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2015年10月27日 (火)

プレイバック翔ぶが如く・第二部明治編(32)苦難の大変革

ちょんまげ頭を叩いてみれば
因循姑息(いんじゅんこそく)の音がする。
総髪頭(そうはつあたま)を叩いてみれば王政復古の音がする。
散切頭(ざんぎりあたま)を叩いてみれば文明開化の音がする。

幕末、福沢諭吉は
Civilizationを“文明開化”と訳し、初めて使います。
明治初頭、この言葉の元に
日本の風俗習慣の大変革が進みます。

服装は洋装となり、武士の象徴である刀は
その携帯が個人の自由となります。
(これは後の廃刀令につながります)

牛肉を食べぬ者には
文明開化を語る資格なし、と言われます。

断髪をせぬものは公職には就けませんでした。
多くの男たちがとまどい、迷いながらも
数百年来の伝統を捨てていきました。

ところが、女性の中には
自ら進んでざんぎりになる者も現れます。
「これは行き過ぎ」と政府は慌てて禁止します。

新政府は、国民の意識そのものを大胆に変えることを求め
その上で、日本の政治制度を根幹から覆す大変革に
取りかかろうとしていたわけです。


明治4(1871)年6月。

右大臣・三条実美、大納言・岩倉具視、
参議・木戸孝允と西郷隆盛、大蔵卿・大久保利通、
大蔵大輔・大隈重信、兵部少輔・山県有朋が
国の舵取りをとっていました。

隆盛とともに上京した桐野利秋ら御親兵は
旧旗本の空き屋敷を宿所と決めて寝泊まりしていました。
十蔵が彼らの身の回りの世話を焼いていますが、
その十蔵が一点を見つめて動きません。

桐野がその方を見てみると、
芦名千絵が屋敷内を見渡していました。

千絵と十蔵の会話を総合すると、
芦名家は1,000石取りの旗本だったそうですが
この明治維新の混乱期に駿府に移り住んだそうです。
そして、殿であった千絵の父と母は相次いで他界。

後を継ぐ予定であった千絵の兄は
彰義隊として上野に立てこもり、その末路はご存知の通り。
あとは、千絵の姉・千草の
行方のみが知れないというところです。


日本橋近くの屋敷に住んでいた隆盛は
村田新八との食事中、川路利良の訪問を受けます。

川路は、御親兵とは別に1,000人のポリス部隊なるトップに
隆盛から任命されておりまして、
ポリスが東京に出てきてやるべきことを
隆盛に聞きに来たわけです。

御親兵は、他と戦うことが役割だとすれば
ポリスは、民を守ることが役割であります。
例えば、道を迷った者に道を教え、
ケンカする者たちを仲裁するなど。

しかし、薩摩からポリス部隊を引き連れて行ったので
東京の土地に明るい者は誰一人としておりません。
川路は、まずは東京について勉強会をすることにします。

さらに、政府の維新を笠に着て威張り散らす役人、
金に汚い役人が増え続ければ、幕府時代と何も変わりません。
そういった役人たちに目を光らせる必要もあります。


江藤新平が、徹夜で調べあげた資料を元に
旧幕府の家禄制度をそのまま引き継いだ新政府から
禄高を天引きしていけば、日本の金はますます少なくなるので
廃藩置県を断行して家禄制度をなくすべしと岩倉に具申します。

それに驚いた岩倉は、夜遅くに利通を呼び出します。

東京の西洋料理店では、
西郷従道によるテーブルマナー講習会が開かれております。
生徒は、西郷 清、利通の息子の彦之進と伸熊、西郷菊次郎、
そして利通であります。

スープの飲み方、ビーフステーキの食べ方などやっていた時に
岩倉からの呼び出しが入ります。


岩倉と対面した利通は、
廃藩置県を江藤にやらせていいかと問う岩倉に
「それは断じてなりませぬ」と無表情で返します。

国の大事を岩倉に直接具申するなど、
国の混乱を狙っているかのようにも思えます。
だからこそ、利通は
江藤にこの仕事を任せたくないのです。

この件が世間に漏れては一大事です。
各地から反乱が起きてもおかしくありません。
利通は、一刻の猶予はならないと
廃藩を断行する決意を固めます。


千絵を前に、桐野がモジモジと何か伝えたがっていますが
この屋敷の庭が気に入った、とだけ言って去って行きます。
おかしな人、と千絵はクスッと笑いますが、
そんな千絵を、後ろから十蔵は複雑な思いで見つめています。

千絵の兄は、実は
上野に入る前に斬られて亡くなっていたのですが、
彼を斬ったのは、薩摩武士の剣の達人・中村半次郎。
半次郎は、現在の桐野です。

「十蔵……そなたは、つまらぬ話を聞かせてくれました」
千絵は、眼光鋭く奥を見つめています。


暴風雨の中、
隆盛と利通、従道、山県は木戸邸に集まります。

廃藩置県に於いて、このメンバーだけでも
今夜中に意思統一を図っておかなければ
もし仮に事が露見してしまった時に
取り返しがつかないことになります。

7月14日、在京の諸藩を招集し
廃藩の宣言の後に大変革を発することにします。
こうして、300近くあった藩というものが
日本から消えてなくなったのです。


廃藩置県はもともと利通が思い描いていたことでありましたが
それをさらわれた格好の提案者(と思い込んでいる)江藤の
怒りが収まりません。

薩長の独断でやられた……!!

江藤は、いずれ世界一の法治国家を作り上げ
薩摩長州よりも佐賀肥前が先頭に立つ日のことを夢見ています。


鹿児島では、たくさんの花火が打ち上げられます。

廃藩置県の政策で、またも隆盛と利通に裏切られたと
島津久光が荒れて酒をあおっているのです。

「藩と藩主が消えようと、ワシはこン薩摩を
 西郷、大久保が如き輩の手には渡さん」
そして海江田信義に、腹の虫が収まるまで
花火を上げ尽くせと命じています。

後世までの語りぐさにせい。
伝統ある日本国の営みが、
太政官の暴虐によって弾け飛んだ夜のこつをな──。


原作:司馬 遼太郎「翔ぶが如く」より
脚本:小山内 美江子
音楽:一柳 慧
題字:司馬 遼太郎
語り:田中 裕子
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[出演]
西田 敏行 (西郷隆盛)
鹿賀 丈史 (大久保利通)

田中 裕子 (西郷いと)
賀来 千香子 (大久保満寿)
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緒形 直人 (西郷従道)
国生 さゆり (西郷 清)
杉本 哲太 (桐野利秋)
堤 真一 (矢崎八郎太)
有森 也実 (芦名千絵)
──────────
隆 大介 (江藤新平)
小倉 久寛 (伊藤博文)
益岡 徹 (村田新八)
角野 卓造 (三条実美)
蟹江 敬三 (大山綱良)
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小林 稔侍 (岩倉具視)
田中 健 (木戸孝允)
竜 雷太 (川口雪篷)

高橋 英樹 (島津久光)
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制作:吉村 文孝
演出:平山 武之

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