叶う人物は、一橋公をおいて他にはない」
書状で吉之助の働きを知った島津斉彬は、満足げです。
朝廷からの沙汰を受け、江戸に戻った堀田老中は
将軍後継者には一橋が好ましいと幕府に報告を入れます。
しかし、井伊直弼がそれを黙って見過ごすわけはありません。
本寿院と結託して、紀州を推すように新たに動き出します。
その前に、と本寿院は篤姫を呼びつけて
祈祷師に占わせた結果、篤姫が身ごもると予言があったことを伝え
篤姫に大きな大きなダメージを与えます。
自分の居室に戻った篤姫は、
家定との間に子どもを授かることなんかあるわけないのに
この仕打ちはあんまりだ、と悔しくて大粒の涙を流します。
翌日(4月23日)、家定より井伊が大老職に任命されます。
堀田老中にとっては、まさに青天の霹靂であります。
しかも、前例を破って御用部屋に座り込み
大老としての職務を始めたわけです。
井伊大老は、
将軍は必ずしも英名でなければならないわけではないと
一橋を推す声を一気に封じ込めます。
井伊大老に意見を具申しただけで
職を解かれたり追放されたりする家臣が多く出ましたが、
“渦中の人”たる一橋慶喜は、まだ動きません。
薩摩に帰った吉之助は、今までのことを斉彬に報告します。
井伊大老の発言力が日に日に重くなり、
老中たちの存在が薄くなっていく中で
根本的な幕政改革を行うためには、たとえ武を持ってしても
斉彬が表舞台に出て行くより他に方法はありません。
「これから忙しくなるぞ、吉之助」
御殿から見える桜島を見て、
斉彬の思いは熱くなっていきます。
安政5(1858)年4月23日、
松平忠固や水野忠央ら紀州慶福派の政治工作により、
井伊直弼が大老に就任する。
慶応3(1867)年10月14日、
徳川慶喜が明治天皇に『大政奉還』を上奏するまで
あと9年6ヶ月──。
(『篤姫』では「(24)許すまじ、篤姫」〜「(27)徳川の妻」付近)
脚本:小山内 美江子
原作:司馬 遼太郎「翔ぶが如く」「最後の将軍」より
音楽:一柳 慧
題字:司馬 遼太郎
語り:草野 大悟
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[出演]
西田 敏行 (西郷吉之助)
鹿賀 丈史 (大久保正助)
賀来 千香子 (大久保満寿)
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田中 好子 (喜久)
新橋 耐子 (本寿院)
萬田 久子 (お房)
三田村 邦彦 (一橋慶喜)
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樹木 希林 (幾島)
井上 孝雄 (堀田正睦)
伊藤 孝雄 (長野主膳)
野村 万之丞 (月照)
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富司 純子 (篤姫)
神山 繁 (井伊直弼)
三木 のり平 (新門辰五郎)
加山 雄三 (島津斉彬)
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制作:吉村 文孝
演出:平山 武之
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