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2016年3月22日 (火)

プレイバック武田信玄・(21)景虎失踪

上杉謙信の旗印は『毘』の一文字。
“毘”は、毘沙門天の“毘”である。

謙信はなぜ、“毘”を旗印にしたのだろうか。

毘沙門天は、あらゆる悪に打ち勝つ守護神である。
また北方、北の方角にあるものすべての守り神でもある。

謙信の目に映る戦国の世は、悪がはびこる暗黒の時代である。
北の越後の主として、自らを
毘沙門天の生まれ変わりと信じたとしても不思議ではない。

謙信にとって、“毘”は尽きない正義の旗印だったのである。


武田晴信が国内の治水工事に取りかかってから十余年、
御勅使川(みだいがわ)から釜無川へ到る工事は未だに続いております。

ただ、いたちごっこということはなく
時間はかかりながらも着実に工事は進んでおりまして、
御勅使川の川の流れはかなり落ち着いて
川の途中に築いた第一から第五の堤も崩れる心配はなくなりました。

そして、この川の流れを本流と支流の二方向に分け
支流を田畑への取水のための流れとしたことで
荒れ地だった田畑は肥沃なものに変わりつつあります。

御勅使川が釜無川と合流する地点には石垣が築かれていますが、
合流地点から水かさが増えることを考え、石垣を高くし、幅も厚くし、
さらには竹林を植えることで根をしっかりと張らせ
石垣が動かないように固定させる予定です。

とまぁこのように、晴信の国造りは順調でして、
さらには国外に対してもしっかりと視線は注がれています。

越後国内が豪族たちのいさかいで乱れているという情報を得た晴信は
越後国境あたりまで長尾景虎を誘いだそうと
北信濃に出兵するという噂を流させます。
国内の乱れに混乱を招かせ、火に油を注いで
戦わずして景虎の力を弱める作戦です。


越後の国の乱れの最たるものとして
上野家成と下平修理亮の領地争いが挙げられますが、
長尾家重臣・直江実綱は、仲裁役である大熊朝秀にお説教。
その場は素直に頭を下げる大熊でしたが──。

実は箕冠城主の大熊には
晴信から寝返りの誘いの手が伸びておりまして、
夏には景虎に反旗を翻す約束まで取り付けております。

ここ10日程度、毘沙門堂にこもっていた景虎ですが
その姿が見えません。
門番の話によれば、僧ひとり城外に出たそうですが、
小姓の菊丸は、その僧こそ景虎だと信じて疑いません。

直江は、城内の者たちに景虎の失踪を悟られないよう
小姓たちに厳命します。
もし景虎が単身城外に出たと知れば、
他国から忍びたちが集まり景虎の命が危険に晒されます。

もし景虎が僧の身なりとなっているならば、その行先は……。
「目指すは、比叡山」


夜、景虎が途中の御堂で祈祷していると
武士たちがその御堂に集まってきました。
景虎ではないかという噂が立っていたのかもしれません。

その姿を確かめようと、御堂の外に景虎を連れ出します。
長尾景虎か? との問いかけに、なぜか素直に応じます。
「そうじゃ。確かにわしは3日前まで長尾景虎と申した」

景虎の首を持ち込めば高く売れる、と
武士たちの頭が刀を抜きますが、
景虎はそれでも動じることなく、
手を合わせて唱え続けます。

そこに直江と菊丸が救援に駆け込んで
武士たちを蹴散らします。
直江が鬼の形相で太刀を手渡そうとしますが、
景虎は頑として受け取りません。

しかし、武士たちが迫ってきます。
最初こそ鞘で叩きのめして倒していく景虎ですが、
ついには刀を抜いて武士たちを刺していきます。
「なぜわしを呼び戻す……なぜ人を斬らせるのじゃ」

黙って目をつむる景虎に、直江は必死に説得を続けます。

たとえ国が乱れようと、たとえ逆臣に囲まれようと
守護職を預かる景虎が国を捨てるのは本末転倒であり、
景虎が目指す“美しい流れ”に逆行する行動であって
そのような身勝手は許されるものではありません。

私利私欲に走る者はほんの僅かであり、
家臣領民のほとんどは、
自らの力で国を守り田畑を耕して日々の糧を得ています。
そのような者たち見捨てて、仏の道があるでしょうか。

国主の道の中にも仏はおります。
百姓の荒れた手の中にも、
赤子の泣き叫ぶ声の中にも仏はいます。

景虎の目から、大粒の涙が溢れ出ています。


夏。
武田勢は伊那を攻め、雨飾城を落とします。

そして約束通り、大熊朝秀は寝返って越後から甲斐へ鞍替え。
景虎は、正面切って戦わず、
金を掴ませて裏切らせる晴信のやり口を非難します。
「もはや人は信じぬ」


夜道を、般若の面をかぶった八重が
いつもの小屋へ急いでおりますが、
その途中で飯富三郎兵衛が行く手を阻みます。

「そこの妖怪!」
と善いながらも、その正体は八重だと
実は知っている三郎兵衛ですw

と、とにかく
この森から出て行かなければ斬る、と脅して
さすがの八重も、退散するしかありません。


晴信の次男・次郎は、岐秀和尚の長禅寺を離れて
更なる修行のために比叡山に向かうことになりました。

その旅立ちを見送った晴信は、
ある娘と出会い頭にぶつかりそうになります。
その娘は油川信友の息女・恵理でして、
のちに晴信の側室となる女性です。


弘治2(1556)年6月28日、
長尾景虎は家臣同士の領土争いなどで心身が疲れ果てたため、
突然出家・隠居することを宣言し、高野山に向かう。

慶長20(1615)年5月7日、
大坂夏の陣にて真田信繁が討ち死にするまで


あと58年10ヶ月──。


脚本:田向 正健
原作:新田 次郎「武田信玄」
音楽:山本 直純
タイトル題字:渡辺 裕英
語り(大井夫人):若尾 文子
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[出演]
中井 貴一 (武田晴信)
柴田 恭兵 (長尾景虎)
紺野 美沙子 (三条の方)
大地 真央 (里美)
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池上 季実子 (恵理)
宍戸 錠 (原 虎胤)
児玉 清 (飯富虎昌)
小林 克也 (原 昌俊)
篠田 三郎 (飯富三郎兵衛)
村上 弘明 (春日昌信)
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橋爪 功 (真田幸隆)
内藤 武敏 (岐秀和尚)
勝野 洋 (大熊朝秀)
浜村 純 (倉科三郎左衛門)
──────────
宇津井 健 (直江実綱)
小川 真由美 (八重)
西田 敏行 (山本勘助)
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制作:村上 慧
演出:重光 亨彦

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