プレイバック翔ぶが如く・第一部幕末編(21)慶喜の裏切り
文久3(1863)年7月2日。
嵐を避けて湾内に停泊中の薩摩の軍艦3隻が
イギリスに拿捕されてしまいます。
戦争の総指揮を執る大久保一蔵は戦闘開始を号令。
天保山の砲台からの一発を合図に、一斉射撃を命じます。
大山格之助が「てーっ!」と命じると
湾に向けて並べられた大砲から幾多の弾が火を噴きます。
それに対して、いきなりの大砲に驚きつつも
イギリス艦隊からも大砲が発せられ……。
薩摩軍の砲台は旧式ではありますが、
よく敵艦まで届き、多大な損害を与えます。
ただ、イギリス艦隊に搭載している
新式アームストロング砲の威力はすさまじく、
次々と薩摩軍の砲台は破壊され、
城下まで火災に見舞われます。
病床に伏す大久保利世ですが、
戦火がすぐそこまで迫って来ているので
何とか避難させたいところですが、
強情を張って動こうとしません。
福は、利世の言うようにみなを帰し
ひとり残って利世を守ります。
「一蔵……しっかいと気張れよ! こン薩摩のために!」
利世は、戦争の最中に息を引き取りました。
攻撃を受け、砲台が破壊し
修理をする必要が出てきました。
しかし修理をしている間にも攻撃が続いているわけで。
一蔵は、日置まで走らせ
8里の道を樽を担がせて持って来させます。
その樽を大砲に見せかける戦法なのです。
敵艦から望遠鏡で様子をうかがっている司令官は
「これ以上被害を受けてはいかん!」と
砲撃を中止させ、引き揚げさせることにします。
イギリス軍にとって、確かに一回り大きな大砲に見えた
……かもしれません(笑)。
一蔵と小松帯刀は、
長州藩と争って尊王攘夷に動くことが“小攘夷”とするならば
これから薩摩藩が目指すべきは“大攘夷”ではないか、と。
つまり、異国と和睦をして異国の長所を取り入れ自国を強め、
改めて異国と対峙する、という行動です。
これこそが、亡き島津斉彬が目指していた
かねてよりの方針と合致するとも言えましょう。
イギリスとの戦いが終わって1ヶ月後、
薩摩は朝廷と幕府を守るという一点に於いて
突然会津藩と手を結ぶことになり、
長州藩を御所から締め出します。
こうして長州勢は急進派の三条実美ら
7人の公家を擁して都落ちします。
そして島津久光は、再び京都に返り咲くため
大軍を率いて上京することになります。
京都御所──。
元治元(1864)年正月、
14代将軍・徳川家茂、将軍後見職・一橋慶喜、
さらに雄藩大名の福井藩主・松平春嶽、
宇和島藩主・伊達宗城、会津藩主・松平容保らが
京都に集まり、参預会議が開かれます。
政治の中心が京都に移ったわけです。
久光も官位を得て、朝廷参預に就任します。
慶喜は容保を呼び、
攘夷を幕府の方針にすることを宣言します。
しかし攘夷は国を誤るものとして、
反対の立場を取ってきたものであります。
島津が春嶽や宗城とつるんで、
帝に開国案を吹き込んでいるらしく
それに従えば薩摩の権威が上がるだけと
慶喜には面白くないようです。
もちろん、この時期に攘夷を声高に叫んだって
外国人を国外に追放することは出来るはずもありませんが、
慶喜の思惑は、その次にあるようです。
一旦は攘夷の元に国民の結集を図り
実験を握ったところで開国に方針転換する。
そうできれば、薩摩などの立場は
帝の意思を踏みにじり、異国に媚を売るものとしての
責めを一身に背負うことになるでしょう。
かつて薩摩は、
慶喜を次期将軍に推挙したこともありましたが
将軍になりたいなどと頼んだ覚えはない!
慶喜にしてみれば、そう言いたいわけです。
慶喜は、開国派であった同志を誘い合わせ
中川宮邸に集結します。
酒をあおって酔った慶喜は中川宮に
春嶽、宗城、そして久光の3人が
天下の愚物、天下の贋物と言ってしまいます。
大笑いする中川宮ですが、慶喜は
軽々しく勅状を出さないように、と釘を刺します。
これからは、これら3人の愚物たちと
将軍後見たる自分は同列ではない、と知らしめて
酔って倒れてしまいます。
この一件で、
久光は「わしは迷惑ごわす!」と
へそを曲げてしまいます。
後で話を聞いた一蔵は
慶喜に思惑があってこその発言だと読み取ります。
つまり、これに怒って久光や春嶽らが会議から降りれば
慶喜の独断場、政治は幕府の独り占めになるわけです。
政治の荒波が、一蔵の前に立ちはだかります。
文久4(1864)年正月13日、
島津久光が「朝廷参預」に任命される。
慶応3(1867)年10月14日、
徳川慶喜が明治天皇に『大政奉還』を上奏するまで
あと3年9ヶ月──。
(『篤姫』では「(39)薩摩燃ゆ」付近)
脚本:小山内 美江子
原作:司馬 遼太郎「翔ぶが如く」「最後の将軍」より
音楽:一柳 慧
題字:司馬 遼太郎
語り:草野 大悟
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[出演]
西田 敏行 (西郷吉之助)
鹿賀 丈史 (大久保一蔵)
田中 裕子 (岩山いと)
賀来 千香子 (大久保満寿)
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緒形 直人 (西郷信吾)
大橋 吾郎 (小松帯刀)
益岡 徹 (村田新八)
蟹江 敬三 (大山格之助)
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三田村 邦彦 (一橋慶喜)
角野 卓造 (三条実美)
小林 稔侍 (岩倉具視)
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北村 和夫 (大久保利世)
竜 雷太 (川口雪篷)
三木 のり平 (新門辰五郎)
高橋 英樹 (島津久光)
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制作:吉村 文孝
演出:平山 武之
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