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2017年1月24日 (火)

プレイバック秀吉・(05)男の値段

金が人の働きを左右する。
働き次第でいくらでも出世が望める戦国時代にあって、
これは真理である。

裸一貫から今や60人の配下を持つ足軽組頭になった秀吉、
その収入は200貫、
今の貨幣に換算すると1貫15万円として3,000万。
しかしそれを60人に分配するとひとり年収50万。

尾張を統一した信長で5万貫。今で言えば年収75億の
中小企業の社長といったところである。

手持ちの資金をどう動かすのか。
上に立つものの力量が問われる。

城、武器、馬、しかし最も肝心なのは
部下たちにいかに金を分配するか。
部下の能力に的確に値段をつけることこそ
経営者にとって最も必要とされた資質であった──。


永禄7(1564)年2月6日──。

蜂須賀屋敷に乗り込んだ秀吉は、
後ろ手に縄を縛られ、刀を突きつけられています。
(ちなみに突きつけているのはがんまく改め石川五右衛門)

織田信長は美濃攻略のために
蜂須賀党を手に入れたいわけですが、
それは美濃の斎藤側も同じでして、
すでに斉藤から調略の手が伸びてきております。

もし蜂須賀小六が織田方に与したならば
城をひとつ与え、さらに2,000貫与える、と約束。
斎藤方が提示した額の10倍です。
しかし、小六は金で動くような人間ではありません。

そんな時、急な知らせです。
美濃の稲葉山城では、家臣の竹中半兵衛が城を乗っ取り
城主の斎藤竜興を追放した、のだそうです。
この機に乗じて信長がこちらに向かっているとのこと。

小六は、信長を迎え討つ! と出て行きます。

「このオレを竹中半兵衛に引き渡せ。手柄になるぞ」
反発する五右衛門ですが、秀吉の言うように
縄でしばったまま美濃へ連れていきます。


驚いたことに、半兵衛は
クーデター成功後、竜興を諌めて城を返し
自らは庵に隠遁していました。

半兵衛なら美濃をどう攻めるかと尋ねると
ニヤリと笑った半兵衛は天を仰ぎ見ます。
「墨俣に城を築く」

墨俣は、木曽川・揖斐川・長良川が合流する地点で
そこを抑えれば、絶え間なく兵を送り込み
美濃を侵略することができよう、というのです。

ただ、と一息置きます。
「墨俣は美濃の領地だ」

織田方が悠長に城を作っていたら
斎藤方がすぐにでも攻めかかるだろう、と。
無理だと言いたいのですが、秀吉も負けません。
建ててみましょう、と言い出したのです。

「簡単でござる。一夜にしてでき申す」
一夜で城はできまするな、と問いかけられた半兵衛は
一瞬真面目な顔をしますが、フッと笑います。


美濃から生駒屋敷に戻った秀吉は
清洲からやって来た信長と対面します。

まずは小六調略の不調を詫び、
美濃で半兵衛に会ってきたことを報告。
半兵衛が、墨俣に城を築けば
美濃は落ちると言っていたことを伝えます。

「墨俣か……なるほど」
信長は前を見据えます。

奇妙丸と秀吉が外で遊んでいる間、
信長は越前からやって来た朝倉義景の家臣と対面します。

その武士とは、明智光秀。
松下嘉兵衛の下を出奔した秀吉が放浪中に
同じく放浪の身であった光秀と会ったことがありますね。

光秀は、いずれ信長が越前に攻め込むことを推測し
雨の中でも仕える「雨火縄」を信長に渡さなければ
織田と朝倉との戦で優位に立てると考え、
生駒屋敷で扱う雨火縄を全て買い占めたいと考えたようです。

信長に言わせれば、朝倉に攻め込むためには
近江の浅井を通らなければなりませんが、
光秀は、浅井とはお市を輿入れさせて
同盟を結ぶのが得策、と勧めます。

さらに光秀は続け、信長は将軍家を奉じて上洛し
天下に号令するつもりだ、と信長の考えをズバズバ当てます。
信長は、光秀を高く評価しますが、越前でもらっている禄高が
たったの100貫と聞いて「安すぎる」とつぶやきます。

「4,000貫出す」
朝倉には、自分たちが飢えていたところを
助けてもらった恩があるので、光秀は即答は避けます。


久々の家です。

秀吉は小一郎に、墨俣築城計画を打ち明けます。
墨俣に城を築けば、美濃はすぐに落ちる、という言葉が
頭から離れないのです。

小一郎は、意外な言葉をかけます。
「兄者、それはすぐにはやるな」

出しゃばって秀吉が志願しても
他の上役たちは面白いはずもなく、
先に誰かにさせた上で、失敗した時にこそ
秀吉の出番だ、というのです。

もし他の人が城を建ててしまったら。
せっかくのチャンスをみすみす
奪われることにもなりかねませんが……。
「他の人にできることを兄者がやっても仕方がない」

秀吉とおねがかおを見合わせ、頷きます。
やはり、小一郎はもっているものが違います。

あれだけ侍を嫌がっていた小一郎ですが、
侍の生き方も商いと同じだ、と
最近思うようになってきました。
高く売って大きく儲けた方が勝ちだ、と。


墨俣 (岐阜県安八郡墨俣町)──。

信長はさっそく墨俣に城の建設を始めますが、
半兵衛の指摘通り、それは困難を極めました。
柴田勝家も佐久間信盛もことごとく失敗。

信長は彼らを「能無しが!」と叱責します。

そこで、秀吉が名乗りを上げます。
しかも一夜で城を建てる、というのですから
家臣たちのみならず、信長も一夜城のことは信じません。

秀吉は許しなく、勝手に美濃の蜂須賀屋敷へ向かいます。


小六は相変わらずの対応ですが、
秀吉は、墨俣の一夜城について熱く語ります。
しかしそれを実現するためには、
蜂須賀党の力がどうしても必要なのです。

小六は、信長が嫌いなのですが、
このサルに力を貸して欲しい、と秀吉は言います。
秀吉は、小一郎を交えて
小さな模型を使って一夜城のからくりを説明します。

秀吉と蜂須賀党は木曽川の上流へ行き
今から伊勢北畠家を攻めると噂を流します。
そのために必要だ、ということで
木曽川上流の木材を切っていきます。

もし美濃方に漏れても、信長は美濃が手強いので
矛先を伊勢に向けたと思わせれば大丈夫でしょう。

そして切った木で、家、柵、屋根、床板など
城のパーツを作り、それをいかだに組みます。
そのいかだを、夜陰に紛れて
木曽川の流れに乗って墨俣へ流します。

墨俣に到着した資材を、墨俣で組立てます。
日が上がってみれば、城が突然現れる仕組み。
これぞ一夜城であります。

「サル! ワシらを使ってみねえか?」
泣いて感動している小六に言われて、
秀吉は土下座して礼を言います。


翌日、秀吉は
蜂須賀党を引き連れて凱旋します。

秀吉による一夜城築城計画がスタートしますが、
事は容易には進みませんでした。


脚本:竹山 洋
堺屋 太一「秀吉」「鬼と人と」「豊臣秀長」より
音楽:小六 禮次郎
題字:森繁 久彌
語り:宮本 隆治 アナウンサー
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[出演]
竹中 直人 (秀吉)
沢口 靖子 (おね)
高嶋 政伸 (小一郎)
赤井 英和 (石川五右衛門)

市原 悦子 (なか)

村上 弘明 (明智光秀)
有森 也実 (ひろ子)
斉藤 慶子 (吉乃)
高松 英郎 (林 佐渡守)
織本 順吉 (佐久間信盛)
篠田 三郎 (丹羽長秀)

大仁田 厚 (蜂須賀小六)
上條 恒彦 (斎藤利三)
中尾 彬 (柴田勝家)
野際 陽子 (美)
──────────
古谷 一行 (竹中半兵衛)

渡 哲也 (織田信長)
──────────
制作統括:西村 与志木
演出:佐藤 幹夫

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