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2016年1月18日 (月)

プレイバック武田信玄・(03)別れ

甲府盆地は、富士山をはじめ3,000m級の山々に囲まれ
冬寒く、夏暑い内陸性気候である。

川の氾濫や傾斜地が多いことで信玄の時代より前、
米はあまり作れなかった。

目を外に転じれば、有力大名たちが周囲にひしめいていた。

山国育ちの人は、山を征服しようと思い、
海で育った人は、海の先に何があるか極めたいと思うという。

今風に言えば、垂直思考と水平思考。
しからば信玄は、垂直上昇だけの武将だったのか。

治水工事に新技術を取り入れ、軍備を重んじた信玄は
水平思考も兼ね備えていた希有な武将だったのではなかろうか。

この富士は、信玄が目指した富士である。
あなたは、富士を見て何を思うか。


甲斐国主・武田信虎と、嫡男・武田晴信との激しい諍いは
もはや世間に対してあからさまなことになっていました。

そんな時の小県出兵は、何やら不吉な予感がします。(by 母)

この戦は、諏訪頼重や村上義清と手を結んで
小県を攻めたものではありますが、なかなか苦闘しています。
ちなみに頼重には、
大井夫人の子で晴信の姉の禰々が嫁いでいます。

武田本隊では、晴信が見張られ
陣馬奉行の原 昌俊が密かに動いているようだと
飯富虎昌が察知、板垣信方と甘利虎泰に知らせます。

「諏訪殿も今川殿もよき婿殿じゃ、娘たちを嫁にやってよかった」
信虎のその言葉でピーンと来たようです。

もし信虎が、晴信がしたように
今川義元に身柄を預ける旨の依頼をしているのであれば
話は多少変わってきます。
事態はどちらに転ぶのか、板垣は思案しています。

そして晴信も、信虎と昌俊との間で
今川からの使者がやって来たら
すぐに起こしてここに通せと命じているのを耳にし、
信虎も自分の身柄について動いているのを察知します。

甚三郎に板垣の元に赴かせ、
今川からの使者がやってきたら必ず捕らえよと伝えます。
その使者の返答如何で、今川の本心が見えるというものです。

しかしその直後、
本陣の信虎が誰かからの襲撃を受けるという失態があり
晴信が必死で信虎を守り、敵を蹴散らします。

その後も家臣たちを叱責し、見張りを怠らぬよう厳命、
本陣の移設と次々に手を打った晴信の後ろ姿を見つめて、
信虎は、自分が死ねば甲斐は晴信のものなのに
なぜ助けたのかを問います。

「父上の命、甲斐一国には代えられませぬ。大事にござります」
さらりとそう答えた晴信に、信虎は
ようやった、と初めて評価します。

ちなみに信虎を襲ったのは頼重の配下の者でした。
味方と思っていた相手が、
それは表面上のことで実は敵であったのです。


義元は、山本勘助を呼び出し
晴信に宛てた書状を届けさせます。

父・信虎の身柄を今川家で預かるということは
晴信が新国主となるわけで、
晴信の人物をよく知らなければなりません。

そこで義元は、勘助を甲斐に送り
武田家の間者として仕えるように命じたのです。
ただその実は、今川家の家臣でもあるので
武田の情報を逐一今川に届けろ、ということでもあります。

勘助の妻子は人質として今川で預かるとし、
義元はすぐにでも勘助を甲斐に向かわせます。

ただし義元は、晴信の要望を呑んだわけではなく
むしろその逆でありまして、老いぼれの信虎よりも
父を追放できる人徳ある晴信の方が危険だと認識し
晴信の身柄を今川家で預かることにしたのです。


翌日、晴信は信繁を連れ出し
信虎追放を打ち明けます。

信繁としては、血のつながる親子なので
一晩話し合えば分かり合えるのだから
関係修復に努めてほしいところですが、
晴信に言わせれば、もはやその時は過ぎました。

「儂は甲斐のために、儂自身のために父上を乗り越える!
 親不孝は承知じゃ」
兄の決意に、弟は何も言えません。


頼重も村上も自領に帰ったのを見て、
武田軍も小県から躑躅ヶ崎の館への帰路につきます。
晴信は行軍の先頭におります。

その途中、休憩地で晴信は勘助と対面し
義元からの書状を手渡します。
「家臣高間五郎兵衛、兵100をもってお迎えに参上いたす、と」

いつ、どこで、ということは言ってなかったと知り、
義元め、と小さくつぶやきます。

義元から信虎への使者を捕らえたと聞き、
携えていた書状の中を改めると、
“晴信殿、韮崎にてお引き受け申し候”とありました。

いったんはこの書状を信虎に渡し、
引き取りの時に土壇場で形勢逆転を狙うことにします。


いよいよ、その時がやって参りました。

前方から迫って来る今川の騎馬隊。
しかし晴信は、(身柄拘束される相手が誰であれ)
内容を知っているだけに、特に慌てる素振りはありません。

お館さまにお目通りを、と高間が願い出ても
晴信はその用件を聞かずして通せぬと譲りません。
ただし、晴信の身柄を引き受けるという内容だけに
その本人である晴信に言えようはずもありません。

武田信虎殿をお迎えに参ったのではないのか? と
晴信は高間に誘導尋問をかけますが、
迎える相手は武田晴信殿、と高間の口から聞き出します。

「お館さまのお言葉誤って聞けばことは重大!
 もう一度聞く。迎える相手は誰か」
武田晴信殿にござる! という言葉を受けて
逆上した晴信は高間を斬るように命じます。

先頭で何か起こったようだ、と
板垣たちは晴信の元に駆けつけますが、
一時的に家臣たちがいなくなった信虎の周囲の雑兵たちが
いっせいに信虎に槍を突きつけます。

「……!?」

味方の兵に囲まれながら、
甘利や馬場、板垣らの名を叫びますが
誰一人として信虎を助け出す者はおりません。

信繁も、陣馬奉行の昌俊も、です。
「謀反じゃ……これは謀反じゃあ!」

信虎の身柄をそのまま今川の兵たちに引き渡し
彼らに囲まれて拘束される信虎の背中を見て、
晴信は右手の拳を天に突き上げます。


天文10(1541)年6月14日、
武田信虎が武田晴信から強制隠居させられ
甲斐国から追放、駿河国に追われる。

慶長20(1615)年5月7日、
大坂夏の陣にて真田信繁が討ち死にするまで


あと73年10ヶ月──。


脚本:田向 正健
原作:新田 次郎「武田信玄」
音楽:山本 直純
タイトル題字:海老原 哲弥
語り(大井夫人):若尾 文子
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[出演]
中井 貴一 (武田晴信)
紺野 美沙子 (三条の方)
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宍戸 錠 (原 虎胤)
児玉 清 (飯富虎昌)
美木 良介 (馬場信春)
小林 克也 (原 昌俊)
本郷 功次郎 (甘利虎泰)
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中村 勘九郎 (今川義元)
岸田 今日子 (寿桂尼)
坂東 八十助 (諏訪頼重)
上条 恒彦 (村上義清)
財津 一郎 (太原崇孚)
──────────
平 幹二朗 (武田信虎)
小川 真由美 (八重)
菅原 文太 (板垣信方)
西田 敏行 (山本勘助)
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制作:村上 慧
演出:大森 青児

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