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2016年5月31日 (火)

プレイバック武田信玄・(41)月夜の鏡

Q.八重という女性についてどう思いますか?

──恐いオバさん?

──お姫様をこうずっと見ていかなきゃならないでしょ?
  だからあのぐらいのこう、知恵と腕力がなければ
  ダメじゃないのかしら? ……と。

──特にアタシたちは女子校だから、だから余計分かると思うんですよ。
  女の子のヤなところ全部寄せちゃった、みたいな。

──あぁ偉い人ですよあの人ほんと八重という人は。
  普通、あれだけの尽くす人はいないでしょうと思いますよ。
  だけど、やはり見方によって違いましょうね、見る人によって。

八重にとって、三条の方は「神」そのものであった。
八重は、自らの悲しみのために泣いたことはなく
三条と、その子どもたちのためにのみ泣いた。

しかしその涙は、いつしか怒りと策略へとすり変わり
武田家を大きく揺り動かすことになったのである。


諏訪勝頼や山県昌景たちが刺客たちから襲撃を受け
みな武田信玄の元に集まってきます。

刺客たちを撃退し
落命寸前で言った「八重どの……」という言葉から
山県は八重の仕業に違いないと
今度こそ八重を白状させると息巻きます。

勝頼も襲撃を受け、右腕を負傷しますが
信玄の身が心配だと、駆けつけます。
しかし、躑躅ヶ崎の館内に悪者がいるからと
阿部勝宝は、勝頼を高遠に引き揚げることを提案。

悪しき者などおらぬ! お館内に乱れ生じさせるおつもりか! と
怒鳴りつける倉科三郎左衛門に、阿部も負けてはおりません。
「乱れ畏れて手こまねいておりますれば、猫も虎になりまする!」

信玄は、自分を守りたいという勝頼の気持ちに感謝しつつ
阿部の言う通り、高遠に引き揚げるように命じます。
そして倉科に、八重に出頭させます。

「なぜ勝頼を襲わせた?」
求めに応じて信玄の前に現れた八重に、
信玄はストレートに尋問します。

まぁ、八重も知らぬ存ぜぬと通すのは分かっておりますが、
信玄はその言葉をスルーし、事の真相がハッキリするまで
八重を閉じ込めておくことにします。


病床の三条の方が八重を呼び続けます。

三条は、八重が今回の騒動のことで
閉じ込められていることを知らないので
呼んでいることを知った信玄が事情を説明しようと
三条の寝室に向かおうとしますが、

三条はすでにお別れの挨拶は終えているので
お会いできないと面会を拒絶するわけです。

ただ、30余年連れ添った夫婦のことです。
断れば、信玄は無理にでもやって来るでしょう。
それを察知した三条は、少しでも身だしなみを整えようと
侍女の浅黄に鏡を持って来させます。

月夜の夜に鏡で自分の顔を写すというのは不吉なことで
浅黄は裏方には鏡はないと断りますが、
何度も懇願されては、断り続けられず
求めに応じて持ってきてしまいます。


キャアアアァァッ……。

三条の寝室から、か細い悲鳴が聞こえます。
信玄が寝室に駆けつけると、
先ほど持ち出した鏡が床に落ちたか割れています。

震える三条の肩に手を乗せる信玄ですが、
三条はビクッと震え、信玄に見えないように顔を隠します。
「この三条、もはや死神に取り憑かれましてござりまする」

拒絶する三条にかまわず、信玄が三条の身に触れてみると
とても冷たくなっています。
なんという冷たさじゃ、と
信玄は三条の後ろから抱きしめ温めます。

「醜きは病じゃ。そなたではない」
三条は涙を流して、信玄の温かさを感じています。


八重は、途端に腹を押さえて苦しみ出します。

部屋の外の見張りの家臣が心配して八重に声をかけますが、
八重は身体を折り曲げて苦しんでいます。

家臣はどうしていいか分からず
身体をさするぐらいしかできないわけですが、
八重はその隙に、家臣の脇差しを抜き
刺して脱走を図ります。


逃げる八重。
八重を追いかける山県。

「そこの妖怪!」
ビクッとして振り返る八重は
山県目がけて走り出します。

その手には、先ほど家臣を刺して
血の付いた刀が握られています。
しかし、いくら八重とは言っても
男と女の勝負では勝てるようなものではなく。

刀を手から離した八重は、山県に自分を刺せと迫りますが
そんなことをすれば、信玄に切腹を命じられるかもしれません。
「そちの首刎ねるお役目願い出て、地獄の底へ送って遣わすッ!」


ただ、山県、原、それに武田信廉が揃って
八重の首を取ることを願い出ますが、
母代わりの八重の命がなくなることで
三条への影響を考えた信玄は、八重の処分を先延ばしにします。

そして、三条の容体を京の三条家に書状で知らせます。


「誰か……誰か……」
三条のかすれ気味な悲鳴が、館内にこだまします。


脚本:田向 正健
原作:新田 次郎「武田信玄」
音楽:山本 直純
タイトル題字:渡辺 裕英
語り(大井夫人):若尾 文子
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[出演]
中井 貴一 (武田信玄)
紺野 美沙子 (三条の方)
大地 真央 (里美)
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池上 季実子 (恵理)
岡村 菁太郎 (原 昌胤)
篠田 三郎 (山県昌景)
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浜村 純 (倉科三郎左衛門)

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佐藤 慶 (阿部勝宝)
小川 真由美 (八重)
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制作:村上 慧
演出:大森 青児

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