« vol.180・勘違いの軌道修正 | トップページ | 寝酒 »

2015年11月20日 (金)

プレイバック翔ぶが如く・(39)両雄対決

朝鮮への大使派遣問題で揺れる新政府。
しかしこれ以外にも近況の外交課題が
日本を取り巻いていました。

修好条約により、
日本とロシアの共有の地であった樺太(サハリン)。

この時期、ロシアは積極的に樺太に乗り出し
その人口は日本人のほぼ2倍に上ります。
ロシア兵などによる殺傷事件なども多発し
現地の治安は最悪でした。

ロシアの進出に対して、イギリス公使のパークスは
樺太はおろか北海道もあやういと警告していました。

代々、清国および薩摩藩の属国であった
琉球国にも大変動が起こります。
きっかけは明治4(1871)年に
琉球人54人が台湾の住民に殺害された事件。

事件を機に、日本政府は琉球国王に貴族の位を与え
琉球国を琉球藩として日本の領土に含んでしまい
清国と敵対します。

新政府は北と南に大きな火種を抱えていました。

その中にあって、朝鮮問題を巡る政府内部の対立は
急速に深まっていくわけです。


明治6(1873)年10月14日。
太政官には、朝鮮問題についての
重要な会議が開かれようとしていました。

岩倉具視は、樺太において
ロシア人が日本人を殺傷したため
朝鮮問題よりも樺太問題を
優先すべき情勢になったと説明しますが、

西郷隆盛は、樺太問題は人民と人民の不祥事だが
朝鮮問題は国家間の問題ゆえに、次元が違うと論破。

さらに、樺太問題が急務ならば自分が樺太に行って
その帰りに朝鮮にも立ち寄ってこようと言い出して
岩倉を慌てさせます。

そして、横浜では外国人の夜会に誘われていた大隈重信は
会議を中座して行こうとしていましたが、
参議たる者、国家の大事な会議を中座して夜会とは! と
隆盛に大声で怒られてしまいます。

隆盛は、朝鮮国へ大使を派遣することは
8月17日の閣議で決まったことだと
何度も何度も念押しします。
三条実美が同席していたので、知っていることです。

大久保利通は、朝鮮問題はしばらく時を待ちたいと提案。
もし戦になったら政治はストップしてしまうという危惧からです。
戦いながらでも内政は整えられる、という隆盛に従うとすると
内務省を立ち上げるのに50日程度はかかるという推測です。

それなら、と板垣退助は
内務省立ち上げ期限を50日とし、その後は利通は
朝鮮大使派遣に賛成すると理解していいかと問いつめます。

板垣にすれば、西郷に助け舟を出したつもりなのですが
「そいはいかん!」とあっさりはねのけ(笑)、
50日では遅すぎる、と言い出したわけです。

すると、利通から信じられない一手が──。
「前の閣議がどのようなものであったのか、
 私は不在だったので存ぜぬが」

隆盛は、利通のその一言に驚き感情を露にします。

国事を一切決めないことを条件に留守政府を預かりましたが
当初10ヶ月を予定していた欧米視察は2年の長期にわたり
その間、何も決めるなという方が無理難題であります。

しかしこのまま行けば戦になってしまいます。

今の日本に、海外と戦が出来る兵力も財力もありません。
隆盛は、もし戦になって人が死んで国を焼き付くしても
その中から生き残ったものたちが
再度国を立ち上げればいいだけの話です。

そして、この決定が覆されるようでは
今の職に留まっているわけにはいかない、と
隆盛は辞意を表明します。

西郷を辞めさせるわけにはいかない、と
岩倉は頭を悩ませますが、
西郷が辞めれば政府がつぶれるのに対し、
西郷案を取り入れれば、国がつぶれると
利通は耳を貸そうとしません。

会議は一旦休憩とし、また再開されますが
お互いの主張が平行線のままで終わり、
続きは翌日に持ち越されることになりました。
しかし隆盛は、翌日のその会議には欠席するそうです。

利通は、隆盛が会議を欠席するということは
自分たちとこの件で議論はしたくないと思っているわけで
利通は、隆盛にひどい仕打ちをしたと改めて悔やみますが、
これで良かった、と思うしかありません。


隆盛からの、会議の欠席届と参議辞職願が届きました。

いま隆盛が参議を辞めて国に帰った場合、全国の不平士族たちが
隆盛の元に集まって反乱を起こす可能性もあります。
利通は、隆盛を一身をもって東京に引き止めると言いますが
反乱の火が東京で起こることだってあります。

岩倉は三条を呼び出して、二人だけで話し合います。
「ここはひとまず、大久保を捨てることにして──」

西郷を大使として派遣、という決定を聞いた途端、
利通は参議を辞職すると冷たい表情で言い放ちます。

「何のための念書でござったか!

 (念書って?)
 私におとぼけは通じませぬが(怒)。

 あれほど辞退した参議を引き受けたのも
 竹馬の友と公の場で見苦しくやり合ったのも、
 全てお手前たちが決して裏切らぬと
 念書をお書きくだされてのことでござった!

 (大久保……しかし今そなたが辞めたらやな)

 念書とは!
 武士の世界では刀にかけての誓いごわす!
 それを破られたからには、もはや一緒に
 ことをやってはいけますまい」


10月17日、辞意を表明した利通に続き、
岩倉までも病気のために辞表を提出してきました。
追いつめられた格好の三条は
あと1日だけ待ってくれと言い出します。

勅許を得る条件たる、
太政大臣・右大臣・参議が揃った時の決議たることというのは
15日の閣議では隆盛だけが欠席していたので、
三者は揃っていたことになり、
勅許を得る用件は充分満たしているはずです。

なぜ明日か、と問いつめる隆盛ですが、
たかが1日のこと、と板垣退助が言うのも手伝って
恩情で1日だけ待つことにしました。

しかし、この運命の1日が逆転劇を生んだのです。
翌日18日、三条が心労のあまり倒れ
人事不省に陥ってしまいました。


原作:司馬 遼太郎「翔ぶが如く」「歳月」より
脚本:小山内 美江子
音楽:一柳 慧
題字:司馬 遼太郎
語り:田中 裕子
──────────
[出演]
西田 敏行 (西郷隆盛)
鹿賀 丈史 (大久保利通)
──────────
緒形 直人 (西郷従道)
杉本 哲太 (桐野利秋)
堤 真一 (矢崎八郎太)
有森 也実 (芦名千絵)
──────────
小倉 久寛 (伊藤博文)
南條 玲子 (芦名千草)
角野 卓造 (三条実美)
──────────
田中 健 (木戸孝允)
隆 大介 (江藤新平)
小林 稔侍 (岩倉具視)
──────────
制作:吉村 文孝
演出:平山 武之

|

« vol.180・勘違いの軌道修正 | トップページ | 寝酒 »

NHK大河1990・翔ぶが如く」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« vol.180・勘違いの軌道修正 | トップページ | 寝酒 »