プレイバック徳川慶喜・(31)孝明天皇の立場
江戸城に登城した徳川慶喜は
攘夷実行期限を5月10日に定めながら
それを各藩に伝えなかった理由を問いますが、
外国奉行は冷静に、攘夷などできないと反論。
攘夷の危険性を天皇に伝え、
諌めることこそが勤王だと返します。
それどころか、前の生麦事件の賠償金が支払われたことは
幕閣の面々には相談が一切なかったようで、
そのあたりの不満も噴き出してしまうのですが、
おおかた、賠償金支払い拒否という結論になりつつあった幕府内で
その結論に怒ったイギリス公使が戦闘準備を命じたため
老中格にあたる小笠原長行が独断で支払いを指示したということです。
慶喜は、どちらにしてもその責任は拙者にあり、と
将軍後見職を辞任する宣言をします。
と、ここまでは慶喜の筋書き通り。
しかし──。
長州藩が、攘夷実行の期日をわざわざ守って
海峡を通過する異国船に向けて大砲を撃ち
攘夷を開始したというのです。
慶喜と、慶喜と同じように将軍目代を辞任してきた徳川慶篤、
そして小笠原は一橋家に集まり、
まずは大坂に滞在している将軍・
徳川家茂を江戸に戻すことを画策します。
賠償金支払いによって気を良くしたイギリス公使に頼めば
軍艦を使って比較的短期間で大坂から江戸に移動できます。
しかし朝廷では、三条実美が「もう幕府にはだまされぬぞ!」と
将軍の江戸戻りを許さず、しかも攘夷を実行せよと言い出します。
海軍も小さければそれ相応の武器も揃っていないので
今のこの状態で外国と戦っても、勝てる見込みはゼロなのですが、
海軍よりも先に大和魂を見せて戦え! と無茶ばかり。
それができなければ、大政を奉還せよと声を張り上げます。
その夜、三条とともに長州藩寄りの公家である姉小路公知が
浪人たちに襲撃されて殺害されてしまいます。
京都守護職の松平容保は、
壬生浪士組の近藤 勇・土方歳三・沖田総司を集め
関白をもしのぐ権力を持つ三条が狙われているいま
浪人たちを取り締まるように命じます。
小笠原率いる兵が外国軍艦に乗って大坂に到着します。
ここで一か八か、将軍家茂が軍艦で江戸に帰したいところですが
もしも将軍不在を長州藩士たちが知ってしまったら、
たちまち京は占拠され、朝廷は長州の圧力に押されて
攘夷の勅命を出させられるでしょう。
そこで、江戸にいる慶喜が一計を案じ
京都にいる容保らに授けます。
小笠原率いる軍勢を京都に入れようとした時
鷹司や三条たちは、必ず拒絶してくるでしょう。
それを受けて老中は、小笠原を入京させぬように説得すると
一旦は引き下がります。
小笠原は、幕府の軍勢を動かして大坂までたどり着いているので
ここは最高司令官たる将軍の言葉をもらわない以上は
撤退したり留まったりはできないとへそを曲げる。
どうしても入京して将軍から言葉をもらいたいわけです。
鷹司や三条は、それでも軍勢を入京させることは許しませんで
怒りに任せて、ついつい言葉をこぼしてしまいます。
「将軍家の方から出向けばよいではないか」
お言葉通り将軍家の方から出向きます、と
老中は戻って行くわけですが、
これで将軍は京を抜け出し、江戸に戻ることが出来ました。
ついでながら、外国船に攻撃を仕掛けた長州藩でしたが
総攻撃を受け、さんざんな結果になってしまったようです。
薩摩藩も生麦事件のこともあって薩英戦争を始めまして
こちらもかなり粘り頑張ったのですが、
結局はこちらも完敗だったそうで。
攘夷なんて無理だ、という空気になりつつあります。
親征攘夷の勅状が発せられました。
といっても、その勅状は
孝明天皇から発せられたものではなくまったくの偽物です。
三条が長州藩の者たちと結託してでっちあげたものに相違なく。
それを知った孝明天皇は大激怒。
彼らの主張する攘夷の向こう側には、討幕運動も見えておりまして
幕府を討つということは、妹の和宮をも討つということなのです。
三条を罰し、長州藩を京から追い払うように命じます。
あれだけ朝廷を牛耳っていた長州が、
一夜にして長州の敵になってしまったわけです。
文久3(1863)年8月18日、
早朝4時頃に御所九門の警備配置が完了し、三条実美ら尊攘急進派公家に
禁足と他人面会の禁止を命じる「八月十八日の政変」。
慶応3(1867)年10月14日、
徳川慶喜が明治天皇に『大政奉還』を上奏するまで
あと4年1ヶ月──。
(『篤姫』では「(39)薩摩燃ゆ」付近)
脚本:田向 正健
原作:司馬 遼太郎「最後の将軍」より
音楽:湯浅 譲二
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[出演]
本木 雅弘 (徳川慶喜)
石田 ひかり (美賀)
鶴田 真由 (徳信院直子)
内野 聖陽 (徳川慶篤)
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勝野 洋 (近藤 勇)
橋爪 淳 (土方歳三)
黒田 アーサー (桂 小五郎)
花柳 錦之輔 (孝明天皇)
畠中 洋 (松平容保)
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宝田 明 (鷹司政通)
岸田 今日子 (松島)
大原 麗子 (れん(語り))
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制作統括:高橋 幸作
演出:竹林 淳
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