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2016年5月 3日 (火)

プレイバック武田信玄・(33)鬼美濃の死

世に名高い「武田二十四将」。

無敵の甲州軍団は、
この勇猛果敢な重臣たちによって支えられていた。
しかし、甲斐の国が巨大化していく中で、
信玄は多くの武将を、戦場であるいは病で失った。

板垣、甘利、飯富など
信玄の父・信虎の時代から武田家に仕えてきたり
信玄がその才能を抜擢し、重臣の列に加えた山本勘助など
甲斐の国にとってかかせない武将たちであった。

甲斐を更に大国にし、京の都を目指す信玄にとって
戦略・知略に長けた武将たちも重要であった。
信玄は優秀な若者を次々と登用し、
重臣の列に加えていった。

一方その影で、かつて“鬼美濃”と畏れられ
歴戦を生き抜いた男・原 美濃守虎胤は
いま、死に場所を求めているのである。


東光寺に幽閉された武田義信。

雨戸が閉められ、
外の明かりがほとんど入って来ない部屋の中にいて、
義信は外で、何者かが立てるガサゴソという物音に脅えます。

「若殿、お助け致します」とささやいたような気がしました。

しかし次の瞬間、誰かがその者たちを見つけて追ってきたようで
義信救出は断念、東光寺から退散します。

ゆっくりと入ってきたのは飯富三郎兵衛でした。

義信にとって三郎兵衛は、彼自身の告げ口によって
彼の実兄であり義信の傅役でもある飯富虎昌が
切腹させられたわけで、義信には憎むべき相手でありますが、

「謀反の動きあらば、たとえ我が兄であろうと容赦はいたしません」
一礼して出て行きます。


三郎兵衛から武田信玄に、
義信を救出させようと東光寺に近づいた者たちの中に
女の姿があった、という報告がいきます。

三郎兵衛は、もしかしたらそれは
八重ではなかろうかと考えているわけです。
兄・虎昌が謀反を企てた前日も、八重は飯富邸を訪れておりますし
この企て自体、八重が虎昌をそそのかした可能性は充分にあります。

信玄は三郎兵衛に、まずはそのようなことは
軽々しく口外せぬようにと口止めし、
東光寺に近づく時には信玄に許可を求めよと
三条夫人にも八重にも釘を刺しておきます。


高遠城主・諏訪四郎勝頼が躑躅ヶ崎の館にやってきました。
勝頼は、亡き湖衣姫との間に生まれた男子であります。
そしてその横には、傅役である
阿部加賀守勝宝(かつとみ)の姿も。

勝頼は、今や口ひげも生やして
城主として立派に役目を果たしています。
義信とは大違いです。

それだけに、義信がこんな状態だからこそ
余計に勝頼が可愛くて可愛くて仕方がないわけです。

そこに、織田家からたくさんの宝物を携えて
使者がやってきました。
しかし今回の目的は、信長がさらに信玄に近づくために
勝頼と信長の姪との間に新たに縁を結びたいというものです。


信玄が織田家から嫁を取る、というニュースは
たちまちのうちに今川家にも入ります。

武田家と今川家は盟約を結んでおり
その今川家と織田家は敵対関係にあるので
単純に言えば武田家と織田家も敵対関係であるはずですが、
その両家の間に縁が結ばれるというので、大騒動です。

寿桂尼にしてみれば、今川家は
将軍家のナンバー2という自負があるわけですが、
その誇りだけで戦をして勝てるわけではない、と氏真。
情けない! と寿桂尼は吐き捨てますが、
氏真の方が現実を見ているような気がします。


虎昌の位牌に手を合わせる原 虎胤。

三郎兵衛と酒を酌み交わしながら、
最後の最後に太刀を振える死に場所を求めます。


東光寺の義信を訪れた信玄は、
25年前の、自らが父・武田信虎に対して起こした
クーデターについて義信に初めて語ります。

──儂は父を憎んでおった。
まず憎しみありて
その後に謀反の理屈を考えたのやもしれぬ。

父は儂が長ずるに及びて、我が力を畏れ
乗り越えられまいとするあまり、
ことあるごとに儂を小心者とあざ笑い、儂を排した。

儂の愛おしい女子の命も奪った。
家督も継がせぬと仰せられた。
儂は父を心の底から憎んだ。
父の命を奪おうと何度も思うた──。

「義信、そちは儂の若きころに瓜二つじゃ」
信玄は、義信の自分自身に対する恨みを消すために
義信の前に太刀を置き、義信の前に座ります。

その太刀を振り上げる義信ですが、
振り上げたまま、何も出来ません。


酒を呑んで鼻歌を歌いながら、気分よく帰っていた虎胤。
しかし後ろから3名の武士がつけて来ていることには
とっくに気づいています。

聞けば志賀城の残党で、
妻たちは銀山に売られてそこで亡くしています。
ともかく、虎胤は相当な恨みを買っているようです。

虎胤は、老いてかつ酔っているにもかかわらず
若い武士3人を相手によく戦います。

しかし、一瞬のスキをついて脳天を割られ、
大量の出血があり、串刺しにされてしまいます。
ドサッと倒れる虎胤。
「礼を……礼を申す」

そして同じころ、虎昌の妻・まさは
最後の最後まで八重への復讐を願いながら
夫の位牌の前で自害して果てました。


2ヶ月後、勝頼と
織田家の養女・雪姫との婚儀が
高遠城で執り行われました。


永禄8(1565)年11月13日、
織田信長の養女が武田勝頼に嫁ぐ。

慶長20(1615)年5月7日、
大坂夏の陣にて真田信繁が討ち死にするまで


あと49年5ヶ月──。


脚本:田向 正健
原作:新田 次郎「武田信玄」
音楽:山本 直純
タイトル題字:渡辺 裕英
語り(大井夫人):若尾 文子
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[出演]
中井 貴一 (武田信玄)
紺野 美沙子 (三条の方)
堤 真一 (武田義信)
古村 比呂 (御津禰)
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篠田 三郎 (飯富三郎兵衛)
大多 貴子 (まさ)
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岸田 今日子 (寿桂尼)
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宍戸 錠 (原 虎胤)
佐藤 慶 (阿部勝宝)
小川 真由美 (八重)
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制作:村上 慧
演出:秋山 茂樹

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