プレイバック翔ぶが如く・第二部明治編(44)士族暴発
明治9(1876)年2月・鹿児島──。
西郷小兵衛が松を妻に迎え、初子を身ごもっています。
そして西郷隆盛と愛加那の娘で
西郷菊次郎の妹になる菊子が西郷家にやって来て
西郷家もいっそう賑やかになっています。
西郷いとは、何人も産み育てて来た母ちゃんですが
女の子は初めてとあって、ちょっと嬉しそう。
大切に大切に育てて行くつもりです。
東京の大久保家でも、
大久保利通にとっては初めての女の子が
誕生していました。
政府から廃刀令が出ました。
桐野利秋らはすでに刀を差してはいませんが
それはあくまで個人の考えでやっていたことであり、
政府が武士の最後の砦さえも
取り上げようとしていることが許せません。
今のところ、桐野ら元近衛将校たちは
隆盛の言いつけもあって落ち着いていますが、
もしものときまで、鹿児島は動いてはならないわけです。
もしものとき──。
それはすなわち、
日本中が反乱の嵐に巻き込まれたときです。
その時は、鹿児島が立ち上がり、鎮武すべき時です。
利通は内務省に鹿児島県令・大山綱良を呼び出し
鹿児島私学校の役人を他県に回すように指示します。
しかし、大久保憎しで固まっている綱良は
素直に聞き入れようとはしません。
鹿児島のことを綱良を使って遠隔的に動かすのではなく
利通が直に鹿児島の県令になって動かせばいいのです。
私学校のことを心配する川路利良は
隆盛と私学校を切り離すべく
私学校に密偵を送り込んで調査することを思いつきます。
西郷従道は、密偵を送り込むことは策の一つではあるが
もし密偵であると私学校の者たちにバレてしまった場合は
取り返しがつかなくなることになる、と危惧します。
10月、熊本で事件が発生します。
廃刀令が引き金となり、
現状に不満を持つ神風連の士族たちが決起して
熊本鎮台を襲ったわけです。
神風連の反乱は爆竹が破裂するが如く
萩や秋月の士族たちにも飛び火していきます。
鎮台に眠る火薬庫を他県に移すべし、と
山県有朋らと話し合った木戸孝允は提案しますが、
鹿児島は西郷がおるのでご心配なく、と
利通は無用の策は必要ないとの考えを示します。
集思社に所属している永岡敬次郎は
萩で挙兵したのに呼応して千葉県庁襲撃を企て、
迷惑をかけるわけにはいかないと
社を離れることになりました。
所属していた、ということで
集思社も捜査の対象になる可能性が高く、
海老原 穆や矢崎八郎太をはじめ、面々には
ひとまずどこかへ避難を、と呼びかけます。
芦名千絵は、ココの屋敷の家主として
どうしても離れようとはしません。
そこで矢崎は、
自分たちに脅されて仕方なく屋敷を貸したということにして
新聞社とは関わりがない、というのをアピールさせるのです。
千絵の無事を確認できたら、
矢崎はそのまま鹿児島に向かうつもりです。
専制政治を押し進めようとする太政官に
真っ向から対抗できるのは、
西郷隆盛を置いて他にはおりません。
「あなたは……また私を一人にしてしまうのですね」
千絵は涙を流して訴えます。
行かないでください、たとえ西郷さまのところでも
私を置いて行かないでください。
あなたのおそばにいられるのなら、千絵は
どのような騒動も厭いません。
横浜で助けていただいたあの日から、あなたは
私にとってかけがえのないお方なのです──。
この日の夜、永岡たちは警察との斬り合いで亡くなります。
思案橋事件という反乱でした。
鹿児島にいる村田新八からの手紙が大山 巌の元に届き
巌はその手紙を持って利通のところに駆け込みます。
各地の反乱で私学校生徒たちは激しく動揺し
隆盛や桐野らで懸命に抑えているものの
もはやどうにもならない逼迫した状況です。
あたかも4斗樽に水を入れ、腐れ縄で縛っている状況です。
腐れ縄は自分たちであり、やがては切れてしまいかねません。
隆盛は情の人だからこそ、
二才たちに囲まれて決起を説得されたら
どうなるか分かりません。
もはや鹿児島へ介入すべき時が来たと判断した利通は
県令を交代させ、私学校をつぶす決断をします。
川路はポリスの一部に休暇を与え
鹿児島入りさせて私学校周辺を探らせます。
隆盛を私学校から切り離し、
反乱の将として担ぎ上げられないようにするためです。
川路は隆盛に大恩がありますが、
「西郷さあが反乱の将に祭り上げられた時は
国家のため、西郷さあの存在が悪となる」
臨機応変、隆盛と刺し違える覚悟も必要、と諭します。
我々の役目は、西郷さあを……
それは大久保さあのご命令ごわすか──?
不安になったポリスの一人が川路に問うと
川路は言葉を濁し、任務に就くよう命じます。
鹿児島の隆盛のところに、矢崎が到着しました。
故郷の熊本の様子を見聞し、
隆盛に何としても挙兵してもらいたいと
説得に訪問したわけです。
江藤新平の書生が、
警察に捕まっていたために佐賀の乱には加われず
乱の後に釈放されて江藤の晒し首を目に焼き付けた。
そしてその遺志を継ぐために
新聞社に所属して言論で訴えてきた。
そんな矢崎がどうして今さら武力に訴えるのか?
隆盛が聞くと、もはやそれ(武力)より他に道がないからだ、
という答えが返ってきました。
「道がないなら作ればよかとがな」
道がなければ、力を蓄えてジッと動かない。
そうすれば、それがすなわち無言の圧力となり
政府の独走を抑える道となり、国のためとなる。
いま、日本の本当の敵は世界の列強であります。
だからこそ今はジッと動かず、力を蓄え
私学校でひたすらに精神を磨いているのです。
反乱は認めないし、それに引きずられてはいけないのです。
矢崎は、隆盛の考えの大きさに感服し
もし今後、何らかの事情で隆盛が挙兵する時には
一緒に行動を共にしたいと言い、認められます。
政府がポリスを鹿児島に送り込んだという噂が
海老原によってさっそくもたらされます。
その目的は、西郷隆盛暗殺──。
名目上は墓参りですが、
20人余が一緒に墓参りとは合点がいきません。
そしてその夜、火薬庫を移そうという政府側の
挑発とも思える強引なやり方に対し
私学校生徒たちは暴発し、火薬庫を襲ったわけです。
火薬庫を移そうという話は
県令の綱良すらも知らなかったことです。
そして鹿児島県内の他地域でも暴発が発生したとの報告が。
新八はへなへなと座り込みます。
「……水があふれた」
電信で知らせを受けた利通は
届かない隆盛の行動に内心ハラハラしながらも
私学校から起きた火の手を早い段階で消すために
私学校をつぶそうとし、
従道に出動の準備に取りかかるように命じます。
そして。
「いっきに山を降りっど」
急報を小兵衛に聞いた隆盛は
半ば焦りながら山を降りて行きます。
原作:司馬 遼太郎「翔ぶが如く」より
脚本:小山内 美江子
音楽:一柳 慧
題字:司馬 遼太郎
語り:田中 裕子
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[出演]
西田 敏行 (西郷隆盛)
鹿賀 丈史 (大久保利通)
田中 裕子 (西郷いと)
賀来 千香子 (大久保満寿)
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緒形 直人 (西郷従道)
国生 さゆり (西郷 清)
杉本 哲太 (桐野利秋)
堤 真一 (矢崎八郎太)
有森 也実 (芦名千絵)
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小倉 久寛 (伊藤博文)
益岡 徹 (村田新八)
草野 大悟 (海老原 穆)
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蟹江 敬三 (大山綱良)
田中 健 (木戸孝允)
竜 雷太 (川口雪篷)
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制作:吉村 文孝
演出:平山 武之
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