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2016年2月28日 (日)

大河ドラマ真田丸・(08)調略 〜人の心〜

北条は勢いに乗っている。
旧武田領を一気に呑みこもうとしていた。
上杉についた昌幸は、その裏で、
信繁に密命を与えていた──。


「北条が攻めて来るぞ北条が!」
徳川家康は完全に自分を見失って
両手の爪という爪を噛みながら
居室の中をウロチョロと忙しなく歩き回っています。

手がつけられない、と
側室の阿茶局が重臣の本多正信に助けを求めますが、
正信はいたって冷静に、上野国を攻めた北条の
次の狙いは信濃にあると分析します。

勢いに勝る北条軍が、碓井峠を越えたという情報を
正信は持っていたわけです。

碓井峠を越えた北条氏直率いる20,000の軍勢は
信濃の国衆たちを次々と服従させながら侵攻していました。

その戦勝報告を、相模小田原城で聞いている北条氏政は
みんな大好き、茶漬けをかきこんでおります。
そして、こちらもおなじみ“二度がけ”も健在w
「先を急ぐな。食べる分だけ汁をかける。少しずつ少しずつ──」

ということは、かつて父・北条氏康に叱られたという
二度がけの逸話は、あれは氏政のポリシーで
二度がけしていたということになるわけですね?
これはまた新解釈!


真田家の方針として、上杉に付くことに決めた以上
敵である北条が今にも攻めて来るという非常事態なのに、
真田昌幸は特に手を打つわけでもなく、
クルミ2つを手のひらで転がしてガリガリやっています。

「教えてください! 父上は何を待っておられるのですっ!」
真田信幸は、しびれを切らして父を問いつめますが、
昌幸が待っているのは、上杉家家臣・春日信達の調略でして、
春日を手土産に北条に鞍替えするつもりなのです。


その密命を下された真田信繁は、信濃海津城で
叔父・真田信尹に春日信達情報を求めます。
春日は、武田家を支えた高坂弾正を父に持ち
武田家滅亡の後、上杉に拾われて現在に至ります。

忠誠度といえば、最近は少しずつ下がりつつあるようです。
どうやら海津城城代として守りに留め置くという自分の処遇に
少なからず不満を持っているらしいのです。

そこで、同じ城に詰めている春日と接点を持つべく
信尹は信繁を“自分の三男・信春”と紹介し
ともに酒を酌み交わします。

春日の不満を引き出そうと、信尹はまず
“上杉景勝は武田に縁ある者には心を許さない”と漏らし
春日ほどの人物なら、他に行けばたちまち一国一城の主と持ち上げますが、
それに気分を害したか、春日は席を蹴って立ち上がろうとします。

「兄・真田安房守は、上杉を見限り北条につくことに決め申した」
いきなりの信尹の爆弾発言に、
かなり慌てた春日は逃げるように帰っていきます。

信繁が見たところ、春日が上杉を裏切るとはどうしても思えませんが、
信尹曰く、裏切る芽はしっかりとありそうです。

もし本当に気がないのであれば、話だけは受けた“フリ”をし
話の内容を上杉景勝に伝えるはずですが、
春日は動揺し、急いで帰っていったのです。
もしかしたら、本当に図星だったのかもしれません。

翌朝、海津城内のサルスベリを眺めていた春日。

海津城は高坂弾正の城でしたので、
春日も幼い頃から親しんだ城であります。
信繁は春日にそっと近づき、自分は信春ではなく
昌幸次男・信繁であることを明かします。

ただ、ともに戦った仲間である真田昌幸の子どもであっても
誰であっても、春日は上杉を裏切るつもりはありません。
武田家が滅び織田についたものの、本能寺で信長が倒れ
途方に暮れている時に上杉が拾ってくれたわけです。

しかし、その上杉への恩義も、信繁に言わせれば
北信濃を手に入れたいがために春日を抱き込んだに過ぎず、
春日を敵から守ってくれたわけではありません。

そして、上杉への恩義を言うなら武田への恩義はどうなるのか?
春日の父・高坂弾正は、もとは農民でしたが
信玄が取り立てて、侍大将から城持ちにまで出世させてくれました。
北条氏直は、そんな信玄の孫に当たります。

「もういい! 二度とわしのまえでこの話はするなっ」
立ち去っていく春日の背中を見るしか、信繁にはできませんでした。

信繁の説得材料はほとんど理屈でして、
理屈で固められて説得されると
人はむしろ心を閉ざしてしまいます。
「焦りは禁物じゃ」


春日調略に手こずっているのを感じ取った昌幸は
調略成功の知らせを待たずに
小諸城の北条氏直に会いに行くことにします。

そんなとき、岩櫃城を守る信幸は
昌幸からの至急の書状に目を通します。
「何!? 父上が上杉を見限り……北条についた!」


小諸城に到着すると、総大将の氏直は昌幸を叱責、
居場所はない、と帰そうともします。
先に北条についていた出浦昌相の説得で
しぶしぶ仲間入りを認めますが、その扱いは相当下です。

そして(まだ成功したわけではない)春日調略も報告するのですが、
そんな小細工をしなくても北条は勝てる! と
氏直は昌幸に対して大激怒です。

そこに、氏政が小田原から陣中見舞いに訪れます。
どうやら氏直とのやり取りを陣幕の向こうで聞いていたようで
若い故に天狗になりやすい氏直の手綱を引いておこうと
昌幸に対して、真逆の反応をします。

つまり、昌幸の参陣を大手を広げて喜び
我が兵を失わずに済むからと、春日調略もとても喜んでくれます。
そして昌幸から、春日に海津城を任せると
一筆したためてほしいという申し出も快諾。

氏政は、真田や春日のことは何一つとして知らないわけなので、
本当に氏直の手綱を引いておくためだけだったのでしょうね。


7月14日、北条軍は上野の国衆を加え
30,000に近い大軍勢となって進軍を開始。
対する上杉景勝は7,000の軍勢で海津城に本陣を置きます。

そのころ、真田昌幸の裏切りを知った景勝ですが、
兄(昌幸)に愛想が尽きた、と激怒する信尹と信春は
このまま上杉に残って、越後に骨をうずめたいと言って
景勝を安心させます。

春日調略が進まず、昌幸が先に裏切ってしまった──。
ここは春日調略を急がなければなりません。

信尹は、上杉の下では海津城城代止まりですが
もし北条につけば、海津城は
正式に春日に返す約束をしていることを告げます。

春日と同じ運命を辿った昌幸も、
沼田城、岩櫃城を死にものぐるいで取り返しました。
北条の下で海津城を取り戻して武田の無念を晴らす。
それこそが、亡き父・高坂弾正の望みでもあるでしょう。

春日を、調略できたとの知らせを受け、昌幸は信尹に
氏直の花押入りの海津城安堵の書状を送ります。

それを信繁に渡すとき、信尹は冷たく言い放ちます。
「わしのようになりたいと申しておったな。
 『わしのようにはなるな』」


信濃で最後の、
そして最大の抵抗勢力であった真田を味方に付け
北条勢はすんなりと川中島に陣を敷きます。
北条軍と上杉軍が千曲川を挟んで向かい合います。

上杉の様子を伝えた農民の話によれば、上杉軍は
2〜3万では足りないほど軍勢が膨れ上がっているようです。
(ちなみにその情報を伝えたのは佐助w)

さらに、上杉軍の陣に春日が磔にされているのを確認し、
徳川軍が武田領内に入ってきつつあるという情報も手にした氏直は
上杉との直接対決を避けて川中島からの撤退を決断。

今すぐ攻め落としましょう! という昌幸に
氏直はにくにくしげに「しんがりを任せる!」と去っていきます。

一方景勝も、家臣の新発田重家の反乱を鎮圧するために
越後へ戻ることになりました。


「何!? なぜじゃ? なぜこっちに来る!」
上杉と退治しているはずの北条軍が
甲府・躑躅ヶ崎の館に向かって進軍中であることを
正信から聞き、途端に慌て出す家康です。


北条に寝返るはずの春日が、どうして磔にされていたのか?

氏直からの起請文を手渡した信尹が、
不意をついて春日を刺し殺してしまったのです。

そして自ら刀を抜いたように細工し、景勝に
不審な者を引き入れていたので問いつめたらこうなった、と
事の次第を報告します。
物的証拠は、北条からの起請文──。


春日を寝返らせ、寝返り者として春日を始末する。
越後で反乱が起き、上杉軍は撤退。

北条軍も、上杉軍についての誇張した情報に惑わされ
徳川が甲斐を乗っ取る、というウソに乗って甲斐に向かいます。
そのしんがりとして昌幸は信濃に残ることができました。

そして、北条が向かう甲斐の徳川は、
北条の大軍が恐ろしくて身動きが取れません。

武田家が滅亡した後、みなこぞって
甲斐や信濃を盗りに来ていましたが、今は信濃は空っぽです。

大名ではない昌幸が、己の兵を一人も使わずして
信濃から上杉と北条を追い出してしまった……。
昌幸の狙いは、恐らくそこだったのでしょうか。
信繁はつくづく、昌幸や信尹のことを恐ろしく感じています。

ただ、大名になりたいと思いつつも
今の真田には、それだけの力はまだまだありません。
ゆえに、旧武田家家臣である信濃国衆たちが集まって
合議制で信濃を治めていくことになるでしょう。

国衆たちの独立国家。
昌幸が今、この時に思い描いていました。


そんな昌幸の策のために、
こちらは北条と一戦交えなければならない。
家康の愚痴は止まりません。


天正10(1582)年7月13日、
春日信達が真田昌幸や北条氏直らと内通したことが発覚し、
上杉景勝によって誅殺される。

慶長20(1615)年5月7日、
大坂夏の陣にて真田信繁が討ち死にするまで


あと32年9ヶ月──。


作:三谷 幸喜
音楽:服部 隆之
題字:挾土 秀平
語り:有働 由美子 アナウンサー
──────────
[出演]
堺 雅人 (真田信繁)
大泉 洋 (真田信幸)
長澤 まさみ (きり)
黒木 華 (梅)
藤本 隆宏 (堀田作兵衛)
藤井 隆 (佐助)
──────────
高嶋 政伸 (北条氏政)
遠藤 憲一 (上杉景勝)
斉藤 由貴 (阿茶局)
寺島 進 (出浦昌相)
前川 泰之 (春日信達)
中原 丈雄 (高梨内記)
西村 雅彦 (室賀正武)
──────────
高畑 淳子 (薫)
近藤 正臣 (本多正信)
内野 聖陽 (徳川家康)
草刈 正雄 (真田昌幸)
──────────
制作統括:屋敷 陽太郎
    :吉川 邦夫
プロデューサー:清水 拓哉
演出:田中 正


◆◇◆◇ 番組情報 ◇◆◇◆

NHK大河ドラマ『真田丸』
第9回「駆引」

デジタル総合:午後8時〜
BSプレミアム:午後6時〜

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