プレイバック秀吉・(23)半兵衛の死
デカンショ祭りの季節が間もなくやってくる。
ここは丹波篠山、デカンショ節に歌われるように
山に囲まれた厳しい暮らしの中で
人々が工夫を凝らし、生み出した数々の名産を誇る町。
「ぼたん鍋」「黒豆」「栗」「山の芋」
しかし戦国時代、ここも欲望渦巻く土地であった。
周囲の山々に点在する戦国の城。
その一つ、丹波富士とも言われる高城山にそびえていた
波多野秀治の居城・八上城。
かつての面影を辿ってみると、そこには
光秀の母が磔になったといわれる松の跡がある。
青々と茂る木々に囲まれたこの場所で
なぜかこの松だけが何度植え替えても
枯れてしまうという──。
天正7(1579)年 夏・丹波八上城──。
信長が城主・波多野秀治を殺し
一族を皆殺しにせよ、と光秀に命じたということは
つまりは人質として八上城に入った美の命が
危ういということです。
蜂須賀小六たちが必死に止めるのも聞かず、
母御前を助け出すんだ! と秀吉は城に駈けていきます。
気絶していた家臣の溝尾庄兵衛が目を覚まし
磔にされている美の姿を見て仰天します。
しかしここは救出が先決と、
この人は殺しても意味のない女だ! と言って
処刑を回避しようとしますが、無駄のようです。
波多野の兵は、主が殺害された恨みを晴らすべく
光秀が八上城にやって来た時に、見せしめとして
彼の目の前で美を殺そうということになり
しばらく待つことになりました。
安土城では、信長を追いかける石川数正の姿が。
愛娘・徳姫の書状で、
家康の正室・築山殿と嫡男・松平信康が
武田勝頼と通じているということが分かり
信長は家康に対して、築山殿と信康を殺せと命じます。
たまたまその場に居合わせた、佐久間信盛と林 佐渡守は
光秀の母に続き、家康の妻と子とは恐ろしい、と
信長の背中を見つめながらポツリとつぶやきます。
八上城の、美が磔にされているところに着いた光秀と秀吉。
秀吉は、美を助けてくれたら
城兵の命と領地安堵の保証をする、と宣言しますが、
光秀はそれを止めます。
ゆっくりと、美の方に進む光秀。
母御前!
相済まぬことにござるが、
この光秀の夢のため!
お命……くださりませ!
「母は……子のために命を捨ててこそ本望」
鬼は、きっと誰かに退治される、という美は
最期に、子に道を指し示します。
天下を……!!
次の瞬間、槍が美の身体を貫きます。
何度も何度も、刺す鈍い音が響き渡ります。
その時、波多野の兵を銃撃する軍団が。
織田信忠の軍です。
それにより、波多野兵は全滅します。
亡きがらを見つめる、秀吉と光秀。
遺体を整え、斎藤利三は
亡きがらを近江坂本城に送ります。
そんな時、信長が弔いにやって来ると聞き
光秀は鼻で笑い、反発します。
しかし、信長を前に
光秀はいつも通りの冷静さで対応します。
「光秀……すまぬ」
「私こそ、お屋形様にご相談もせず、一族の助命、
領地安堵などと勝手な振舞いお許し下さいませ」
しかも、美のことを母ではなく乳母であるので
ご心痛には及びませぬ、と言ったところで
信長は目をカッと見開き、激怒します。
「こざかしいヤツめ!」
こんな仕打ちをうけながらなぜ信長に楯突かないのか。
なぜ涙を流さないのか。
なぜ「恨んでいる」と言わないのか──。
光秀を足蹴にした信長は、怒り心頭で帰っていきます。
ただ、この事件を境に、光秀は何かが変わります。
坂本城に弔問に訪れたなかとさと。
なかは、美が八上城に入る前に渡しそびれた草履を
位牌にそっと差し出します。
三木城──。
宇喜多八郎(後の宇喜多秀家)と入浴をする秀吉。
後で小一郎も合流してきますが、
やはり実母を人質に取られていると
分かっていながらの皆殺しの命令で、
気持ちが腐ってしまっているので
わざとバカ騒ぎをして、腐った気持ちも
一緒に洗い流してしまいたいところです。
で、お福のおかげで宇喜多直家50万石が
織田に加勢しそうな情勢です。
もしそうなれば、毛利攻めも勝ったも同然なのです。
そんなこともあり、お福は秀吉に会いたくて
でも秀吉もお福に会いたくて、
横で八郎が寝ているにも関わらず
ギューッと抱きしめ合うふたりです。
が。
障子がスッと開き、おねが座っていました!!
思わず、ギャーッと叫ぶ秀吉!
おねは、半兵衛が危篤だと伝えると
秀吉をグーで殴ります。
秀吉は、鼻血を出しながら
半兵衛が寝ている寺へ急行します。
半兵衛は、小六たちと談笑していました。
脅かすなよ、と秀吉はふくれますが、
それでも、大量に吐血したようです。
食べ物も喉を通らないらしく、
おねは雑炊を作らせます。
風に当たりたい、と半兵衛が言うので、
小一郎と小六が支えて表に出ます。
「優しいお人で生涯を全うしてくだされ……。
そして、天下をお取り下さいませ……」
信長の後を継ぐのは、秀吉でなくてはならぬ。
万民に夢を与えるような、そんな存在でいてほしい。
半兵衛は、自分亡き後の次の軍師に
おねを推挙して、おねを大切にするように諭します。
翌朝、起床した秀吉はこと切れている半兵衛を発見。
大空へ解き放った小鳥たちが、再び半兵衛の元に戻って来て
亡きがらの周りで、小鳥は離れようとしません。
あたかもみんなで天国へ送っているかのようでした。
「美さまの後を、追われて逝かれましたな」
泣きじゃくる秀吉の横で、おねも涙を流します。
そして、半兵衛から秀吉に宛てた書状を読み
秀吉とおねは亡きがらに頭を下げます。
天正7(1579)年6月13日、
竹中半兵衛は三木城近くの寺院で亡くなります。
脚本:竹山 洋
堺屋 太一「秀吉」「鬼と人と」「豊臣秀長」より
音楽:小六 禮次郎
題字:森繁 久彌
語り:宮本 隆治 アナウンサー
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[出演]
竹中 直人 (秀吉)
沢口 靖子 (おね)
高嶋 政伸 (小一郎)
細川 直美 (さと)
市原 悦子 (なか)
村上 弘明 (明智光秀)
有森 也実 (ひろ子)
斉藤 慶子 (吉乃)
田村 英里子 (たま)
高瀬 春奈 (お福)
上條 恒彦 (斎藤利三)
大仁田 厚 (蜂須賀小六)
松岡 昌宏 (森 蘭丸)
誠 直也 (石川数正)
織本 順吉 (佐久間信盛)
高松 英郎 (林 佐渡守)
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野際 陽子 (美)
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古谷 一行 (竹中半兵衛)
渡 哲也 (織田信長)
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制作統括:西村 与志木
演出:佐藤 幹夫
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