プレイバック秀吉・(06)一夜城
大将の側に金の唐傘。
織田信長の馬印である。
馬印は誰でも持ったわけではない。
長篠の合戦の図で見ても、
織田軍で馬印を持っているのは6〜7人だけ。
特に、お館さまの許しを得た
一握りの重臣しか持つことができなかった。
秀吉の馬印、瓢箪に金の切り裂き。
柄鶴竹に金の短冊の丹羽長秀。
金の御幣(ごへい)は柴田勝家。
なぜ、いずれも派手なのか。
ひとつは雑兵から指揮官の位置が一目で分かるようにするため。
もうひとつは、総大将に戦場での活躍を注目してもらうため。
馬印は武将たちの宣伝活動。
今で言えば広告塔。
馬印を手に入れて、自分の大宣伝をしたい秀吉であった──。
永禄9(1566)年・夏。
木下藤吉郎秀吉は、蜂須賀小六をはじめとする
およそ1,000名の、美濃川浪衆を支配下に置きます。
だが、秀吉にはまだ1,000名を養えるだけの力はなく
信長は秀吉のために1枚の書状を書き記します。
『一夜城築城成功で2,000貫の加増』──。
一気に家来が増えたことで、
小一郎は金子を借りに出かけます。
まあ、秀吉はひとまず加増されたので
貧乏な暮らしもちょっとの間だけになりそうです。
で、その帰り、
茶碗をいろいろと手に取って眺めていますと
あの時の商人、千 宗易とまた再会します。
63文で買った茶碗を100貫で売った話を
小一郎が宗易にしますと、
宗易はなぜそれを知っているのか不思議に思いますが、
小一郎が秀吉の弟と聞いて、納得です。
小一郎は宗易を秀吉の家に案内します。
秀吉は宗易に、信長にもらった書状を見せますが
「東美濃の中から」という但し書きが気になります。
現在、東美濃は斎藤氏、つまり敵の領地であります。
ぬか喜びか、と小一郎はたちまち不機嫌になりますが、
秀吉は前向きに捉えます。
信長は秀吉に、一夜城を拠点として
東美濃を攻略し、その中から2,000貫を与える、
ということを言っているわけです。
7月に入ると、信長は一夜城への合力はせず
伊勢の北畠攻めを号令します。
小六率いる川浪衆は木の切り出しをやっておりまして
斎藤からの攻撃を防ぐ者はおりません。
秀吉は前田犬千代を信長の陣に向かわせ、
一夜城の秘策の決行を今夜と伝えさせます。
その日は、嵐になりました。
そんな中、墨俣に
またたく間に柵や櫓が建ち始めます。
翌朝、明るくなると
仮ではありますが城が建ってしまっています。
それを、竹中半兵衛庵から見ています。
「……美濃は終わった」
美濃勢はただちに墨俣に出陣。
斎藤竜興自身が美濃勢を指揮して
一夜城を踏みつぶそうとします。
そこに、信長率いる織田軍が加勢に入り
斎藤軍は蜘蛛の子を散らすように逃げて行きます。
が。
秀吉が増長して手作りの馬印を立てたものだから
信長の叱責を食らい、さらには
秀吉が止めるのも聞かずに小一郎が褒美を求めたため、
「棗(なつめ)」の茶道具を与えられます。
秀吉は信長に無礼な物言いをした小一郎を殴りますが、
小一郎や小六たちは、茶道具では飯は食えないと
大勢が小一郎の味方です。
そのころ、明智光秀は越前一乗谷で
思いがけない人物と出会います。
足利義昭です。
室町幕府第13代将軍・足利義輝は先年殺害され
寺に入っていた義昭は還俗して
14代将軍の座を目指していました。
信長と一度だけ会ったことがあるという光秀に
義昭は、信長への仲介を依頼します。
自分は朝倉義景の家臣だ、と断る光秀に、
「将軍に仕えよ」と義昭は答えます。
棗を持って自宅に帰る秀吉。
おねは、ようやく帰参が叶った
前田犬千代の妻・おまつによって
秀吉がもらった一夜城の褒美が
棗1つだったことを知らされるわけですが、
信長が好む茶の道、
その茶道具をもらえるということは
秀吉は信長の側にいられるということだ、と
おねは前向きに捉えます。
さっきまで笑顔でおねと接していたなかは
家の外で中の様子を窺っている秀吉と目が合い
急に素っ気なく帰ろうとします。
「褒美だとかなんだとかそんなことばっかり考えとらんで
自分の出世の影で夢を散らした人もおる、いうこと」
美濃の人たちだっていろんな夢があったはずだで、と
なかは言い置いて帰っていきます。
見送るおねは、裏手で秀吉の泣き声に気づきます。
棗1コもらった……と泣きじゃくる秀吉。
「ようございました」と母親のように愛情で包みます。
脚本:竹山 洋
堺屋 太一「秀吉」「鬼と人と」「豊臣秀長」より
音楽:小六 禮次郎
題字:森繁 久彌
語り:宮本 隆治 アナウンサー
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[出演]
竹中 直人 (秀吉)
沢口 靖子 (おね)
高嶋 政伸 (小一郎)
赤井 英和 (石川五右衛門)
涼風 真世 (おたき)
市原 悦子 (なか)
村上 弘明 (明智光秀)
有森 也実 (ひろ子)
中村 あずさ (おまつ)
高松 英郎 (林 佐渡守)
上條 恒彦 (斎藤利三)
篠田 三郎 (丹羽長秀)
大仁田 厚 (蜂須賀小六)
中尾 彬 (柴田勝家)
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玉置 浩二 (足利義昭)
浜畑 賢吉 (細川藤孝)
渡辺 徹 (前田犬千代)
野際 陽子 (美)
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仲代 達矢 (千 宗易)
古谷 一行 (竹中半兵衛)
渡 哲也 (織田信長)
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制作統括:西村 与志木
演出:柴田 岳志
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