プレイバック徳川慶喜・(11)台風の目
前年の大地震に続き、今度は大型台風──。
そんな中、一橋慶喜の正室・美賀は
無事に臨月を迎えました。
新門辰五郎が訪問してきました。
急な訪問、そして畏まった態度を見れば
用件が新三郎のことであることは容易に推測できます。
辰五郎は、新三郎逃亡のいきさつを話しますが、
事情はどうあれ、相手の男を斬って女を奪ったのは事実であり
慶喜は新三郎に、武士としての責任を取らせようとします。
死ぬのが正義、逃げるのは不正義です。
居場所を教えよ、と問うても、辰五郎は答えません。
辰五郎に言わせれば、町方の世界では
逃がすのが正義、殺すのは不正義なのです。
辰五郎は、責めを負って自分が腹を斬る、と
とんでもない事を言い出します。
「その代わり、新三郎さんのことは忘れてくださいまし」
脇差しを抜いた辰五郎を、慶喜は必死に止めます。
下田に上陸したアメリカ総領事・ハリスは
今度は通商条約を結びたい、と言っているようです。
ペリーの日米和親条約の時は、黒船7隻で脅されて
半ば強引に相手の意見をそのまま呑み込んだ苦い経験があるので、
老中の阿部正弘は、今回はまだ軍艦1隻なので、
早めに条約への準備に取りかかった方がいい、と提案しますが、
主席老中・堀田正睦や他の老中たちは時間稼ぎというか
本気で事を前に進ませようという気概が感じられません。
単なる物事の先送りにも見えます。
新三郎は行方知れず、ということにして
探索をやめることにしました。
その直後、美賀流産の知らせが舞い込みます。
ひどく落ち込む美賀を、気にするなと励ます慶喜。
しかし一番落ち込んでいたのは慶喜自身かもしれません。
自ら描いた宝船の掛け軸をグシャグシャにして破ってしまいます。
ショックだから? 悔しいから?
舞い上がっていた自分に腹立たしいから?
ハリスが激しく怒っているようです。
自分はアメリカ大統領の代理として日本にやって来た。
だから日本からも日本の代表を連れて来なさい!
さもなければ江戸に乗り込みます!
そんな話を幕閣に持っていっても、未だに
ハリスを待たせるだけ待たせて、不便をかけるだけかけて
そのうち帰るかもしれない、などと呑気なことを言う老中がいて
交渉役の役人も空いた口が塞がりません。
いつごろから交渉が始められそうか、と問うても
「分からぬと言うておるではないか」の一点張り。
ここまでくれば、対ハリスの準備をしようという気すら
感じられません。
役人2人は、老中に対して
ブツブツと文句をいいながら下田に戻っていきます。
倉石左衛門が水死体で発見されました。
外傷はなく、身投げしたのではないか、とのことです。
慶喜が幼い頃から従って来た左衛門。
その突然の死に、慶喜は涙を流します。
安政3(1856)年11月、
島津氏出身で近衛忠煕の養女・篤君が江戸城に入り
将軍徳川家定との婚礼の義が執り行われました。
この婚礼すらも、ハリスとの交渉を先延ばしにする
格好の材料になっていたのです。
安政3(1856)年11月、
右大臣・近衛忠煕・篤姫が第13代将軍・
徳川家定の正室となり、大奥に入る。
慶応3(1867)年10月14日、
徳川慶喜が明治天皇に『大政奉還』を上奏するまで
あと10年11ヶ月──。
(『篤姫』では「(18)斉彬の密命」〜「(20)婚礼の夜に」付近)
脚本:田向 正健
原作:司馬 遼太郎「最後の将軍」より
音楽:湯浅 譲二
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[出演]
本木 雅弘 (徳川慶喜)
石田 ひかり (美賀)
深津 絵里 (篤君)
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堺 正章 (新門辰五郎)
清水 美砂 (よし)
山下 真司 (ガンツム)
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岸田 今日子 (松島)
大原 麗子 (れん(語り))
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制作統括:高橋 幸作
演出:谷口 卓敬
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