プレイバック秀吉・(26)史上最大のお歳暮
「タイトルバックに登場する犬(パグ)について、
数々の投書が寄せられました」
お答えします!
『ひでよし まめちしき』パグの巻!!
別名「モンキーフェイス(猿顔)」と言われるこの犬、
そもそもは中国原産であります。
中国の古典『詩経』に、
「歇驕(けっきょう)」なる言葉が出て参ります。
鼻の短い犬を現す、これがパグのことかもしれない。
16世紀、東西交流の波に乗ってパグはヨーロッパに渡った。
最初はその珍妙さに驚いた人たちもやがてはパグをもてはやし
巨匠ゴヤもモデルにしている。
パグはヨーロッパでウケた!
だが、パグはあくまで、中国が原産!
世界を股に掛けたこの犬が、
日本へ渡った可能性は誰も否定できない。
お気づきでない方は、本日改めて御確認を!
パグは「秀吉」に出ている!
信長:なに!?
モンキーフェイスのパグと猿顔の秀吉、
彼らの出会いは49秒後──!
このころの秀吉の支配領地は
近江・播磨・但馬に
宇喜多領の備前・美作を加えて120万石。
秀吉にとって、多忙な時期であります。
信長の側室・吉乃が病に倒れました。
薬師の曲直瀬道三に聞いても
病が治るのか治らないのかハッキリ言わず、
信長は病を治さないと許さぬ、と言います。
その吉乃、先ほどまでは胸が締め付けられるほど
苦しかったのに、今は何ともないと笑っています。
見舞いに訪れたお市、そしておねやおまつたちに
心配をかけたくなかったのかもしれません。
徳川家康と本多正信が安土城を訪問し、
没落の一途をたどる武田勝頼家の現在の様子について
信長に報告していますが、
今の信長は吉乃のことで頭がいっぱいで
何も情報が入ってきていません。
信長はフッと一息つくと、千 宗易が点てた茶を飲みますが、
天地一切 一杯の茶に如かず、と言った宗易を睨みつけます。
──天地にあるものは全て、一杯の茶には及びません
「まずい、おごり高ぶった味じゃ」と茶碗を叩き割ります。
吉川経家が鳥取城に入ったという情報が舞い込みます。
生野銀山からは大量の銀が算出され、
銭が有り余っております。
戦をするにしても、力攻めでは味方も損失が免れませんが
兵糧攻めにすれば、銭はかかりますが損失はありません。
羽柴秀長は、因幡中の米を3倍の値で買い占めております。
堺の小西隆佐に借金しに来たついでに
宗易屋敷に立ち寄った秀吉。
宗易が最近信長に冷たくされていることを聞いて
日本一の茶人なのだから
堂々としていればいい、とアドバイスします。
秀吉が信長の使者で何か通達があるのかと
ヒヤヒヤしていた宗易ですが、
秀吉の言葉がよほど嬉しかったのか、
曇った表情が一気に明るくなります。
そして宗易は、娘のお吟がどうしても秀長の嫁になりたいと
嫁ぎ先から帰ってきまして、もらってほしいと申し出ます。
秀吉にはもちろん、異論などありません。
信長は、天気のいい日には
吉乃をおぶって城からの眺めを見せ
夜は仏を彫って少しでも長生きできるように祈ります。
一心不乱に彫り続けます。
信長にとって吉乃は妻であり、母でもあります。
吉乃がいなくなったら、生きてはいられません。
「吉乃さまが……」
吉乃が危篤となり、おねが信長を呼んできます。
吉乃を抱き起こした信長は
彫っていた仏を吉乃に握らせますが、
私はあなた様の妻です、と木彫りの仏を放り投げます。
「地獄にて……お会い致しとう……存じまする」
吉乃は、信長の胸の中で息を引き取ります。
珍しく、なかはプンプンと怒っております。
鳥取城を兵糧攻めにしていて、
城兵は馬肉どころか人肉まで食い始めているというのに
その秀吉の無慈悲さを怒っているのです。
さらには、宇喜多直家の妻・お福との浮気も。
信長が大切にしている吉乃が亡くなったというのに
そのお悔やみにも来ないことにも腹を立てています。
その怒りはおねにまで飛び火しまして、
最近の秀吉は調子に乗っとる!
最近の秀吉は図に乗っとる! と
妻なら夫を怒った方がいい、とおねは叱られます。
そんな時、秀吉が鳥取から帰ってきました。
鳥取城を兵糧攻めにしたのは、
戦えば双方に大量の血が流れるわけで
それを防ぎたかったというのと、
今回、お福とは会わなかったこと、
そして今から吉乃のことで
安土城にお悔やみに向かうことを秀吉が表明。
なかはおねに小さく謝ります。
「すまんね」
信長は、大広間から城につながる田舎道にまで
お歳暮の品々が続いていることに驚き、
そんな秀吉に今まで見せたことのない笑顔で応えます。
「サル、銭は大切にせよ」
左こぶしを突き出し、心・配・ご無用! と大笑いの秀吉。
これらの品々を、吉乃に差し上げたいと申し出た秀吉は
まだ蜂須賀小六の手下だったころ、サル、サルと可愛がられ
信忠(奇妙丸)の遊び相手にしてもらった縁で
信長に小者にしてもらい、それが現在120万石の大大名です。
吉乃に受けた恩を思わずにはいられません。
なので、これらのお歳暮は吉乃に──。
「秀吉……吉乃は死んでしもうた」
秀吉は、吉乃の死を知らないで
こんなことをするわけはない、と信長は理解しています。
秀吉は信長を慰めてくれているのです。
寂しい、と涙する信長。
「侍ほどの者は、この秀吉にあやかりたく存ずべし。
吉乃への歳暮の数々、吉乃も喜んでおるであろう」
秀吉の頭を撫でながら、信長はつぶやきます。
信長の目は、奥まで澄み渡っていました。
しかしこの時が、信長との別れのときでした。
脚本:竹山 洋
堺屋 太一「秀吉」「鬼と人と」「豊臣秀長」より
音楽:小六 禮次郎
題字:森繁 久彌
語り:宮本 隆治 アナウンサー
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[出演]
竹中 直人 (秀吉)
沢口 靖子 (おね)
高嶋 政伸 (小一郎)
細川 直美 (さと)
市原 悦子 (なか)
斎藤 慶子 (吉乃)
頼近 美津子 (お市)
中村 あずさ (おまつ)
高瀬 春奈 (お福)
香山 美子 (お京)
西村 雅彦 (徳川家康)
大仁田 厚 (蜂須賀小六)
伊武 雅刀 (小寺官兵衛)
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仲代 達矢 (千 宗易)
宍戸 錠 (本多正信)
渡 哲也 (織田信長)
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制作統括:西村 与志木
演出:真銅 健嗣
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