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2017年3月24日 (金)

プレイバック秀吉・(22)母御前、はりつけ

ポルトガル──。

「カルタ・carta」「ボタン・botão」
「メリヤス・melas」「コンペイトウ・confeito」
「カステラ・bolo de Castela」

南蛮人の到来により、日本語になったポルトガル語は
食べ物や着るものを中心に広まった。

南蛮人の上着である「襦袢・gibão (じゅばん)」は
日本では着物の下に着られ、やがて肌着となった。
南蛮人のズボンである「軽杉・calção(かるさん)」も
現代の農村に仕事着としてその名が残っている。

馬の蹄鉄も、南蛮から入ったもののひとつである。
それまでは、わらじで作った沓(くつ)で
馬の足を守るだけであった。

「ビー玉・vidro-dama」「シャボン・sabão」
「かぼちゃ・cambôdia」「天ぷら・tempora」

秀吉たちが出会った南蛮文化。
その息吹は、現代にも生きているのである──。


天正7(1579)年・初夏──。

中国播磨から安土城に戻って来た秀吉と小一郎、竹中半兵衛。
対毛利との戦が首尾よく終わり、
毛利に大打撃を与えることが出来たということで
信長に褒美をもらえると浮かれ気分の3人ですが、

ふと庭に目をやると、
注連縄(しめなわ)と紙垂(しで)がつけられた
『信長公御神體』とある大きな岩に
家臣たちが手をついて頭を下げているのです。

秀吉も、信長の強さにあやかって
庭に降り、手を合わせますが、
ふと脇に目をやると、
明智光秀が座ったまま目を瞑っています。

そこに現れた信長は、首もとにはラッフルという白いひだ襟、
ケープ(赤いマント)にトランクフォーゼ(ズボン)という
南蛮人の格好をしていまして、
その姿を見た家臣たちは度肝を抜かれたわけです。

秀吉は信長に「あまり似合いませぬな」と正直に言って
黙れいっ!! と怒鳴られてしまいますw

で、御神體というこの岩を前田利家や柴田勝家らが
本気で拝んだことに、信長はご立腹です。
拝めというから拝んだのに、拝んだら拝んだで怒られるとは
拝んだ方としては少し合点がいかないかもしれません。

つまり、この岩を拝んだ織田家家臣たちは
この岩以下の価値しかないというわけです。

そこで、岩を拝まなかった光秀です。
岩を拝むほどの働きはしていない、といいつつも
これまで目を見張るほどの働きを続けてきた光秀です。

これから織田が目指すべき、全国一統への道を示し
まずは丹波に全軍を集める、と信長がつぶやいたときの
「そうなさりませ」という光秀の一言が、
信長はカチンときます。

その様子を一部始終見ていた千 宗易は
信長が光秀に怒っていると感じます。
「いささか……出過ぎましたな」


光秀が自邸で茶会を催しています。
参加者は、宗易、秀吉、細川藤孝、
細川忠興、斎藤利三、明智秀満。

藤孝は、足利義昭でさえ滅ぼそうとする信長が
光秀の最近の権勢に何も感じないのが不思議で仕方ありません。
秀吉は頷き、油断は禁物だと忠告しておきます。

美は、たとえ岩であっても
信長が拝めと命じたのであれば拝むべきだと主張。
秀吉のような一心不乱の忠節が、信長は欲しいわけです。

かつて信長に献上した名馬も、
自分には過ぎたる馬ゆえ光秀が、と言われて光秀に戻されたとき
あるいは藤孝の子・忠興と愛娘・たまとの婚儀の際に
とてもたくさんのお祝いの品を届けてくれたとき、

信長は、相手がどういう行動に出るか
ジッと見ているというのです。

控えめな言動を求める美と
信長に対する忠節を形に示そうとするひろ子。
その嫁・姑のいがみあいは、光秀が取り組んでいる
波多野の八上城に入る人質問題にそのままスライドします。

「わたくしが人質となり、波多野の八上城に参りましょうか」
ひろ子をギッと睨みつける美。
ギョッとした表情を向ける秀吉、宗易。

たまは慌てて母を制し、客人である宗易、秀吉らに
「聞かぬことにしてくださりませ」と頭を下げるたま。


ひろ子が八上城に人質に上がるという話を
秀吉が小一郎と滝川一益にしていたのを
なかは偶然に耳にしてしまいまして、

美が嫁を人質に出すはずがないから
美自身が人質に入るだろう、とおなじ母の勘です。


美は、羽柴屋敷に入り半兵衛の看病をしています。
最近では、半兵衛の病が自分に移ってもいいから
半兵衛のそばにいたいと強く思うようになっていました。

耳あかも取り、爪も切り、ヒゲも剃り、髪も結い直す。
半兵衛が冗談で「布団にも入ってくださいませぬか」と言えば
美は、もう少し自分が若かったら……と唇を噛みます。
それぐらい、半兵衛のことが好きなのです。

美は今までを振り返り、
自分が予想した通りに世の中が運んでいったことで
光秀が予想以上に早く出世できたと語りますが、
それが逆に“早すぎた”とも思うようになっていました。

秀吉のように、もっともっと苦労していれば
信長も心地よく思ってくれるのでしょうが、
光秀は苦労を知らずにのし上がったものだから
信長のご機嫌を損ねることになるかもしれません。

だからこそ美は、無類の忠節を示す必要のある光秀のために
自分のこれからを、八上城に人質として入り
そこで死ぬ運命だと悟るのです。
「お別れにございます」


なかは、無病息災の縁起物として
自ら編んだ草蛙を美に届けます。

しかし美は、草蛙を受け取りません。
命を捧げなければならない時に迷っていては
光秀の名折れになってしまいかねないのです。

草蛙をいただいたことは、
しっかりと胸に刻んでおくつもりです。

なかは、美のような由緒正しい、高貴な女性が
秀吉の母というだけでお声かけしてくれて
とても嬉しかったようで、頭を下げて礼を言います。

「光秀を……どうか……よろしくお願いいたします」
美は大粒の涙をポロポロ流し、なかに頼みます。

半兵衛も秀吉も、波多野に人質に上がる必要もないが
仮に上がったとしても、波多野ならば
美を大切に扱ってくれるだろう、という
希望的観測があったのは否めません。


「和睦は許さぬ。波多野は一兵残らず斬ることじゃ」
希望的観測が狂い始めたのは、信長のこの一言からでした。


美を人質として八上城に入れることで
態度を軟化させた波多野は、城主自ら城を出て
城兵たちの命を助け、領土を安堵することを条件に
織田方との和睦を結ぶことにします。

その後は明智傘下に入り、丹後を攻めて
播磨に討って出て毛利を攻め立てることを約束。
光秀は、酒を呑みながらニンマリです。


7月、織田軍は丹波に進撃。

信長が波多野一族を皆殺しせよとの命令を聞く前に
光秀が波多野と和睦を結んだため、
話がおかしくなってきました。

波多野はすでに八上城を出て人質として京に向かっています。
それは、美が助命嘆願との引き換えに
人質として八上城に入っているからであります。
秀吉は急いで、信長と光秀のいる二条城に向かいます。

しかし、秀吉が二条城に到着した時には
信長が波多野秀治を斬った後でした。

さらに光秀には、すぐに丹波に戻って
波多野一族を皆殺しにせよと冷酷な命令です。

「鬼……鬼じゃ……織田信長は鬼じゃあ!」
狂乱した秀吉は、刀を抜いて斬り掛かろうとしますが
宗易に殴られ、庭に突き落とされます。
光秀は、肩を震わせながら平伏したままです。

秀吉は、信長が恐ろしい人物で
これが元で家臣たちの気持ちが
信長から離れていくことを心配します。


磔にされた美。
槍先をチャキンと合わせ、執行開始です。
「光秀……」


脚本:竹山 洋
堺屋 太一「秀吉」「鬼と人と」「豊臣秀長」より
音楽:小六 禮次郎
題字:森繁 久彌
語り:宮本 隆治 アナウンサー
──────────
[出演]
竹中 直人 (秀吉)
沢口 靖子 (おね)
高嶋 政伸 (小一郎)
川上 麻衣子 (おかつ)

市原 悦子 (なか)

村上 弘明 (明智光秀)
有森 也実 (ひろ子)
田村 英里子 (たま)
段田 安則 (滝川一益)
篠田 三郎 (丹羽長秀)

中尾 彬 (柴田勝家)
上條 恒彦 (斎藤利三)
浜畑 賢吉 (細川藤孝)
──────────
渡辺 徹 (前田利家)
野際 陽子 (美)
──────────
仲代 達矢 (千 宗易)

古谷 一行 (竹中半兵衛)
財津 一郎 (竹阿弥)

渡 哲也 (織田信長)
──────────
制作統括:西村 与志木
演出:黛 りんたろう

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