プレイバック秀吉・(03)運命の花嫁
「今日から小者頭をせい」
「ただの小者ではござりませぬか」
「小者頭じゃ!!」
「……ごもっとも!」
小者とは、会社で言えば正社員とは言えない
言わば見習社員にあたる。
戦では、食糧の補給や馬の世話など雑務を行っていた。
小物を束ねる小物頭、日吉はいまこの地位にある。
武士として正社員となる足軽は、ひとつ上の身分である。
おやかた様……いわゆる会社の社長である。
「おやかた様」社長
「侍大将」部長
「足軽大将」課長
「足軽頭」係長
「足軽」正社員
「小物頭」見習社員チーフ
小物頭の日吉と、おやかた様には、
まだこれだけの身分の違いがあった。
この身分が上がっていくきっかけが、戦である。
史上最大の逆転劇とも言える桶狭間の戦い、
この戦の論功行賞、誰の手柄が評価されるか。
人々は固唾を飲んで見守っていた──。
永禄3(1560)年5月・清洲城──。
大広間で、桶狭間の戦いの論功行賞が行われます。
一番手柄は、今川義元の首を取った毛利新介、
あるいは一番槍をつけた服部小平太のどちらかだと
誰もが思っていましたが、
信長が一番手柄としたのは、今川義元が桶狭間で
軍勢を休ませていると知らせてくれた
梁田政綱こそが戦功の第一としたのです。
加増3,000貫、沓掛城を与えられます。
拾阿弥を斬って出仕停止を食らっていた前田犬千代は
今川方の武将ふたりの首をとって帰参を願い出ていましたが、
検分は必要ない、と信長は犬千代の相手をしません。
日吉は信長の命令で、組頭の浅野又右衛門の下で
足軽として働くことになりました。
浅野又右衛門とは、おねの養父であります。
又右衛門は日吉のことが苦手でありまして
どうしたものかと困り果てていましたが、
日吉も、ちょうど都合のいいことに断ってきまして
この話自体なかったことにします。
ただ、妙な噂が流れていて
日吉が娘に祝言を挙げたいなどと言ったという噂です。
それは日吉は本気だと譲りませんが、
又右衛門はそれこそ本気で困ってしまいます。
結局、おねの意見で信長の指図通りとなりましたが、
それはおねが日吉のことを認めたわけではありません。
むしろ逆で、おねと日吉の間に大きな壁が立ちはだかりました。
ただ、誰もが分からない日吉への小さな思いが、
おねの胸に花開いたのかもしれません。
清洲城から20kmあまり離れた生駒屋敷には
信長の実質的妻である吉乃がいました。
吉乃に美しい綸子(りんず)を持ってきた蜂須賀小六ですが、
いつものように、吉乃はいらないと断ります。
信長が美濃を攻めるにあたって
蜂須賀党に助力してほしいと考えているようですが、
小六は信長のことが大嫌いなので、即答はしません。
小六から譲り受けた綸子をおねに上げようと
浅野屋敷に戻る日吉ですが、
犬千代の許嫁・おまつに綸子を見つけられ、
取り上げられそうになります。
それを見ていたおねは、
私の方が似合うと思う、と綸子を奪い取ります。
「今日、おねは嬉しかったのです。今日だけです」
仕官先を求める明智光秀は
突然、稲葉山城城主の斎藤竜興に呼び出されます。
わしに仕えよ、ということなのですが、
「お断り申す」と光秀は頭を下げます。
その断り方が癪だったのか、竜興は激怒するのですが
竹中半兵衛の予想通り、光秀暗殺に忍びを送り込みます。
ただ、それを予め察知していたので、
明智家から脱出していて光秀や家族は無事でした。
村祭りの夜。
蛍が飛び交う中を、
ふてくされた顔の日吉が歩いてきます。
その先には犬千代が待っていて、
奥の方を指さし、日吉の背中を押します。
そう、犬千代が指さした先にはおねがいるのです。
日吉は、ぎこちないながらもおねを守り、
先導して歩いて行きます。
小さな沼があり、そこに蛍が集まっています。
その光を見つめ、おねは日吉を見つめます。
「日吉殿、何ゆえこのようにたくさん……
雪のように蛍が沸くのでしょう」
「運命でございましょう。私とあなた様の」
その言葉に感動する日吉でしたが、
次の瞬間にはサッと我に返り
ご無礼を! と平伏します。
おねは、そんな日吉の手を握り
顔を上げた日吉と抱きしめ合います。
しっかりと。
しっかりと。
数日後、日吉がおねを手込めにしたという話が出て
又右衛門とあさひが日吉を問いつめます。
しかしおねが「良い」と意思表示をしてのことで
日吉は信長に殺されても構わない、と言います。
悔しいあさひは、日吉の背中を扇子で殴り続けますが、
次の瞬間、驚きの光景を目のあたりにします。
土砂降りの中、おねが日吉の横に座り、頭を下げたのです。
「おねは、日吉殿の妻になります」
感動のあまり、泣きじゃくる日吉です。
永禄4(1561)年・夏──。
実家に戻った日吉は、おねとの祝言のために
小竹に清洲に来て参列してくれと頼み込みます。
いつも以上にハイテンションな日吉を見ていて、
珍しく、日吉の目にかげりがありました。
なかは、恐らくは誰からも祝福されない
祝言なのだろうと瞬時に理解します。
清洲城下にたどり着いた日吉と小竹。
おねと新生活を始める新居
……といってもぼろぼろの掘建て小屋ですが
そこに足を踏み入れると、
とても美しいおねが座って待っていました。
そんなおねに見とれる日吉と小竹。
あまりの美しさにポカンと空いた口が閉まりません。
でも、小竹はこんなに美しい女性が
兄の嫁になってくれただけでとても幸せです。
日吉、おね、小竹、
犬千代、おまつの5人で始まった祝言です。
犬千代は、未だに出仕停止が解かれていないので
金がなく、大した祝儀は渡せていませんが、
日吉にとっては命の次に大事な人です。
そんなことはかまいやしません。
とそこに、家の外から馬のいななきが聞こえてきました。
いななきだけで、その主が信長であると瞬時に分かった秀吉は
家を飛び出し、信長に平伏します。
おねも、日吉の隣に並んで手をつきます。
信長は、自らが羽織っていたマントを放り投げ、
日吉はそれをおねに着せてやります。
帰っていく信長のお供で、おねを置いて
日吉は行ってしまいました。
大きな木の下まで駈けてきた信長。
それに従ってついてきた日吉。
名を与える、と信長は
日吉に新しい名を授けます。
『木下藤吉郎秀吉』
日吉は自分の名前をつぶやきます。
結局、秀吉は帰って来ませんで
初夜をひとりですごしたわけですが、
中村から、なかがわらじを持って出てきます。
家の外からおねを見て、
とてもキレイなお嫁さんだと安堵するなかですが、
おねが外に出てきたとき、ついつい身を隠してしまいます。
おねは、なかが落としてしまったわらじに気づき
それを胸に抱いて、お母さま……とつぶやきます。
「お会いしたかった……」
丹羽長秀の采配で、
清洲城の石垣の修理が行われています。
しかし、修理に1ヶ月以上を要していて、
敵に攻め込まれてしまう危険性を孕んでいます。
それを秀吉なら3日でやれると言うのです。
「できなければ、木下藤吉郎秀吉、切腹致しましょう」
言うたな、と柴田勝家が証人となります。
脚本:竹山 洋
堺屋 太一「秀吉」「鬼と人と」「豊臣秀長」より
音楽:小六 禮次郎
題字:森繁 久彌
語り:宮本 隆治 アナウンサー
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[出演]
竹中 直人 (日吉(秀吉))
沢口 靖子 (おね)
高嶋 政伸 (小竹)
赤井 英和 (がんまく)
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市原 悦子 (なか)
村上 弘明 (明智光秀)
有森 也実 (ひろ子)
斉藤 慶子 (吉乃)
白川 由美 (あさひ)
高松 英郎 (林 佐渡守)
篠田 三郎 (丹羽長秀)
大仁田 厚 (蜂須賀小六)
上條 恒彦 (斎藤利三)
織本 順吉 (佐久間信盛)
段田 安則 (滝川一益)
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野際 陽子 (美)
渡辺 徹 (前田犬千代)
中尾 彬 (柴田勝家)
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古谷 一行 (竹中半兵衛)
財津 一郎 (竹阿弥)
渡 哲也 (織田信長)
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制作統括:西村 与志木
演出:黛 りんたろう
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