プレイバック武田信玄・(49)幻の都
武田信玄 怒濤の生涯──。
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二俣城攻略
美濃・岩村城攻略
遠江・三方ヶ原の合戦
三河・野田城攻略
「我、戦うこと百三十余たび」
武田信玄の53年にわたる生涯は、
まさに戦に明け、戦に暮れる戦いの日々であった。
と同時に、信玄堤に代表されるような
治水や土木工事、金山の開発、甲州法度の制定など
きわめて現代的なセンスをもって
甲斐や信濃などの領国平定に力を注ぐ人生でもあった。
戦いと国造りに追われる一方で、
人間・武田信玄の生涯は孤独であった。
父との諍い、妻・三条との愛の確執、長男・義信との対立、
そして我が身に降りかかった、労咳という不治の病。
しかし、今大いなる犠牲と努力の果てに、
戦国最強の武将・武田信玄の夢は達成されようとしていた。
たとえ明日という日に、どんな災いが待ち受けていようとも。
「生きてみろ──生きるんだ」
三河国・野田城を落とした武田信玄は
そのまま軍勢を西に向けるつもりでいましたが、
尾張を目の前に、ついに倒れてしまいます。
「病ことのほか重く、これ以上
軍勢とともに動かれること、ご無理かと存じまする」
御宿監物の診立てに、なお表情を暗くする家臣たちです。
かつて信玄は、我が身に何か起こっても
そのまま京の都を目指せと武田信廉や諏訪勝頼に伝えていました。
その言葉に則れば、勝頼を中心にして軍勢を率い
信廉を信玄の影武者としてこのまま西進すべきです。
現在の武田軍は破竹の勢いなので、一度甲斐に戻って
再度上洛の途についても、またもうまく事が運ぶとは限りません。
せっかくここまでやってきたので、いつもどおりに振る舞って
京を目指すしかなさそうです。
ただ、仮に敵をごまかせて京の都に立ったとしても
そこに信玄の姿がなければ、
何もかも動かなくなるという懸念もあります。
あるいは、病気が重い信玄のことで頭が一杯になり
戦どころではない、という山県昌景の考えもあります。
信玄は、なぜ軍勢を動かさないのかと信廉を叱り
急いで軍勢を西に向けよ、と改めて指示します。
自らは病床にあって動けないと理解している信玄は
この寺で吉報を待つつもりです。
将軍・足利義昭に、和睦の話を断られた織田信長は
誰が将軍の座につけてやった!? とご立腹です。
野田城を落として未だに動く気配のない武田軍に、
信長は家康に、武田の背後を攻撃せよと使者を送り、
家臣の市川大門には、もし信長の身に何かがあったら
二条城に火をかけ、義昭の首を刎ねよと命じます。
武田軍が、ついに動き出しました。
信長はとても焦り、
義昭はとても喜んでいます。
信長の命を受けた家康ですが、武田の背後をつけと言われても
二俣城や野田城にも武田の軍勢が入っている以上、
逆に徳川軍が挟み撃ちにされてしまいかねません。
今は武田の動きを注視し、城で待機するしかありません。
迎え討つ側の信長は
野田城──岡崎城──那古屋城──清洲城──岐阜城
と連なる周辺の地図を前に、
あれこれと策略を考えています。
ところが、武田軍は北側に位置する長篠城に向かっていて
信長のいる岐阜城には向かっていないという報告を受け、
長篠城に引く意図を計りかねています。
長篠城に入った武田軍。
もちろん信玄も一緒です。
30,000の将兵がいるはずの城内は静まり返り、
全く動きがありません。
野田城を落としたのが10日、長篠城に入ったのが17日、
そして今日が20日であります。
策を弄するには間が空き過ぎています。
「かねての噂通り、信玄、病かもしれぬ」
信長はこのチャンスを逃さず
武田軍が尾張に近づかないうちに
浅井を討ち取るべく出陣の用意をさせます。
1ヶ月の間、信玄は病気と闘いますが
いい兆しは見えず。
軍勢も長篠城に留まったままです。
信長はあっという間に近江を平定し、
義昭のいる二条城を取り囲みます。
「武田信玄、何をしておるのじゃ……」
ひとり、時代に取り残されている義昭だけが
今、何が起こっているかを理解しないまま
途方に暮れています。
恐らくは、信玄は床を離れることはできないだろう、と
信廉は判断し、軍勢を甲斐に引く決心を固めます。
そこに、原 昌胤が信廉に耳打ちします。
「まことか!? ……父上が京より参られたのじゃ」
京の都にいた信虎は、軍勢が動かないのを見て
居ても立ってもいられず、信玄の見舞いにやって来たそうです。
父を駿河に追って30年余り。
駿河を出て京の今出川家に身を寄せて
武田の軍勢が入京するのを導いているのに、
なかなかやって来ないのにしびれを切らしているわけです。
その気配を感じ取ったか、信玄はふと目を開け
そのまま気を失ってしまいます。
「晴信! 何をしておるのじゃッ! 目を覚ませ!
天下は夢の中にあらず、夢の中にあるは幻の都のみぞ」
4月に入ってすぐに、長篠城から帰国の途につきます。
しかし、軍勢が伊那に入って
信玄の様子が急変します。
元亀4(1573)年4月、
武田信玄の病気療養を理由に、甲府への撤退を決意する。
慶長20(1615)年5月7日、
大坂夏の陣にて真田信繁が討ち死にするまで
あと42年1ヶ月──。
脚本:田向 正健
原作:新田 次郎「武田信玄」
音楽:山本 直純
タイトル題字:渡辺 裕英
語り(大井夫人):若尾 文子
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[出演]
中井 貴一 (武田信玄)
大地 真央 (里美)
石橋 凌 (織田信長)
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村上 弘明 (高坂弾正)
篠塚 勝 (武田信廉)
岡村 菁太郎 (原 昌胤)
美木 良介 (馬場信春)
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中村 橋之助 (徳川家康)
河原崎 建三 (梁田政綱)
大門 正明 (市川大介)
市川 団蔵 (足利義昭)
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佐藤 慶 (阿部勝宝)
篠田 三郎 (山県昌景)
平 幹二朗 (武田信虎)
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制作:村上 慧
演出:重光 亨彦
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