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2015年12月22日 (火)

プレイバック翔ぶが如く・第二部明治編(48)明日への飛翔 [終]

明治10(1877)年9月19日、
城山に籠る西郷軍に対して
政府軍の総攻撃計画が発令されます。

陸軍中将・山県有朋の指示は綿密を極め、
アリの這い出るすき間もない完璧な包囲網が
ぐるりと城山を取り巻きます。

一方、西郷軍も防備を固めますが
その数はわずかに300余。
それに対し、政府軍は
70,000人に達しようという大軍でした。

郊外に避難した家族たちは、
じっと戦況を見守るしかありませんでした。

城山の最後の夜が、いま明けようとしています。

──────────

原作:司馬 遼太郎
   「翔ぶが如く」より

脚本:小山内 美江子

音楽:一柳 慧

演奏:東京コンサーツ
テーマ音楽演奏:NHK交響楽団
テーマ音楽指揮:秋山 和慶

監修:小西 四郎
時代考証:原口 泉
風俗考証:小野 一成

殺陣:林 邦史朗
振付:猿若 清方
衣裳考証:小泉 清子

京言葉指導:桜田 千枝子
題字:司馬 遼太郎
 ─────
協力:鹿児島県

薩摩言葉指導:飯田 テル子
      :西田 静志郎
 ─────
語り:田中 裕子

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[出演]


西田 敏行 (西郷隆盛)

鹿賀 丈史 (大久保利道)


田中 裕子 (西郷いと)

賀来 千香子 (大久保満寿)

佐野 史郎 (海江田信義)
塩野谷 正幸 (川路利良)

坂上 忍 (大山 巌)
新井 康弘 (山県有朋)

長谷川 真弓 (西郷 松)
六浦 誠 (西郷菊次郎)

石丸 謙二郎 (大隈重信)
茅野 佐智恵 (西郷菊子)

車 だん吉 (熊吉)
星野 博美 (西郷 園)

緒形 直人 (西郷従道)

国生 さゆり (西郷 清)

杉本 哲太 (桐野利秋)

有森 也実 (芦名千絵)

安藤 一夫 (伊地知正治)
福田 勝洋 (吉井友実)

桂 三木助 (梅乃家五郎八)
町田 幸夫 (大木喬任)

黒田 隆哉 (別府晋介)
川上 泳 (辺見十郎太)

新井 つねひろ (是枝)
横溝 貴之 (池上四郎)

小倉 久寛 (伊藤博文)

益岡 徹 (村田新八)

南條 玲子 (芦名千草)

角野 卓造 (三条実美)

真木 仁 (刺客)
河合 佑樹 (大沢)
小田島 隆 (浅田中尉)
田村 正俊 (書記)

長谷川 歩 (西郷勇袈裟)
広瀬 珠実 (美津)
浅尾 和憲 (寅太郎)
高橋 壱岐 (午次郎)

石井 浩司 (大久保彦之進)
三浦 竜也 (伸熊)
中島 安名 (利武)
成田 繁範 (達熊)

泉 よし子 (タマ)
小野寺 雪世 (女中)
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静岡県小山町
鹿児島県姶良町のみなさん

若駒プロ
丹波道場
鳳プロ
国際プロ
劇団いろは

資料提供:黎明館
    :尚古集成館
    :西郷南洲顕彰会
    :横浜開港資料館

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小林 稔侍 (岩倉具視)

草野 大悟 (海老原 穆)

竜 雷太 (川口雪篷)


高橋 英樹 (島津久光)

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制作:吉村 文孝

美術:宮井 市太郎
技術:高橋 邦彦
音響効果:久保 光男

撮影:遠藤 信明
照明:須鼻 明彦
音声:宮永 賢一
記録・編集:横山 洋子


演出:平山 武之


9月24日・鹿児島 政府軍本部──。

懐中時計を見た山県有朋。
ついに約束の午前4時を迎えました。
「午前4時。ただ今より薩軍への総攻撃を開始する!」

その指示を受け、大山 巌が
城山に籠る西郷軍に向けて大砲を撃ち込ませます。

その大砲の音を聞き、西郷隆盛は熊吉に着替えの支度をさせ
西別府で避難中の西郷いとら西郷家の面々は
家から飛び出して、祈る思いで城山の方角を見つめています。
鶴丸城の島津久光は、ただ無言です。
いよいよか、という思いだったのかもしれません。

そして東京の大久保邸では、
大久保利通が複雑な思いを抱えているようです。


「ハッハッハッ……似合うちょっが?」
洞穴から出てきた隆盛は、
皆の前でくるりと回ってファッションショー。
意外におちゃめ?(笑)

猟師のような身軽な格好になった隆盛は
腰に鉄砲を差し込んで面々の顔を見渡します。

そいなら、行こかい──。

70,000の政府軍に対し、本営に残る薩軍40人が
隆盛を擁して最後の突撃を開始します。

「行っど!」と
林の中から隆盛を先頭に政府軍に向かって駆け出します。

政府軍から次々に発射される銃弾。
駆ける隆盛の足元にも何発も着弾しますが、
そのうち、隆盛の腹部に命中。

ウッ……。

言葉にならない言葉を発した後
隆盛はよろめきますが、なおも前進しようとします。

更に2発目の命中。

隆盛の呼吸は荒くなり、
ふらついて真っすぐに歩けません。

座り込んだ隆盛の周囲に、皆が集まります。

「晋どん……もうここいらでよか」
「心得もした」

皆の顔を見渡した隆盛は、青い空を見上げます。

明るく前向きに駆けて来た一生。
隣には、大久保正助がいつもいました。

隆盛は目をつぶります。
「御免やったもんせ! ヤーッ!!」


主を亡くした薩摩軍は、身を捨てた最後の攻撃を始めます。
しかし大軍にごく少数の部隊が勝てるはずもなく
圧倒的な兵力に、無力にも次々と倒れていきます。

桐野利秋は、果敢にも鉄砲をぶっ放して
敵に射撃を続けていますが、
途中で弾が詰まったか、もたついている間に
脇から政府軍が襲ってきます。

それでも何とか応戦する桐野ですが、
桐野目がけて一斉に鉄砲を撃ちます。

キューン! という音がし
眉間を打ち抜かれた桐野がよろめいて
後ろに倒れ落ちます。

死に遅れてはならない、と別府晋介や辺見十郎太は
お互いの身体を剣で突き刺して自刃。

村田新八も、刀を腹に立てて割腹──。

もの悲しく、新八の手風琴の音色が
こだましていました。


「吉之助があったればこそ、
 太政官もこン薩摩国を無視できんかったもンを……」
こいで薩摩ン武士が全部死んでしもた、と久光は嘆き
国賊であっても島津家家臣である隆盛を
手厚く葬れと海江田信義に命じます。

はい、と頭を下げる海江田は涙があふれ
久光の落胆ぶりもすさまじく、膝から崩れ落ちます。


東京の太政官会議室にいた大久保利通の元に
鹿児島から電信が届けられます。

ホンジツカングンカゴシマ
シロヤマヘコウゲキ
ゾクカイサイゴウタカモリ
キリノトシアキソノタ
ウチトリソロコノダン
ゴツウチニオヨビソロ

(本日官軍、鹿児島城山へ攻撃
賊魁西郷隆盛、桐野利秋その他討ち取り候
この段ご通知に及び候)

ご回覧くださいますよう、とその電信の紙を回す利通。
岩倉具視、三条実美、大隈重信、伊藤博文らは
文章を読み終わると顔を上げて利通の顔を見ます。

利通は、九州は鎮圧されたので
諸藩の建て直しを進めていくことを宣言。
あくまでも太政官として冷静に宣言します。

ただ、会議が終わると大粒の涙を流す利通が
廊下を呆然としたまま歩いていく姿が見られます。


今日限り官職を辞める、と西郷従道。
早く引っ越しの支度を、と言う従道に
訳が分からない西郷 清。

聞けば、城山が落ち隆盛兄が最期を遂げたという話です。

鹿児島に顔向けが出来ない、と悲しむ従道に
隆盛が従道に、なぜ東京に残れと言ったかを
思い出させようとする利通ですが、

それもこれも、隆盛が生きていればこそでありまして
その兄が亡くなった今となっては、
もはやすべてが終わりなのです。

武士が終わった世の中を作り上げていかなければ
隆盛に顔向けが出来なくなってしまいます。
「おはんなそれでも、不世出の英雄・西郷隆盛の弟か!」


城山の洞穴にお参りをするいとと
寅太郎・午次郎・寅三の3人の子供たち。
しかしそこには、誰かが手向けたであろう花がありました。

それに感謝しつつ、寅太郎が運んで来た石を置いて
午次郎が持って来た花を手向けるいと。

賊将の家族であっても、誰に何と言われようと
恥じることはない、といとは子供たちに諭します。
「お父上ンこつを恥じたら、お父上の死を穢すことになっで」

西郷隆盛の息子だと胸を張って生きる、と誓った子供たち。
いつまでも隠れて住んでいてはいかん、と
鹿児島に戻って、焼けた家の再建を始めることにします。

いとも子供たちも、明るくも凛々しく見えます。


大久保邸で開かれた酒宴。
大山 巌、西郷従道ほか
吉井友実、伊地知正治、川路利良が集まります。

政府は、西南戦争という緊急事態を
甥の巌と実弟の従道が官職を辞めずに留まったからこそ
乗り越えられたようなもので、もし二人が辞職していたら
政府は今ごろどうなっていたかは分かりません。

もっとも、辞めなければならない人物までも
官職に留まっているが──と吉井は皮肉を忘れません。
「なぁ川路」

密偵を送り込んだ汚い手を使って隆盛を追い込んだ。
先走りしすぎたのではないか、と暗に川路を責め、
川路は何も言い返すことは出来ません。

従道は、川路と酒を酌み交わします。
お互い忙しくなるため、
呑む機会もなくなるだろうというわけですが、
もしかしたら従道なりの助け舟だったのかもしれません。

『敬天愛人』の掛け軸を見上げた吉井は
隆盛がいなくなった今を、嘆き悲しみます。


明治11(1878)年2月。
再建も終わり落ち着いた生活を送る西郷家に
菊次郎が帰ってきました。

片足をなくし、松葉杖をついての登場です。

菊次郎は、一旦島に帰って父のことを報告し
隆盛との約束通り、
再び勉学の道に励みたいと考えているようです。


利通に叙勲の話が入ってきました。
『勲一等旭日大綬章』です。

「恐れながらそれだけはご辞退申し上げねばなりません」

勲章は佐賀の乱鎮定と清国との交渉について下されたもので
よしんば西南戦争終息の手柄であったとしても
政治家として受けなければならない──。
岩倉は利通を説得します。

それが、生き残った者の、そして
政治に命をかける者の宿命なのであります。

利通は、勲章を受ける決意を固めます。

西郷隆盛を殺したのは自分だ、と
後世まで言われても構わない。
隆盛と利通、2人のことは、どれだけ言葉を尽くしても
この2人にしか分からないことなのだから……。


しばらくして、西郷家に芦名千恵が戻ってきました。
といっても、元気な足取りで……とはほど遠く
杖をつきよろめきながら、半ば倒れ込むようにしてです。

しばらく横になって休んでいた千絵は目を覚まします。

いとは、千絵が妊娠していることを知っていて
どうしても産みたいという千絵の背中をポンと押します。
「産みやんせ。しっかいとよか子を産みやんせ」

その言葉に、涙が溢れる千絵です。


芦名千草がいる長屋には海老原 穆がいました。
1年間牢獄に入れられて、体調を崩し
この長屋でしばらく療養していたわけですが、
こうもしていられない、とどうにか床上げしたところです。

利通の呼び出しを受けたようで、それを聞いた梅乃家五郎八は
北海道あたりの監獄に入れられたら
二度と日の下を歩けなくなると海老原を止めるわけですが、
なんと自邸に招かれたのだとか。

新聞に携わった者として、政府要職にある人物に
ひとこと言いたいと海老原の鼻息は荒いです。

いざ大久保邸に赴いてみると、利通から
西郷隆盛の伝記を書いてほしいと頼まれるわけです。

海老原は慶応義塾の福沢諭吉に会って来たそうで、
彼曰く、隆盛の反乱は専制政府に対する
抵抗の精神を奮い立たせたと高く評価している、と。

太政官が相変わらず言論を弾圧して
自由な運動を壊滅させようとしている限り
西南戦争がなんであったかも明らかにされず
隆盛の精神も永久に理解されることはありません。

そう皮肉ると、利通はチッと舌打ちし
自分の考えを述べ始めます。

明治は30年からと考えていまして、
10年までの第一期では「創業期」。
隆盛も“乱の時代”と言い残しています。
11〜20年の第二期は、内需を整え国内充実の時期。
21〜30年の第三期で、政治の形勢は民権へと移っていきます。

そのために、第二期では利通自身が
たとえ専制と言われたとしてもやらねばなりません。

武士を辞め、ちょんまげ頭から散切り頭にした海江田が
大久保邸に遊びに来たところで、海老原は
隆盛の伝記は自分が書く! と言って大久保邸を辞します。

その際、暴力に訴える者たちが東京にもいるから
身辺警護を怠りなく、とだけ言い残しておきます。


翌朝、利通はいつも通り
家族に見送られて屋敷を後に、内務省へ出勤します。

家族に見せていた笑顔も、
馬車の中で多くの書類に目を通している時には
キリリと眼光鋭くなっているのですが、

馬車が紀尾井坂にさしかかったところで
不逞浪士5人に道を阻まれ、襲撃されます。
「食らえーッ!!」

大久保の表情に苦しみが……。

馬車の外に出たところで、前から後ろから刀で斬られ
利通は倒れます。

男たちは刀を捨て、一礼して去っていくのですが
利通は、その去っていく男たちをぼんやり見ながら
隆盛の声が聞こえたような気がしました。
「一蔵どん、しっかいしやんせ。おはんな、まだ早かど」

利通はついに力尽きます。


犯人はそのまま自首し、
そこで利通襲撃の事態が明らかになるわけですが、
従道はとりあえず、現場に急行することにします。

従道は、利通の亡きがらを見てたまらず、
血で染まった服を拭いていますが、
利通の懐から、存命時代に送ったと思われる
兄・隆盛から利通に宛てた書状がしまってありました。

そこに、同様に知らせを受けた警視庁から
川路らが駆けつけるのですが、従道は川路に何も言わず
利通にタオルケットをかけて馬車に乗せ
大久保邸に向かって走り出すのです。

たった数時間前に出勤していった夫が、
無言の帰宅──。

大久保満寿は、政治家の妻として
この日を覚悟していると言っていましたが、
この半年後に、利通の後を追うように亡くなります。

利通49歳、満寿40歳でした。


西郷家では、千絵が産気づいていました。
すこしお産に時間がかかっていますが
西郷家のみんなが千絵を励まし続けます。

日の出を迎えた頃、
家の中から赤子の元気そうな声が!

産まれたのは女の子でした。
名前は、矢崎八郎太が戦死した可愛岳(えのだけ)から
一字をとって「愛」と名付けます。


♪一かけ 二かけ 三かけて
四かけて 五かけて 橋をかけ
橋の欄干 手を腰に
はるか向こうを 眺むれば
十七八の ねえさんが
片手に花持ち 線香持ち
ねえさんねえさん どこ行くの
私は九州 鹿児島の
西郷隆盛 娘です
明治十年 戦いに
討死なされし 父上の……

すやすやと眠る「愛」を抱いて、いとが浜辺を歩いています。

おまんさあのじっさまは、
西郷隆盛と大久保利通じゃち思いやんせ。

父上の矢崎さあも、男ン衆は
みんな大急ぎで飛んでいってしもた。

おはんは、大きくなってよかおごじょになって、
いずれは誰かに嫁行って、よか子を産んで
こン国の行く末をしっかいと見届けやんせ!


おまんさあ……。

こン国を新しく作り直したとは、
おまんさあたちに間違いなかとごわんで。

一蔵どんもおまんさあも、
この子に加勢してやってたもんせ。

そいどん、お二人ともあの世で
まだまだ世直しの相談など
しておるかもしれもはんどなぁ……。


──完──

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