プレイバック武田信玄・(39)京の夢
世界最大のぶどうの産地・フランス。
そこで生み出されるワインは、
世界中の食通・グルメの喉を潤してきた。
山梨県勝沼町──。
甲府盆地。
ここは日本一のワインの産地である。
原料はほとんどがこの地方特有の甲州ぶどう。
起源は古く、今からおよそ1300年前。
仏教とともに中国からもたらされたといわれている。
武田信玄は、農業が国造りの基本と考え
甲府盆地のぶどう栽培を奨励した。
それ以後、甲州ぶどうの質は上がり
現代では日本のワインの90%近くを生み出している。
甲州ワイン。その中にも
武田信玄が生きているのである。
北条の小田原城を目前に4日で撤兵した武田信玄。
初めから城を落とすつもりは全くなく、
上洛を前に、武田の力量というものを
北条氏康に見せておきたかった思惑があったのです。
武田に追い打ちかけよ、とご隠居の氏康からの命がくだり
北条氏政は武田勢を追いかけますが、
信玄は氏政に追いつかれてはならじと
兵たちの尻を叩いて完全撤兵です。
そしてどうにか、峠を制圧し
甲斐に戻ることが出来ました。
ただ、その日の夜は冷え込み、雪が降り出しました。
おそらく雪は降り積もるでしょう。
疲れ果てた兵たちにこの寒さは堪えまして、
一部の兵たちは諏訪神社の支社の床板などをはがして
たき火にしています。
底冷えするため、兵たちが凍えるのも理解できる信玄は
兵たちにいきなり処分を下すのではなく
諏訪勝頼に、兵たちの処遇の一切を任せることにします。
赴いた勝頼は、自分の一存でたき火にした、と
兵たちをかばった高間を咎めることはせず、
諏訪大明神に仕える諏訪家の人間として
この社殿を取り壊し、新たな社殿を築くと言って
そのご神霊を社殿に移す儀式を執り行います。
そして、そんな処置をした勝頼を、
傅役の阿部勝宝は目を細めてみています。
「皆の者、遠慮は無用じゃ。存分にたき火して暖を取れ」
この話は数日のうちに軍勢の隅々にまで行き渡り
勝頼は武田家家督を継ぐ者として受け入れられました。
躑躅ヶ崎の館に戻ってきた信玄。
弟・武田信廉から見ても、顔色が良くありません。
寒さのせいじゃ、と言っていた信玄ですが、
ひとりになった瞬間、やはりドッと疲れが出ています。
しかし、休んでいる場合ではありません。
やらなければならないことは山ほどあります。
そんな時、八重が信玄の元を訪れます。
三条夫人の具合が良くないというのです。
八重が言うには、信玄の輝ける姿を見れば
三条には何よりの薬、と懇願し、
信玄は三条の居室に向かうことにします。
三条は満面の笑みで信玄を迎え入れ
勝ち戦を祝って舞い始めます。
ただ、次第に息が乱れよろめき始め
ついには扇を落としてしまいます。
「今生のお別れに、どうか狂おしき一夜を」
八重と浅黄、若狭を下がらせた三条は、
恥を忍んで信玄に頭を下げます。
信玄が若いころにおここに気持ちが移ってからというもの
正室でありながら、指一本触れてもらえない寂しさ。
毎夜毎夜、信玄が渡ってくるのを待ちわびる毎日も
自分の命が尽きればもはやそこまでです。
信玄は、泣きじゃくる三条を強く抱き寄せ
痩せて軽くなった三条の身をひょいと抱え寝所へ。
席を外したとはいえ
八重には三条の心の叫びは届いておりまして、
死期を悟った自分の主のことと
心の叫びが届いた安堵感で号泣しきりです。
亡き信玄の軍師・山本勘助の
長男である山本勘市が海津城にやってきました。
どうやら武田家で働きたいと言ってきたようで、
海津城に行くように命じた信玄の書状を携えていました。
自らの命を勘助に救ってもらったことで
勘市にも恩を感じている平三と平五も一緒です。
その夜、高坂は
勘市、平三、平五と酒を呑みかわします。
高坂の横には、かつて庭で掃き掃除をしていた
ナゾの女がいて、お酌をしてくれます。
武田家と戦っている間に
上総国の大半を失ってしまった北条氏と、
西上野にまで武田が攻め寄せて
領土が縮小されてきた上杉氏の思惑が一致し、
上杉と北条は同盟を結ぶことになりました。
そして、足利義昭を将軍の座に据えた織田信長ですが、
「副将軍はどうか」「管領はどうか」と
信長に官位を次々と与えようとする義昭に
自分は義昭の家来ではないという立場を明確にしてきました。
これからは、自分が天下を操る。
そういう決意表明です。
そんな自分を止める人物がいれば、
信長が許しません。
義昭からの書状が躑躅ヶ崎の館に届けられます。
天下を獲るつもりの信長に対抗し、
義昭は、信玄に上洛を強く求めています。
信玄は、自分に残された時間が少ないことを
分かっていたのかもしれません。
床に入っていたナゾの女が、高坂に耳打ちします。
「悪い噂聞きました。お屋形さまが重い労咳とか」
表情を変える高坂です。
永禄12(1569)年6月、
北条氏政と上杉輝虎との間に「越相同盟」が締結される。
慶長20(1615)年5月7日、
大坂夏の陣にて真田信繁が討ち死にするまで
あと45年11ヶ月──。
脚本:田向 正健
原作:新田 次郎「武田信玄」
音楽:山本 直純
タイトル題字:渡辺 裕英
語り(大井夫人):若尾 文子
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[出演]
中井 貴一 (武田信玄)
柴田 恭兵 (上杉輝虎)
紺野 美沙子 (三条の方)
石橋 凌 (織田信長)
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村上 弘明 (高坂弾正)
美木 良介 (馬場信春)
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橋爪 功 (真田幸隆)
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佐藤 慶 (阿部勝宝)
小川 真由美 (八重)
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制作:村上 慧
演出:重光 亨彦
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