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2015年12月 4日 (金)

プレイバック翔ぶが如く・(43)それぞれの薩摩

明治7(1874)年4月──。

江藤新平が起こした佐賀の乱の後始末が終わらぬうちに、
台湾に漂着した琉球民を殺害した事件がきっかけで
大久保利通・岩倉具視・大隈重信らは
独断で台湾出兵を決め、断行します。

日本は諸外国に対して議会政治を目指しているといいながら
江藤に対するあのような裁判、あのような極刑では
到底理解されない、と木戸孝允は承服しかねる表情です。

ただ、幕府を倒して新政府を設立するにあたって
最初の10年間はあのような暴動が起こりえることは
すでに予測できていたことでありまして、
木戸が言うのはあくまで理想であって
現実には即してないと利通は反論。

断行するなら私は参議を辞任する、と
木戸は内務省を出て行きますが、
利通はいたって冷静です。
「仕方ありません。しかし誰かがやらなければならない」


「御免! 肥後熊本、矢崎八郎太!」
集思社の方々に御意を得たい、とやってきました。

矢崎は、師匠である江藤の死が
政府への不満につながっていて、
志を同じくしている集思社を訪ねて来たわけです。

とそこへ、茶を運んで来たのは芦名千絵。

集思社は西郷隆盛や桐野利秋ら御親兵が撤収して
空いた屋敷を海老原 穆が借り受けたものなので、
ココに千絵がいても不思議ではないのですが、
矢崎は、ココが千絵の屋敷であることを初めて知り
少し緊張した表情になります。

話の先を促され、
江藤が斬首された時の様子を海老原らに詳細に語ります。

江藤は利通に、天下に知らしめるべき弁論を
封じ込まれたまま首を討たれ、無念の極みであります。
だからこそ、残されたものたちが
その精神を訴え続けなければなりません。

何もしないことは
天に向かって罪を犯すことと同じでありまして、
矢崎は立ち上がろうと決心したのです。

海老原は、矢崎のような精神の持ち主が欲しかった、と
江藤の最期の様子を記事にすることを提案。
ここで働いてほしいと頭を下げます。
矢崎も、受けることにしました。

その後、矢崎は千絵に呼び出されたわけですが
かつて自分に接近して隆盛を探るということをしていたので
今度は海老原を……と疑いをかけますが、
矢崎はそれをはっきり否定します。


村田新八がフランス留学から帰国してきました。

といっても、隆盛と利通が袂を分かち
隆盛は鹿児島に帰り、利通が政府に残ったのを知って
隆盛と利通が共に手を携えて進んでいた時代を
幸せと感じていた新八は、

別々になったふたりを悲しみ、
どんな事情でそうなったのか真相を確かめに
慌てて日本に帰国したわけです。

まずは東京の利通を訪ね、事情を聞いてみますが
部屋に伊藤博文がいたからか、利通は
多少オブラートに包んでしか教えてくれませんで、
新八は、今度は隆盛に事情を聞こうと鹿児島に帰ります。

利通は、新八が鹿児島に帰ると
もう二度と東京には出て来れなくなる、と危惧しますが、
その時にはすでに新八は、鹿児島への船の上でした。

鹿児島に到着し、隆盛に再会する新八ですが、
隆盛は、西郷菊次郎といい新八といい困った二才たちじゃ、
西洋で学んだことを鹿児島の山奥では
何の役にも立たん、と笑い、

急に真顔に戻り、新八に忠告しておきます。
「この時局に首を突っ込んだら、身動き取れんこつなっど」


6月、鹿児島に私学校が設けられます。

「私学校」とは、政府の公立に対しての
私立という意味です。

東京政府でも、私学校設立の情報は入ってきています。
利通は、私学校は血気にはやる二才たちを抑えるべく
隆盛らが作った学校だ、と安心しきっていますが
川路利良は逆に、私学校に対して大きな心配を抱えます。

隆盛が鹿児島に戻ったことは全くの私事ですが
桐野ら近衛将校らが政府の官職を捨てて
隆盛について行くなど公私混同も甚だしく、

この大量辞職に対して、政府は
彼らは治外法権であるかのように処分を行わず
機嫌を取るかのように身分はそのままであります。

万一の場合、警視庁は政府を全力で守るつもりであり
それこそが日本を守るポリスの役目だと確信している川路。
台湾出兵の後始末に清国に渡る予定の利通は、川路に
あまり私学校を刺激しないように、と釘を刺しておきます。


10月、フランスから帰国した大山 巌は隆盛を訪ねます。

隆盛には東京政府に戻る気はさらさらないようで
巌は隆盛の側にいると心を決めました。
しかし、鹿児島のことは自分らにまかせて
巌は東京に戻るように新八に説得されます。

東京に戻った巌は、外国紛争をまとめた利通が
台湾に出兵していた西郷従道とともに
日本に帰国したことを知り、鹿児島の様子を報告します。
「大久保さあのお気持ちは、何も通じちゃおらんち」

であれば、鹿児島に残された大久保満寿のことを思うと
西郷 清はいたたまれなくなります。

巌も、はっきりと言えば士族を裏切った政府、
すなわち“大久保憎し”で固まっていまして、
そんな中での満寿の苦労は計り知れない、と弁護。

利通は、自分の骨の埋める場所はこの東京だと決心。
満寿を東京に呼び寄せることにします。

きっとまた、鹿児島にお墓参りに戻ってきてください、と
満寿を励ます西郷いとですが、
隆盛には、利通が鹿児島にとらわれずに
東京で骨を埋めようと考えている決意が伝わります。

それを聞いたいとは、満寿はもう二度と鹿児島に
戻らないのかもしれない、とようやく理解します。

旅立ちの日、いとは満寿に餞として櫛を贈ります。
「いい女っぷりで、江戸ン女子に負けんようにしてたもんせ」


原作:司馬 遼太郎「翔ぶが如く」より
脚本:小山内 美江子
音楽:一柳 慧
題字:司馬 遼太郎
語り:田中 裕子
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[出演]
西田 敏行 (西郷隆盛)
鹿賀 丈史 (大久保利通)

田中 裕子 (西郷いと)
賀来 千香子 (大久保満寿)
──────────
緒形 直人 (西郷従道)
国生 さゆり (西郷 清)
杉本 哲太 (桐野利秋)
堤 真一 (矢崎八郎太)
有森 也実 (芦名千絵)
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小倉 久寛 (伊藤博文)
益岡 徹 (村田新八)
草野 大悟 (海老原 穆)
──────────
蟹江 敬三 (大山綱良)
田中 健 (木戸孝允)
竜 雷太 (川口雪篷)
──────────
制作:吉村 文孝
演出:望月 良雄

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