プレイバック徳川慶喜・(36)仇討ち
長州征伐の勅命が下ったとはいえ、
実質的には何も動けていない状況に
徳川慶喜は焦りの色を見せ始めています。
将軍が長州征伐に向かう以上、
征伐の総督には御三家から、という思惑があって
尾張藩の徳川義勝を推挙したものの、固辞しているとか。
慶喜は、義勝への説得はそのまま続けるとしても
将軍に一日も早く上洛してもらわねば
勅命を出した天皇や朝廷への信頼問題に関わるわけです。
新門辰五郎と、娘のよしが
京に旅立つ時がやってきました。
「およしのこと頼んだよ、およしはあっちの子なんだから」
れんにしてみれば、辰五郎もよしも
京に行くのはかなりの心配なことでありますが、
中根長十郎や平岡円四郎と前々から約束していたことを
忠実に守ろうとする夫の姿に
れんも強くは言えません。
父娘、そして同行する中山五郎左衛門に
出発の火打石で送り出します。
──そして京に到着。
慶喜の宿舎となっている京の小浜藩邸に入ります。
慶喜は辰五郎に、火消しの役割だけではなく
京の真ん中が焼け野原になっている現況では
しばらくは街の警備にも当たってもらいたいと命じます。
薩摩藩士・西郷吉之助は
大坂にある軍艦奉行の宿館を訪ねます。
軍艦奉行とは──海舟 勝 麟太郎であります。
長州征伐について幕府の方針を聞きに来たわけですが
幕臣にあるまじき発言で、西郷をビックリさせます。
「ありゃもう……沈没寸前のボロ船にござる」
幕府に期待するのは止めた方がいい、というのです。
長州征伐についても、各藩に命令を下しておきながら
最高司令官たる将軍は未だに江戸城です。
とにかく、何か動き始める前に
長州藩の助命嘆願を待っている状態と海舟は見ています。
今こそ長州を攻めるべきと西郷は力説するのですが、
それなりに力ある長州をつぶせば
幕府が再び力を持つようになるわけで、
諸外国が攻め寄せてくるという危機的状況に
参勤交代を復活させるなどちんぷんかんぷんな政治を行う幕府に
海舟はほとほとあきれ果てているようです。
政治を私のものとして動かしている幕府よりは
諸外国のように、全国から優秀な人材を集めて議論し
みんなで政治を動かしていく。
そういう形の方が日本を救えると海舟は考えているわけです。
「その時、長州という大藩が必要になって来るでしょう」
長州征伐という形で長州を追い込むのではなく
自分自身で始末を付けさせればよい。
海舟に言わせれば、それで充分なのです。
長州藩は幕府にとって征伐する相手ではありますが、
水戸藩の天狗党の面々は
幕府に対する暴徒以外の何ものでもありません。
幕府との戦いに敗れた藤田小四郎ら天狗党800人は
あろうことか京の慶喜に助けを求め、
中山道から京に向かって進みつつあるそうです。
暴徒となった天狗党800人が京に近づいているわけです。
幕府と戦った天狗党は、徳川家、将軍家に弓を引いたのと同義です。
禁裏御守衛総督である慶喜は、暴徒を討伐する立場なので
非常に頭の痛いことであります。
その、京に向かう天狗党の中に
村田新三郎とおみよの姿がありました。
おみよはもはや疲れ果て、
京にはたどり着けないから楽になりたい、と
言い出します。
強く抱きしめる新三郎ですが、
その背後から恨みに包まれた刺々しい声が響きます。
「村田新三郎!」
かつて、みよを虐待していた早川重吉の弟で
幕府側の武士として天狗党を追って来た良介です。
ずっと新三郎をつけ狙い、
今ようやくその好機が到来したわけです。
キーン!
キュン! キュン!
キーン!
人肉を斬られる鈍い音が響いたかと思うと
良介はその場に倒れますが、
斬ったはずの新三郎も眉間にシワを寄せ、
苦しそうに振り返ります。
元治元(1864)年9月11日、
軍艦奉行の勝海舟と薩摩藩士西郷吉之助が大坂で初めて対面する。
慶応3(1867)年10月14日、
徳川慶喜が明治天皇に『大政奉還』を上奏するまで
あと3年1ヶ月──。
(『篤姫』では「(40)息子の出陣」付近)
脚本:田向 正健
原作:司馬 遼太郎「最後の将軍」より
音楽:湯浅 譲二
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[出演]
本木 雅弘 (徳川慶喜)
若尾 文子 (吉子(貞芳院))
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堺 正章 (新門辰五郎)
清水 美砂 (よし)
山下 真司 (ガンツム)
一色 紗英 (みよ)
田辺 誠一 (藤田小四郎)
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藤岡 琢也 (中山五郎左衛門)
坂東 八十助 (勝 海舟)
渡辺 徹 (西郷吉之助)
佐藤 慶 (永原帯刀)
大原 麗子 (れん(語り))
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制作統括:高橋 幸作
演出:吉田 雅夫
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